生物系 博士就活(製薬)の時期、流れ、研究との両立

自己紹介

25卒で大手製薬に就活し、複数企業から内定をいただきました。
そのときの経験談と就活テクニックをまとめてます。
Xアカウント: くろ@mycroling

受けた企業
第一三共、中外、エーザイ、アステラス、大塚製薬、塩野義、住友ファーマ、日本新薬

*25卒 (2025年3月にD3を卒業し、2025年4月に就職する人)の例です。


全体のスケジュール感

・2023年1月 (D1の年末年始)
製薬の研究職を狙うなら今年就活だな~とぼんやり思い始める。とりあえずtwitterで役に立ちそうな情報を調べる。
正直、論文投稿に忙しすぎてあまり就活のことは考えていなかった。というか論文書きたい欲求が強すぎて研究のことばかり考えていた。このときはまだアカデミアに残る進路も半分くらい残っていた。
アカリクに登録した。

・2023年2月
ファーストの論文投稿完了。修士~博士のプロジェクトではこれが1本目の筆頭論文。
今回投稿した雑誌はアクセプトまで結構時間かかると聞いていたので気長に待つことに。
(ちなみに論文自体は学部の時のラボでいくつか出していたのでファースト何本か持ってました) 

・2023年4月 (D2スタート)
アカデミアに残るのも全然悪くないんだけど、自分の市場価値を測る意味でも民間研究職も受けてみようと決意する。いざ採用されて企業で働くのが合わなかったらまたポスドクからキャリア積めば良いし。
就活の軸は、「アカデミア並に研究ができそうで、アカデミアよりも待遇が良いこと」のみだった。
当時は、とりあえず第一三共、中外、エーザイだけ受けて、ダメだったらポスドクしようと思ってた。
OfferBoxに登録した。
(参考)
・年収ランキング 
https://answers.ten-navi.com/pharmanews/26034/ 
・現在の勢力図
https://twitter.com/crisprcas20/status/1548923171767992320?s=20


・2023年5月上旬
ほとんどの企業がエントリーの募集概要をまだ解禁していなかったので、ESを書いたりはしていなかった。
代わりに、アカリクとOfferBoxのプロフィールを100%近くまで出来る限り埋めた。これのおかげで自分の強みの棚卸しが完了し、自己アピールの雛形ができた。
また、就活することにしたものの、育志賞に推薦してもらえることになり申請書を書いていた。振り返って見れば、育志賞の申請書を書いていた経験は就活の研究概要作成にも活かせたので良かったかもしれない。(結局育志賞は取れなかったけども)
Webテスト対策の青本を買った。

・2023年5月下旬
第一三共、中外、エーザイの3社だけ受けるつもりだったものの、色んなブログ記事を読んで考え直す。最終的にこの3社をターゲットとするにしても、もう少し広く受けてみることにした。そうすることで、労力は増えるけれども本命のための実践的な練習になる。結果、この選択はめちゃくちゃよかったと思う。
初めて合同説明会なるものに参加した。どの企業も良いことしか言わないのであまり意味は感じなかったが、一度くらいは行っておくと良いと思う。
就活まじで何も分からんかったので、大学メールで送られてきた就活セミナーにとりあえず参加した。博士情報エンジン wakateというところが主催しているもの。本当に初歩的な内容から話してくれたのが良かった。

・2023年6月
本格的にESや研究概要を書いていた。
6月中旬頃には、研究概要の内容が固まったので、添削に投げ始めた。
実際に製薬業界に詳しい方に添削してもらいたかったので、tabeさんという方がやっている添削サービスを利用した。
(現在私もココナラで添削サービスを行っていますのでお気軽にお問い合わせ下さい)
Webテストの勉強はこの時期から始めた。
ここで論文のrevisionが返って来て大ピンチ。大量の実験と並行しながら何とか就活をこなしていた。日中は実験と解析をして、夜に就活する日々。このあたりは締切タスクをがむしゃらに打ち返す日々だった。あまり記憶がない。
このときに、博士早期選考の1次募集は見送って、一旦論文に集中するという選択肢もよぎったが、負けず嫌いな性格もあって就活も論文も続行した。
後から人事の人に聞いて分かったことだが、よっぽどのことがない限り、(ES等のクオリティが低くても)1次募集で出しておく方が良いらしい。2次募集の方が枠が少なくて倍率が上がるうえに、研究職は良い人がいて枠が埋まったら募集が打ち切られてしまうとのこと。


・2023年7月上旬
1社目のES落ち。普通に落ち込んだけど切り替えて何がダメだったか考えた。
企業に対する分析が甘く、「私は御社でこういう風に役に立ちます」というアピールが弱かったんだと思う。普通に分野の相性も良くなかった。(私はがん研究していないのに、オンコロジー分野の募集に出しちゃってた)
その後は少なくとも各企業のIRくらいはサラッと目を通し、自分の強みとうまく噛み合わさるようにESを書いていくと、順調にES通過し、面接の案内が来るようになった。
この時期はエントリーと面接が重なる時期で就活の忙しさがピークになった。
論文の方も、別の人が過去に出した結果が再現しなかったりしてドタバタだった。
締め切り直前は朝5時までES書いたりしたので、さすがに実験のペースは落ちてしまっていた。(特に面倒だったのは、動画型の選考、社会貢献活動とか書かないといけないやつ、後述のインターン型の選考の準備)
あと、深夜にES書いてて、「セッションがタイムアウトしました」でマイページが落ちる現象はまじで許さない。みなさんESはWordとかGoogle docsに書いてコピペしましょう。

