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鳥公園WS【戯曲の中に自分を見つける】レポート

こんにちわ、鳥公園に遊びにきている鳥(アソシエイトアーティスト)の三浦雨林です。
2021年最初の鳥公園としての文章が、2020年のWSレポートとなりました。少し時間を置いて、改めて考えられたこともあるので、当時と今を並べながら書いていこうと思います。

[WSの試み]①画面上で人に会うということ

 2020年の3月頃から5月頃まで、予定していた仕事がほぼ無くなり、スーパーと家の往復をするだけの生活を送っていました。知っている誰かと直接会うのは極端に減りましたが、同時に、ネットでのミーティングやオンラインを繋げての仕事は急増しました。
 最初は「ずっと家で作業出来るなんて、おうち大好きな身としては最高だな」と呑気に思っていましたが、段々と自分でも想像していない方向へと変わっていきました。オンラインでの経験が増えるにつれ、画面上で誰かに会うことが想像以上にしんどくなっていったのです。
 例えばzoomや通話でのミーティングの偶然性の生まれにくさや、自身や相手の身体・空間に対して小さく平たい画面上という閉塞感がしんどさの要因だったのだと距離ができた今は考えています。
 自分が行うWSをいざ具体的に考える際に、まず「だれかとオンラインで時間を合わせて集まり、画面の中の二次元のみんなと会う方法」以外での開催はできないだろうか、と考えました。

 現在も変わらずオンラインでのミーティングは多いですが、音声のみであれば苦ではないことが最近わかってきました。
 どうやら私は視覚をあまり信用しておらず、何かを実感する時は音や空気などの体感が大きな軸となっているということが、なんとなくわかってきました。なので、画面に姿を映さず、声だけでのコミュニケーションの方が相手に対する実感があるようです。この感覚はこれから創る作品にも影響していきそうですが、これは余談でした。

[WSの試み]②例えばシェアハウスのリビング

 2020年度の鳥公園の取り組みとして「劇作家合宿」を計画していました。その取り組みについて、西尾さんは「劇作家が書き物をする時、ふらっと立ち寄り、世間話的に話せる関係性・空間があると、解消できることがある」というようなことを言っていました。執筆の手が止まった時にリビングに降りてくると誰かがいて、ちょっとだけ何かを話して、満足したらまた執筆に戻る。
 月並みですが、創作作品・創作方法には正解はありません。なので、何かに行き詰まった時は、その時々で最適とされるものを探ります。また、0から何かを作るというのは、絡まった糸を解くような作業です。机に向かって閃く時もあれば、どこかへ行ったり、誰かと話したり、全く関係のないことをしたり、何もしなかったりで糸を解いていきます。もちろんもっと絡まることもあります。そして、糸を解くために必要なものは、弛緩、余裕、別の力点です。
 私は、西尾さんの話を「みんなで解決するというよりもその場で発生することで弛緩して解(ほど)いていく」ということなのだろうな、と認識しました。なおかつ、これは広場ではなく、リビングという場所であることが大きなポイントで、大いに共感した点でした。
 今回のWSで上記のような場を作るにあたり、自分も含めた参加者全員の関係性がフラットな状態であればあるほどいいのではと考えました。フラットな関係性というのは、どこの誰かがお互いにわからない、性別も現在地も年齢も何をしている人かもわからないということがインターネットでは出来る!と、今回は振り切ってみました。結果としてはとてもおもしろい選択だったと思います。

[実施内容ざっくり説明]

①匿名
 WS開始時から終了時まで、全て匿名で行い、プログラムの最後に本当の名前の自己紹介を行いました。自己紹介内容についても、何を書いてもOK、何も書かなくてもOKとしました。

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 三浦は なぞなぞ大好きスフィンクス で参加しました。なぞなぞも大好きじゃないしスフィンクスでもありません。

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 自身の名前付近は自由スペースなので、上記のように作業進行の日記や関係ない雑談などを書いている方もいました。
 この雑談や日記が、私がインターネット上でどうにか生み出せないかと考えていた”必要な不必要”だったので、みなさんがうまく自由に使ってくださってとてもよい広場になっていたと思います。

