エッセイ「バレンタインの思い出」
昨日はそう、二月十四日でしたね。世間はセントバレンタイン・デイ。世間はって、僕も世間には含まれてるんですけどね。別に隔離されてるわけではないので(笑)。
昨日の記事にも書いていたけれど、なにせ、世事に疎い人間で、かつ、いい加減な記憶で生きているので、どこに行っても日時を教えてもらっているんですね。
今日って何日でしたっけ。何月でしたっけ。何曜日でしたっけ。そんなふうに。iPhoneを確認すればいいんですけど、なんとなく、話のとっかかりにもなるし、人に聞いてしまう。意外に思われるかもしれないけれど、僕はコミュニケーションスキルが高いほうなんです。
というわけで、昨日は、なぜ、ウイスキーやクラフトビールが送られてきたのかわからず、きょとんとして、配達員さんに「なんですかね、これって」などと訊ねてしまう。「バレンタインでしょう」と軽く返されて、ああそうか、間もなく春だな、なんて、すっかり世から離れた文豪のようなことを思うに至る僕だったのです。
バレンタインの思い出、なんてタイトルにしておきながら、そんなに思い出らしい思い出もないような。学生のころから、人並みか、あるいは人並み以上にいただいてましたけど、あいにく、僕は、甘いものを食べる習慣がないので、実家にいるときは母と妹のおやつになっていました。食べ比べて、感想などを話しているのを覚えています。これ美味しい、この人はセンスいいね、みたいな感じで、みるみるなくなっていたと思う。感想を訊ねられることもあるので、ひとくち、ふたくちは食べるようにしていたけれど、それも数が多くなるとなかなか大変なので、なんというか、その、お手製の、味以上に重厚な雰囲気を漂わせるカカオ魂あふれる一品はその氷山の一角だけと格闘したり。おまえだけはどうにか捩じ伏せてやるぞ的な。なんのこっちゃ。
クッキーとかビスケットのようなもののほうが嬉しかった。食感も軽いし、全体的にニュアンス軽くて安心。チョコレートのあの濃厚なカカオ魂には、なんていうのか、念が混ぜ込まれているような、そのうえ、食感もねっとりと重厚で……なんだろうか、あのカカオ魂は。それはもういいか。
近年はもう若くもないし(なんだこの悲しくなる一節は)、会社勤めをしているわけでもないので人付き合いも限られているので、予測可能な範囲の方から、ビールなりウイスキーなりをいただくことが多くなり、そのたび、季節を思い出して「もう春か」と文豪めいて心の中に唸るくらいです。コーヒーをくださる人もいたり、そう、別にチョコレートじゃなくてもいいはず。
このビリーnoteって、どのような方が読んでいるのだろう。比較的、女性が多いような気がします。「ビリーまとめ」なんてマガジンを作ってくださっている方も女性ですしね。女性がよろこんでくださる内容なのかどうかはわからないけれど、やはり、僕は男なので、女性に好かれるのはとても嬉しいものです。
みなさんはチョコレートをプレゼントしました? 意外にビールやコーヒーをプレゼントして、おふたりでそれを楽しむのもいいかもしれません。男性陣は予想外の女性から告白なんてされて、今日がドキドキの翌日だったりして。
なににせよ、ときどきはワクワクドキドキしていたいもの。
それでは、文豪は「春やな」と唸りに海へ行ってきます。
じゃあ、バイバイ。ビリーでした。
photograph and words by billy.