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彫師希望者の方へ

人気彫師はご予約のお客様からのご依頼にお応えするだけで手が一杯の状態になるのが普通です。

この仕事はやればやるだけの収入が得られる仕事です。その手を止めてお客様を待たせてまでして、人に教える時間と労力をとれる彫師は基本的に居ないと考えて下さい。
ですからまず「時は金なり」が分からない人に彫師という仕事は向いておりません。いや彫師に限らず、世のあらゆる成功者が同じ意見を持っている筈です。

唯一、彫師が手を止めてまでして教えてあげても良いかなと思えるケースが有るとすれば、それは希望者の方が「一生を自分の下で彫師として働いてくださる方」だった場合だと思います。

人気彫師になるための道は決して平坦ではなく、どちらの先生も命懸けで血が滲むような努力をおこなって到達しております。
しかし多くの人には物事の結果しか見えませんから、その過程でどれだけの取り組みをおこなってきたのか?という部分については無知なままです。これは実際にそれをやった者にしか解らない世界なのです。そういう意味では、「自分が命懸けでたどり着いた境地を、やすやすと人に教えることは無い」と考えていただいて宜しいかと思います。

従いまして、人気彫師がわざわざ手を止めてまでして入門希望者に教えることに時間を割けるとすれば、将来、その彫師希望者が”教えられた恩”を同じチーム員として働き続けることで、きちんと”金銭的価値として返して下さる仁義を守れる方か否か”という部分で判断させていただくことになるかと思います。

我々が考える彫師にとって必要な能力とは、


第一に「画力」です。

第二に「不屈の精神力」です。

そして第三に「誠実な人間性」となります。

以上を兼ね備えている見習い希望者であると判断出来た場合には、当店でも見習いの受け入れをおこなう可能性はございます。

多くのスタジオさんでは「上達スピードを早めるヒントを教える」代わりに、「一生、もしくは10年など一定期間までを、そのスタジオ所属彫師となる」ことを前提にして姉弟制度を設けております。

当店でも様々な試行錯誤の上で、やはりそのような結論となりました。

さらに我々は、この業界においては講習ビジネス的モデルで儲けることが「悪」であるという認識を持つに至りました。
その理由は「画力」「不屈の精神力」「誠実な人間性」の3つが伴わない人間に無制限にタトゥーのノウハウをお教えすることが、タトゥー被害者を産む可能性が有ると気がついたからです。
ここで申し上げるタトゥー被害者とは、「望まぬタトゥーをなんとなく入れられてしまい、後から消したくなってしまった方」を指します。

当店タトゥーワークスの創業姿勢は、「一つでも美しいタトゥーを増やし、タトゥーアートに対するイメージを少しずつでも良い方向に変えたい」というものです。従いまして、無責任に講習ビジネス的に”実力不足のタトゥーアーティスト”を増やしてしまうことは、このような当店の創業姿勢に反することになってしまうのです。

我が国のタトゥー業界では現在、厚労省とのやりとりなども開始されており、法制化に向けて動き出している状況です。このような大切な時期に、大切なノウハウをオープンにしてしまうことが、どのような結果を招くことになるか?全く予測がつきません。

この仕事は一歩間違えると被害者を生み出してしまうシビアな仕事なのです。

人の肌に仕事の痕跡が一生残り続けるという、大変稀な性質を持った特殊な仕事なのです。

従いまして前述させていただきましたように、まずは「画力」「不屈の精神力」「誠実な人間性」の3つを兼ね備えた方で有ることが重要です。
つまり当店で同じチームとして一緒にやってゆきたいと思える方のみをお弟子さんとしてお迎えする方針であることを決めました。

当然ですが見習い期間の給与も出せません。

一定の「試される期間」をくぐり抜けた方のみをお弟子さんとして認める方針です。

ただし上記の”根性試し”を乗り越えてチーム員になって下さった誠実な方には、このスタジオを引き継いでいただける形で一生喰えるようにお育てします。

端的に申し上げますと、自分で独立したいという方はお受け入れすることができません。

その時間があったら、お待たせしているお客さまのご依頼に一つでもお応えすることの方が我々にとって大切なことだからです。

冒頭の話に戻りますが「時は金なり」です。

これは本当に命懸けで物事に取り組んだ人間にしか理解出来ない要点ですので、あらためて強調させていただきたいと思います。

楽に好きな事をしてマイペースに食ってゆきたいと考えている方は当店ではお教え出来ません。
その程度の姿勢であれば、被害者を産んでしまう可能性が有るのが、この彫師という仕事なのです。

我々はそんな気持ちで生きてきておりません。そもそも人生に対する哲学が違うのですから、こちらが命懸けで得たノウハウもお教えすることも出来ないということになります。

これはあくまでも自身の人生観の問題ですので、ラクに楽しくマイぺースに生きてゆきたいと考えておられる方のことを否定している訳では有りません。この世界に我々とは考え方や感覚が違う方がおられるのは重々承知しております。

ただ我々としては時間という有限のリソースを、その方のためには割けないということだけです。

当店ではどんな小さなタトゥーであっても、誠心誠意、命懸けで制作させていただいております。
こういった緊張感の有る精神的な背景があるからこそ、これまでの当スタジオ作品が生み出されているのだと理解していただきたいと思います。



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