窓の外は群青色のスクリーン
大雪警報の中
「ひかり」は京都を出た
案の定、米原で臨時停車
最初からそうなることを
誰もがわかっていたのだろう
この車両に乗っているのは
菜穂子と ボクの
二人だけだった
いっそこのまま永遠に
停まっていればいいのに
菜穂子は窓の外につぶやいた
ボクたちの「ひかり」は
米原で運転休止となった
音もなく激しく降り積む雪の中
まるで亡者の行進のように
ボクたちは在来線に乗り換えた
大垣行きの在来線も
車輛の中にほとんど人影はなく
列車は雪明りの薄闇の中を
静々と進みだした
窓の外は群青色のスクリーン
菜穂子とボクは
息もできないほどの口づけを
ずっと交わし続けた
この列車はどこへ行くの?
この列車は地獄へ行くの?
そう
18歳の二人が迷い込んだ
愛欲という名の地獄
すでに
窓の外は雪の壁
群青色に明滅する
列車よりも高い雪の壁
ボクたちだけが乗ってしまった
愛欲という名の列車
その時からわかっていたんだ
列車には必ず終着駅があるように
ボクらにも終わりが来ることを
窓の外は群青色のスクリーン
せめて
今だけは忘れていたくて
泣きながら
ボクたちは
口づけを交わしつづけた
窓の外は群青色のスクリーン
映像作家 増田達彦
・・・ノンフィクション(仮名)
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