見出し画像

子どもと離れて暮らすということ。「空をこえて七星のかなた」

若い頃、20代前半頃には単身赴任というのは夫婦+子供がいて土地を離れにくいときにするものだという思い込みがあって、いわゆるDINKS(子無し共働き)で別居する夫婦というのが想像できませんでした。でも実際友人が結婚しだすとそんな例がごろごろ出てきて、妻が青年海外協力隊で単身赴任とか、夫婦で別の県の大学で研究者してるとか、新婚当初から別居でそのまま子供も生まれて産育休中だけ初同居、とか。家族の形は様々と言うけれど、想像できる「様々」が年々増えていきます。

そんなわけでこの度パートナーが転職して単身赴任するよとなっても特段の気負いはなかったのですが、子供から見たら違うかもな、と考えるきっかけになったのがこちら。

物語で家を出ていくのは主人公の少女から見て祖母・母という点で父親の単身赴任とは受け止めが違うんですけどね、たぶん。「同居で働き続ける選択肢もありながら、自分のやりたいことのために子供と離れることを已む無しとした」と言われたらまぁそうだね、と言うしかないな…。妻を応援しながらも寂しそうな夫と、静かになってしまったふたりの食卓の描写がしっとり切ない。

ところで加納朋子さんの物語はどれも素晴らしく優しい結末で大好きなんですが、何作も読んでいると男女の役割や置かれる立場のステレオタイプぶりが気になることもあります。
序盤のネタバレになりますけど、女親が子供と離れても許される(=読者の共感が得られると想定されている)職業として、自然科学の研究者とNASAの宇宙飛行士って、ちょっとハードル高すぎませんか…? そこまで誰もが羨む才能を持ってなくたって、社会貢献度が振り切って高くなくたって、私は私の仕事が大事だと言わせてほしい〜!

ここから先は

233字

¥ 300

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?