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セミの亡骸を見て思ったこと
朝玄関を出ると、息絶えたアブラゼミが、上を向いて転がっていた。
夏といえばお馴染みの、と言うとセミに怒られるかも知れないが、1日に1つは見るくらい頻繁に目にする。
そんな姿を見て、僕は思った。
産まれてくる時彼らは、7日間しか寿命がないことを知っているのだろうか?
それを知ってて生きるのと、知らずに生きるのでは、行動が変わってくるんじゃないか。
だんだんセミに興味が湧いてきたので、色々調べてみることにした。
セミ(ここではアブラゼミを例とする)は、だいたい1〜数週間しか生きられない。
だから寿命が短いと認知されているが、それは成虫になった後の話。
彼らは木に卵を産み、1年くらいかけて孵化し、幼虫になる。
そのあと土に潜り、3〜4年かけてゆっくり成長していき、やっと地上に出て羽化するらしい。
昆虫は一般的に短命で、卵から成虫になり寿命を終えるまで1年に満たないものがほとんど。
昆虫の中では、実に長生きな生き物なのである。
ただ、それだけの歳月をかけていながら、必ず成虫になれるとは限らない。
土の中ではモグラに襲われたり、土から出てきて羽化目前のところで、鳥などの外敵に食べられてしまうこともあるのだそう。
いま大きな声で鳴いているセミたちは、数々の障害を乗り越えてきた精鋭たちなのだ。
やっと産まれてきたと思ったら、地上を謳歌できるのはわずか7日程度。
さらには羽化してからすぐに鳴けるわけではなく、あの声量が出るまでに数日かかるらしい。
オスは早くメスを求めて鳴かなくてはいけないのに。なんて苦労が多い昆虫なのか。
僕の疑問である、自分の成虫寿命を予め把握しているかどうかは、とても大事なことであるのが分かる。いや、それが全てな気がする。
彼らの使命は、その短い時間で子孫を残すこと。
オスはとにかく鳴き続けるしかない。
メスはどうか?
理想高すぎハイスペック好き女子のように、どいつもこいつも鳴き方や容姿が気に入らない、と選び続けている間にポックリ逝ってしまう可能性はないだろうか?気になって仕方がない。
そんなこんなで、セミの見方が少し変わってきた。
彼らは、命をかけて叫んでいる。
昼寝の妨げになるほどのあの声も、なんだか許せるような気がしてきた。
短いようで長く、長いようで短い一生。
土の中で何を思い、地上で何を思い、逝く間際に何を思うのか。
仰向けのあの姿は、あっぱれにも無念にも見えたのでした。