「シェルブールの雨傘」に恋い焦がれ

フランス映画を見るのは気が引けるという気持ちはよく分かる。所謂ヌーベルバーグの映画は実験映画の側面が強く、話の展開についていけないということも有るだろう。しかし、フランスという国で括ってしまうのは勿体ない。例えばヌーベルバーグ以前であれば、ルノワールやコクトーの映画は話を追いやすいし、同じヌーベルバーグでもこれから紹介する映画は、お楽しみ頂けるのではなかろうか。

Les Parapluies de Cherbourg(どう見てもチェーボーグにしか見えないがシェルブールと読むらしい)はJacques Demy(こちらもジャッケスデミーとしか読めないがジャック・ドゥミと読む。フランス語は難しい)監督の最高のミュージカル作品だ。ミュージカルと言っても途中で歌いだしたりはしない。何故なら、地の台詞が無く、全てが歌になっているからだ。この画期的な発想はヌーベルバーグの実験的な雰囲気はあるだろうが、話自体は直ぐに入り込めるだろう。

自動車整備工の男ギイと傘屋の娘ジュヌヴィエーヴの二人は恋人同士であり、幸福な人生を送っていたが、ギイには軍の召集令状が来て、離れ離れになってしまう、と言う内容である。私は恋愛映画が苦手なんだよな、と言う方も騙されたと思ってみてほしい。

ただの恋愛映画と一線を画す深みのあるストーリー。全編歌の画期的な工夫を支えるミシェル・ルグランの素晴らしい曲。主演二人のカトリーヌ・ドヌーヴとニーノ・カステルヌオーヴォの演技の上手さ。カメラに映る色合いの鮮やかさ。そして、カラフルな傘のオープニングシーンから、余りに美しい雪の降るラストシーンまで、見る目を釘付けにするジャック・ドゥミの演出の凄まじさ。これら全てが完璧に噛み合った本作は、形容し難い感動を与えてくれるのだ。

こちらの作品は今amazon primeでは見れるようですよ。(2023/03/09)

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