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ブッダガヤの物乞い 5 そしてガヤ駅へ

一月以上滞在したブッダガヤも残り数日となったある日の昼、いつもの繁華街へと出かけた。ここで食事ができるのもあと数回か、と感慨に耽りながらカフェラテを嗜んでいると聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「グルジー、グルジーよぉ…」

振り返ってみると、いつかの投稿で紹介したあの「足が悪い振りをする男」だった。
(ブッダガヤの物乞い 1 参照)
https://note.com/birdpato/n/n5bd9d442c3ba

そしてあろうことか、性懲りもなくまた金をせびってきた…。

「あれだけの失態をみられておいて貴様…」

と、絶句しているとおもむろに自分の左手を指差す男。
汚い布がぐるぐる巻きになっている。どうやら今度は左手が悪いんだと言いたいらしい。しかしどうみても健康そうな左手である。

「そんな都合のいい話があるか!!」

と、怒りを通り越し、もうとにかく呆れ返るしかない私だったが、そこでまたふと思った「いや、まてよ」と。

「たしかにこやつの虫のよさは目に余るものがある。そもそも障がい者を騙っている時点で論外だ。だがしかし、だ。こやつだけではない。ここブッダガヤの物乞いたちの、まるで昭和のコントを見ているかのような「直球の人間臭さ」とでもいうようなものに、私はどれだけ救われてきたというのか。どれだけの学び※を得てきたというのだろうか?彼らにこそ、そしてまた、彼らを代表するかのようなこの男にこそ、私は施しを与えるべきなのではないか?なかろうか?」と。


そう思った私はおもむろにポケットに手を突っ込むと男に金を渡した。(わずか20ルピー=約32円)

そして記念に、と勝手に肖像権を侵害しその場を後にしたのだった。

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障がい者の振りをする男の物乞い

日付は変わり旅立ちの日。午前2時の電車までまだまだ時間はあったのだが、ガヤ駅の「リタイアリングルーム」で時間を潰そうと思い午後5時頃ブッダガヤを立った。

この「リタイアリングルーム」とはベッドの並んでいる大部屋つまりドミトリーで、インドの主要な駅にはだいたい完備されている。しかもただみたいな値段で長時間滞在できるため、深夜の発着が多いインドの鉄道の旅では大変ありがたい設備なのである。

トゥクトゥクで一時間ほどで駅に着き、すぐさまリタイアリングルームへ向かうと男が一人腰かけており、「今は使えないよ。全部閉鎖されてる」と。

「閉鎖!?なんで?」

と聞くと、「新しき建物」とだけ。

全く意味が分からなかったのだがとりあえず「ああ、そういうこと」と言って立ち去る。

駅周辺の宿で深夜までの休憩、ということで交渉してみると1000ルピーから600ルピーまで下がったが何故か気が乗らず断る。かといって駅構内はすでに横になっている人たちで一杯。出発までまだ8時間もある、うーむ完全に当てが外れたな、どうすべきか…と考えあぐねながらさ迷っていると、駅舎入り口の外、物乞いたちの横になってる一角にちょうどいいスペースをみつけた私は、よしここにしよう、と。一瞬物乞いの人達に排除されるのでは?との不安がよぎったが、ブッダガヤでのひと月の間に沢山の物乞いたちに施しを与えたことを思いだし、

「いや、今の俺の徳パラメーターならいけるはず…よし今だ!」

と駅前で売ってたビニールシートを敷くとここを今夜のキャンプ地としたのだった。

つづく

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