『PlaX プラックス』ってどんな素材?
Bioworksが研究・開発する素材「PlaX™ プラックス™」
どのように作られ、どのような特徴があるのか、
またその歴史についてもわかりやすく解説していきます。
01: PlaXができるまで
まずはPlaX ができるまでの工程を簡単に説明していきます。
1)サトウキビをくだいて、糖を取り出します。
2)糖を乳酸菌で発酵させて、乳酸を作ります。
3)乳酸を化学的に反応させることで(重合)、ポリ乳酸を作ります。
4)ポリ乳酸にBioworks独自開発の「植物由来の添加剤」を加えます。
5)PlaXのできあがり!!
02: PlaXの3つの特徴
1|植物由来で生分解性
バイオプラスチックには、「生分解性プラスチック」と「バイオマスプラスチック」の2種類があります。
■ 生分解性プラスチック:石油由来と植物由来の2種類があり、温度などある一定の条件下で、微生物のチカラで水と二酸化炭素に分解される。(生分解)
■ バイオマスプラスチック:植物などの生物由来の原料から作られる。
どちらか1つの条件を満たすバイオプラスチックもあれば、両方の条件を満たすバイオプラスチックもあります。
PlaXの原料となるポリ乳酸は「生分解性プラスチック」であり「バイオマスプラスチック」でもある、両方の条件を満たすバイオプラスチックです。
2|カーボンニュートラル素材 製造・廃棄時のCO2削減
石油産業に次ぐ世界第2位の環境汚染産業と言われる「ファッション産業」において、繊維製造時のCO2排出量の削減は急務とされています。
PlaXは糸製造時のCO2排出量を、石油由来の合成繊維ポリエステルと比較して41%削減することが可能です。
また焼却廃棄時においても、他の繊維と比べCO2排出量を大幅に削減。
ダイオキシンなどの有害物質も排出しません。
3|乳酸由来の抗菌性と消臭性
PlaXの繊維化によって発見された素材の機能が、乳酸が繊維から溶け出すことによって生まれる「抗菌効果」と「消臭効果」です。
■ 抗菌効果
抗菌効果を実証する試験(JIS L1902菌液吸収法)では下記の4種類の菌で、- 99.9%以上の抗菌効果が認められました。
・黄色ブドウ球菌
・大腸菌
・肺炎かん菌
・モラクセラ菌
■ 消臭効果
消臭効果を実証する試験(JIS L1902菌液吸収法・ニッセンケン品質評価センター 消臭性試験)では、下記の菌や成分で消臭効果が認められました。
・モラクセラ菌
・イソ吉草酸
・酢酸
部屋干し臭(生乾き臭)、汗・足の臭い、加齢臭、体臭に対して効果を発揮します◎
03: PlaX添加剤って? 添加剤技術と歴史
PlaXを語る上で欠かせないのが、弊社Bioworksが研究開発する「植物由来の添加剤」です。
前述でもお伝えした通り、PlaXは原料となるポリ乳酸に「植物由来の添加剤」を加えることによって、ポリ乳酸の弱点であった「耐熱性」「耐久性」「染色性」を大幅にアップデートすることに成功した素材です。
「ポリ乳酸」はプラスチック製品の大量廃棄が社会問題になった1990年代に、生分解性を有する植物由来のプラスチックとして世界で注目され、大きな期待を集めました。
しかし多くの企業が「ポリ乳酸」の実用化を目指し研究開発に取り組むも、弱点を克服する研究が進まず、ほとんど普及しなかったという歴史があります。
大手企業やベンチャー企業が次々と開発を断念する中、弊社Bioworksは「ポリ乳酸」の可能性を諦めることなく開発を続けます。
そして約20年の歳月をかけて、ポリ乳酸の耐熱性・耐久性をあげる「植物由来の添加剤」の開発に成功。
PlaXはこれまでに日用品・カップ・ボトル・マネキンなどの成形品で実用化され、社会に少しずつ普及していきました。
その間も研究開発は進み、2021年PlaXの繊維化に成功。
Bioworksは繊維事業を本格始動し第2創業期を迎えます。
PlaXはアパレル産業が抱える環境問題に対して大きなソリューションを起こす可能性を持った素材として、20年の時を経て再び、世界的な注目をあつめているのです。
04: 多彩な循環のレシピ
PlaXはその時その場所によって最適なレシピで素材を循環させることができます。
ひとつは「生分解」。
一定の温度・湿度のコンポスト環境下で水と二酸化炭素に分解させることができます。
さらに「ケミカルリサイクル」といったリサイクル法で、回収した製品からPlaXだけを取り出し、新たな用途として使用することが可能です。(ラボレベルで実証済み)
これらのあたらしい循環の仕組みを社会実装すべく、研究開発、実証実験が進められています。
【PlaXの循環】について詳しく知りたい方はこちらの記事 ▼
05: 世界の繊維需要とポリエステルの代替
PlaXはポリエステルと製造工程が同じで、疎水性などの機能面や生地の風合いが似ていることから、ポリエステルの代替として普及を目指している次世代繊維です。
世界の繊維需要は、人口増加と経済成長に伴い、ここ50年で増加を続けており、世界の繊維生産量の特徴として、綿・ウールなどの天然繊維に比べ、ポリエステルなどの石油由来の合成繊維の割合が増えていることが下記のグラフから読み取れます。
天然繊維は栽培時の環境リスクやさまざまな課題から生産量を増やすことが難しいとされ、今後も合成繊維の生産・供給量が増え続けることが見込まれています。
合成繊維の中でも、石油由来のポリエステルはその生産量の8割強を占めるマーケットの主要素材です。
枯渇資源でもある石油の使用や、製造時のCO2排出、マイクロプラスチックによる海洋汚染など、環境負荷が問題となっている素材でもあります。
アパレル産業における環境課題の解決に向けて、環境負荷をかけている素材を代替していくアクションは欧州を中心に世界中で行われています。
最後に
PlaXは2021年に繊維事業を本格化させたまだ歴史の浅い素材で、ケミカルリサイクルによる資源循環など、素材の性能を十分に発揮できる環境が整っていないことが現状です。
しかし近い将来には既存の合成繊維と同様に「あたりまえ」に使われている素材、使われるべき素材だと考えています。
多くの企業様にご賛同いただき、少しずつその輪が広がってきています。
このnoteを読んでくださっている方のもとにも、もしかしたらPlaXが届いているかもしれません。
環境配慮素材が「あたりまえ」の素材となるように、これからも開発と普及に取り組んでまいります。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。