②作業の可視化
 導入のワークとして、「三浦の創作方法で『終わりにする、一人と一人が丘』(作・西尾佳織)から自身の小作品を創る」を行いました。
 このワークは、原作を元にした創作時の三浦の方法論をみなさんに実際にやってみてもらう、というものです。具体的に三浦が順番ややることを提示し、それに従って作業をしてみるという進行でした。

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 導入のワークで出来上がるものは文章ですが、次の『カンロ』(作・西尾佳織)を元した創作ワークでは、創作方法から完成形に至るまで、全て自身での選択としました。
 作業内容は他の参加者にも可能な限り共有するため、miro上にそれぞれのアトリエスペースを作ってもらい、オンラインで作業可能なものはこの場で行ってもらいました。
 元にする戯曲が全員同じなので、思考の流れや選択肢、扱うモチーフや情報が共有され、比較が出来ることで自身の考えも整理されていくと考えたためです。実際、どういう経緯を辿って『カンロ』を考えたのか、そしてどういう経緯でその作品が出来上がったのか(あるいはできあがらなかったのか)が見えることは自身の創作を考える上でもとても刺激になりました。

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 miroは画像も動画も PDFもファイルもURLも何もかも貼り付けることが出来るので、本当にさまざまな作業スペースが生まれていました。上記はなぞなぞ大好きスフィンクス(三浦)の作業スペースですが、画像やURL、論文のPDFなどを自分がわかりやすい配置でメモ的に置いています。この「自分がわかりやすい配置=誰かに見せるための整理された空間ではない」で構成された頭の中の作業場を、誰かに見せることは普段の創作ではあまりありません。
 同じ立場のクリエイターとして、自分のためだけの作業場を覗くことは有意義な行為ではないか、と思い至り今回のWSに組み込みましたが、思った通り想像以上におもしろく、前向きな体験だったと感じています。

③距離感
 一度見てもらえるととてもよくわかるのですが、miroはかなり巨大なホワイトボードです。例として、下の画像が全体像です。これまで載せてきた作業場などは、このボードを拡大したところのどこかにあります。てんてんと散らばった島がそれぞれ個人の作業スペースです。

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 個人の作業スペースは「このボード上のどこでも好きなところにスペースを作ってください」と伝えて作ってもらったのが、上の配置です。拡大するとお隣さんの感覚がないくらい離れているので、想像していたシェアハウスのリビング的な空間にはあまりなりませんでした。もっと大きい、公園的な感じだったかもしれません。
 また、miroはログインしている人のカーソルが表示され、リアルタイム更新なので現実の空間と同じようにに出会うことが可能です。そういった意味でも、「あっちで誰か作業してるな」「ちょっと見に行ってみようかな」という感覚でそれぞれが出会っていたので、やはり公園的という表現は正しいような気がします。

[まとめと感想]

 今回はなるべく参加者のみなさん自身で選択肢を見つけ、選択をしてほしいと考えていました。そうすることで自由度が上がると思っていたからです。匿名にしたのも、集合を必須でなくしたことも、創作の方法や成果の形を自分で選んでもらったのも、今までの固定概念や方法から少しでも自由に、身軽になってもらいたかったからでした。しかし、この点に関してはあまりうまくいきませんでした。枠を外すだけでは自由は生まれなかったのです。ではどうすればよかったか。現時点では、導線の引き方がうまくいっていなかったのではと考えています。身軽になるためには、ひとつづつ荷物を降ろす必要がありました。その荷物の降ろし方や降ろす場所をファシリテーターである私が適切に用意出来なければなりませんでした。枠を外していくステップは作りましたが、荷物を降ろす導線は意識出来ていませんでした。これからまた、このような場作りをする際には、改善していきたいです。

 一方、匿名であることとmiroをインターネット上のリビングとして実施したことは非常に面白い体験となりました。インターネットでしか出来ない完全匿名性は、やはり相手の作品と思考回路、方法を純粋に見つめられていたと思います。そして、相手が誰だかわからないので自分もチャレンジングな選択を取ることができます。チャレンジングな選択は、そもそも相手やその場との信頼度がなければ選べないので、インターネット上においての信頼の築き方ももっと上手く出来れば、さらに活発な場になっていくだろうと前向きに考えています。

 相手と相手の考え方を尊重し、認めながら交差する。この距離感と場への信頼度を課題に、今回のような取り組みのWSを今後も続けてみたいと思っています。


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