入院4日目 10/05
夜中、自分の腕に点滴用のチューブが常に刺さっていることに対し急に怖くなる。バイオハザード1のラスボスみたいに血管が体外に露出してるってよく考えたらおかしいやろ!と自分の身体にゲシュタルト崩壊して寝れなくなった。漫画ちびまる子ちゃんの南の島に行く回にて、まる子が飛行機に乗った際に「よく考えたらこんな鉄の塊が雲より高い所を飛ぶなんておかしい」と気づいて急に怖くなる描写を思い出した。短い睡眠の間に何かおもろい夢見た気がするけど忘れてしまった。
それに対し、いつも寝る前によく起こる、自分の過去の後悔を思い出して「ウアーッ!」ってなるやつが入院中は起こっていない。なんというか病室が、俗世と自分との緩衝地帯になっている感じがある。受動も能動もなくただ過ごすだけ。自分であって自分でない感覚がかなりあるけど、それがそうさせてるんかな。
6:30起床。水場に行きコーヒーを淹れてると、シンクにかやくのねぎらしきものが落ちているのを見つける。誰かカップ麺食ってるな…。
7:35朝食。ポーチドエッグという名の固ゆで卵、サラダ、ご飯、ヨーグルト、牛乳。自前のコーヒーに牛乳入れてカフェオレにしてみる。
10:30日課のステロイド点滴。
点滴中、持ち込んでいた「日本のフォーク完全読本(監修:馬飼野元宏)」を読了。
千紗子と純太の活動において、前衛的な要素やクラブミュージックの音響などを取り入れてみたりしたけど、自分の根っこの部分にある「フォーク的な何か」の存在に、以前から段々抗えなくなってきていた。neco眠るでのペンタトニック的な感覚とも言える。それらを探るために読んだけど、ええ感じに解像度があがった。色々変わったことやろうとしたけど、やっぱり俺はうたが好きなんかも。
もう一つの理由として、自分の親のこともあった。父親がフォークを昔やっていたらしく家にはアコギがあった。父が学生運動の際角材で殴られたという話を聞いたり、家にいつの間にかザ・フォーク・クルセダーズの『ハレンチ』が飾ってあったり、家の中に漂っていた「フォーク的な何か」を今になって具体的に知ってみたくなったのだ。
中学の時、フォーク・シンガーの笠木透さんが母と交流があり、誘われて「あなたが夜明けをつげる子どもたち」のガヤコーラス録音に参加したこともある。当時は音楽の教科書にも載ってた歌に参加してる〜くらいの認識やったけど、共産党の手伝いをしていた母(俺も赤旗の配達チャリでやってたなそういえば)と、笠木透さんが全国フォーク・ジャンボリーを企画した中津川労音の事務局長だったことなど、家に漂っていたフォーク感、うたごえ運動からの歴史も含めてなんとなく俯瞰かつ具体的な視点で見れるようになった。
11:40点滴終わり。
12:00昼食、鱈の塩焼きとか。
少し寝て、14時過ぎからプラプラしてみた。
静かな病棟エリアにいるとあんまり気にならないが、音のある1階の外来エリアに来ると、自分の片耳の聞こえなさに改めて「ヤバっ」てなる。
カフェのテラス席で読書。昨日まで雨が続いてたけど晴れてきている。こういう生活だと天気が気分に直結するので気持ち良い。
16時頃部屋に戻る。音があるところから静かなところに戻ると耳鳴りがかなり目立つ。
斜め向かいのおじいさんが肺がんらしく、抗がん剤を打ったりしていて大変やなと思っていた。読書をしていると、そのおじいさんが突然臆面なく5秒くらいの長くしかもでかい音の放屁をして、なんか自分のこと含め色々どうでも良くなった。
18:00夕食。「メヌケ」という魚の煮付け。入院初日にも出て、初めて食べたが美味かった。メバルの仲間で、釣り上げる時に水圧の変化で目玉が飛び出るから「メヌケ」らしい。
夕食後、先ほどのおじいさんがイヤホンでテレビ見てるのか、皆静かにしようと努めてる病室内で一人爆笑している。家やん。
22:00消灯。
消灯後周りがすっかり静かになると、自分の耳鳴りがよく聞こえる。常に「キーン」と1khzあたりの音が鳴っているが、よく聴くと、別のサイン波のような音がピッチを変調しつつ浮かび上がったり消えたりしている。
これを図形楽譜に起こし曲として再現すれば…と一瞬思ったが、そんな出落ち現代音楽崩れみたいなことダサいよな、と踏みとどまった。