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公開相談会 Part2 第五回(ゲスト:森崎めぐみ氏・佐藤憲氏・湯淺晶子氏ほか)レポート - 奥田安奈(鳥公園お盆部)

第5回「創作活動における心身の健康と専門家の活用」では、我々の無知を曝け出しつつ、とても具体的・現実的な相談をさせていただきました。今回の私にとっての最大の学びは、専門家を積極的に活用するとしても、まずは自分たちで主体的に安全や健康について考えることが、結局自分自身の身を守る最善の道だ、ということでした。

後半、佐藤さんが、身体的・物理的安全について、「参加する全員が主体者」という意識を一人一人が持つ必要がある、と語られました。その例として挙げられたのが、いくらスタントの専門家が安全な形を提案・指導しても、実際にそれを行う俳優本人や周囲の人々が何が危険かを理解していない限り事故は起き得る、という話です。それを伺って思い出したのが、そばで殺陣をしているキャストとの間に取るべき距離を理解しておらず、怪我をしてしまったキャストが出た事例です。また、主宰者が優秀なトレーナーを雇って終演後のケアの体制を万全に整えても、自分の身体にかかっている負荷について真剣に捉えず自分でできるケアを怠って結局身体のあちこちを常に壊しがちなパフォーマーがいた現場のことも、思い出しました。そう考えると、確かに何事も専門家を雇ってお任せすれば大丈夫というスタンスではダメだな、と思い直した次第です。

心理面のケアに関しては、専門家をガンガン活用した方が良いという元々の考え自体は揺らいでいないのですが、やはりそれ以前のところで、創作現場にいる一人一人が「この場を誰にとっても安全にする」という意識を持たなければ、心理面の健康を保てる現場を実現するのは難しいと思いました。たとえば、ハラスメント対策を決めて実施するのは主宰者・プロデューサー・主催者などの責任ですが、その立場の人々”だけ”が考えれば良い、それは自分が考えることではない、という「他人ごと」な空気があると、起きてしまった後の対処は専門家の力を借りて速やかにできても、予防には繋がりにくいと思います。一方で、内部だけでハラスメントなどの問題に対応しようとすると共感疲労の心配がある、外部を活用するメリットの一つはそういう事態を避けられることだ、というお話があり、その点は本当にその通りだと思いました。せっかく登録料2000円で何度でも利用できる「芸能従事者こころの119」のような、一般のカウンセリング等に比べるととてもお得なサービスがあるのだから、活用しない手はない、とあらためて思いました。

今回の学びを一言でまとめるならば、「主役はあくまで自分たち、専門家は頼れる脇役」ということだと思います。森崎さんのような熱意ある方が、芸能従事者の特別加入労災のような制度の実現に尽力してくださり、それが叶ったことは素晴らしいことで、ただただ感謝の一言です。しかし、せっかく制度が整っても、われわれ創作現場の当事者たちに制度自体を知りそれを活用して自分たちの身を自ら守っていこうという意欲がなければ、絵に描いた餅です。また、”保健室の先生のように”助言をくださる保健師(湯淺さん)、安全な身体の使い方を指導してくださるスタントの専門家(佐藤さん)、もやもやくらいでも向き合ってくださる臨床心理士さんのような専門家の方々はたくさんの経験と知識をお持ちでとても頼りになりますが、まずは問題を未然に防ぐ意識を自ら持ち、何か起きてしまった時には積極的に専門家を頼りに行く気がなければやはり絵に描いた餅だな、と思いました。私は基本「餅は餅屋」主義なのですが、絵に描いた餅をたくさん並べて満足せぬよう気をつけねば、と大いに反省した回でした。

森崎さん、佐藤さん、湯淺さん、日比野さん(東京海上日動メディカルサービス)、それぞれのお立場からさまざまな助言をいただきまして、本当にありがとうございました。心より感謝申し上げます。

参考:
芸能従事者こころの119 https://artsworkers.jp/kokoro119/
全国芸能従事者労災保険センター https://geinourousai.org

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