読書感想文#1 「多種共存の森 1000年続く森と林業の恵み」
久しぶりに真面目に読書をしました。本って素晴らしいですよね。著者の方が何年もかけて研究したり考えてきたことを提供してくれるのですから。
今年はたくさんの本を読んで知識を吸収していきたいと思っているので、新しく「読書感想文」のマガジンを作ってみました。
今回はその記念すべき第一冊目、「多種共存の森」です。
この本では、長年著者である清和研二氏が研究されてきたことを一冊の本にわかりやすく纏められていて、それだけでもとても価値のあるものです。それに加え、序文や所々に散りばめられた、自然や文化への畏敬の念の記述が美しくて引き込まれます。ぜひ多くの方に読んで頂きたい本だと思いました。
よく知られていることですが、日本の国土の7割は森林です。世界の陸地面積の約3割が森林であることと比べると、日本は極めて恵まれた環境です。ただ、日本の森林のうちの約4割は人工林であり、その人工林は現在様々な問題を抱えていて、森林の質としては残念ながら良いものとは言えません。
(引用:林野庁ホームページ https://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/kafun/data.html)
この本では、その人工林を健全な森にするための提案がされています。提案の詳しい内容は本に譲ります。
私はこの提案に希望を持ちました。あの寂しい、杉やヒノキの人工林が豊かな生物多様性とそれが与えてくれる高い生態系サービスを持つ森に生まれ変わってくれたら、日本の国土はより価値のあるものになると思います。
ただ、これは10年などのスパンでなくて、50年後、100年後あるいはもっと先に実現される話です。今の日本の社会が、そんな遠い将来のことを考えて動けるかといったら、残念ながら否ですよね。たとえ、自分が生きている時に理想とする状態が見えなくても、それに向かって正しいと思うことを実践し続けるのは本当に難しいことです。その難しさを強く感じました。
しかし、今の社会には出来ないことが、出来ていた時代もあるのです。本の中では、アイヌ民族や東北の方々が紹介されていました。自然と共に生きるということがどういうことなのか、その暮らし方を育んできた文化がどういうものなのか、もっと深く知りたいと思いました。今年は北海道にいって、アイヌの文化を学んできます。
少し長いですが、筆者の思いにとても強く共感した箇所を抜粋します。私たちの暮らしのシステムはとても異常なものであることを、もっと認識したほうがいいのかもしれません。
近代文明はすべてにおいて「効率的である」ことを求めてきた。しかし、それが自然のメカニズムに沿ったものかどうかを考える暇がなかったような気がする。地球は丸ごと行きた生態系であり、その中でも高度に発達した森林生態系に学ぶことは多い。森林生態系のように一見複雑だが合理的で効率的なシステムをよく理解すれば、東京などの大都会は地球という生態系のどこにも属さない、まるで中空に浮いた人造システムだということが良く分かる。コンクリートでできたビルを高層化・密集化させ、人の密度を極端に高くし、何かしら経済的な効率を求めている。温度も光も水までもすべて人工的に制御し、衣食住、生活に必要なすべてが遠くから運ばれて来る。この危うい人造システムの維持に欠かせないのが電気だが、その供給には原発やその廃棄物処理場を必要とし、そして、それらは東京から離れた自然豊かな所に作られたのである。このような「効率的なゾーニング」によって自然のシステムの中で暮らしてきた「あまり効率的でなかった」人たちが汚染されたのである。地球生態系のシステムに反する者が被害を押し付けながらますます富み、生態系の枠組みに沿って暮らしている者が損をするような社会システム・経済システムが今、世界中で拡大している。こんな不平等な、そして偏ったシステムはもう終わりにしたいものだ。