・2023年7月下旬
面接の手応えはどれもそこそこ良かったが1社目の面接落ちを経験した。学部のときから発表賞の類はほとんど逃さなかったので、まさか面接で落ちるとは思っていなくて落ち込んだ。普通に学会とかよりも鋭い質問が飛んで来たりもしたのはビビった。同時に、このように頭のきれる方々と一緒に働けるのは良いなとも思った。
ここで反省して一気にプレゼン準備に気合を入れ直す。プレゼンの構成を見つめ直して、過不足ない情報量で、1番インパクトのある伝え方を模索した。それまで作っていなかったが想定問答集もかなり作り込んだ。(この経験を通して、プロジェクトの方向性や問題点が整理されたので、自分の研究そのものにも良い影響があったと思う。)

同時にインターン型の選考の準備に追われる。
インターンとか行かないといけないの?と思われるかもしれないが、実際に何週間も研究所に行くという話ではない。少なくとも私が参加したのは完全オンラインの数日だった。
この選考では、「自身の研究テーマとは異なるお題」に対し、ちゃんと論文を漁って「どういう仮説のもと、どういう実験をやったらこういうことが証明できて、こういう結果が得られる」というのを考えられるか?という選考である。アステラスのDISC選考が有名。
これの対策については長くなるので別記事を書きますがめっちゃしんどかったです。
(参考)
https://twitter.com/crisprcas20/status/1682335198296576000?s=20


・2023年8月上旬
1社目の内定。ここで随分と気が楽になった覚えがある。とにかく論文のrevisonの締め切りがやばかったので、内定もらった会社より志望度が低かったところは辞退。

・2023年8月下旬
1番行きたかったところを含めてさらに2社から内定。最終面接が2個残ってたが全部辞退して就活終了。いくらか延長してもらって、何とか論文のrevisonも返せた。

・2023年9月上旬
教授からの推薦状を求められた。
これは形式上のもので、この内容によって評価されたり内々定が取り消されることはないっぽかったので、ネットの雛形を参考に自分で書いて教授にハンコもらった。
推薦状を提出して就活終了。
晴れて自由の身になり、自分の研究に集中できるようになった。

まとめ

以上を踏まえて私なりに分析すると、製薬研究職で内定が取れるかは、
研究遂行能力3割、メンタル3割、就活テクニック2割、運1割、業績1割
で決まると思う。
*「運」には、面接官との相性、専門分野の相性、就活期間中に他のことで忙しくないか等が含まれます。

そして、就活と研究の両立は結構厳しい。なぜなら、募集要項が解禁されるまでぼんやりとしか対策ができないという就活の特性上、就活の準備はどうしても締め切りギリギリにまとめて行うことになるからである。少なくとも私はウエットの人間なので実験のスケジュールを立てることが困難になった。
そもそも、就活シーズン中に研究を止めれる/スローダウンできる人の方が、就活に有利なのは明らかである。「研究職に内定したければ、就活と研究を両立するべきではない」という悲しい事実。

私の場合は運良く体力の限界を迎える前に内定をいただけたので上記のスケジュール感で何とかなったが、正直なところ再現性はあまり高くないかもしれない。一歩間違えれば、論文と就活で首が回らなくなり、両方の締め切りに間に合わなくなっていた可能性もあったと思う。

これに基づいて、就活のピークシーズン前にやっておくべきだったな/やっておいて良かったなと思うことを以下にまとめた。

就活シーズンに入る前にやっておくべきこと

1. 就活サイトに登録/ブックマーク

逆採用
アカリクOfferBox
逆採用と言っても説明会に来てね、みたいな案内が来るだけで、期待するような優遇ルートはなかった。修士卒の先輩で、OfferBox経由でJCRファーマの研究職に決まった人を聞いたことはある。

情報収集
wakate (説明会/セミナー/博士選考の募集情報が一括で見れたりする)
みん就 (匿名の掲示板。参考になる情報も多いが、ガセもあるので振り回されないように)
OpenWork(業界研究/口コミ)
unistyleワンキャリ就活会議(過去のES/志望動機が見れて参考になる)
Answers(製薬業界news/時事ネタ)

最速で募集が見れるのは各企業の「採用情報」のページなのでブックマークしておく

*登録するとしょうもないメールがめっちゃ来るようになるので、就活用のメールアドレスを作っておくと良い。



以下では、私が思う効果的な自己PR/研究概要の書き方、事前にやっておくと良い根回し、忙しい中でも就活のモチベーションを保つための心構え、について書いています。

以降の内容
2. 自己PRや研究概要をまとめてみる
3. そもそも民間研究職を受けるべきかどうか考えておく
4. 就活シーズンに就活の時間が取れるように根回ししておく
5.(特別な就活対策をするより)普通にアカデミックに優秀な大学院生を目指す (+可能なら、少しでも業績をかさ増ししておく)

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よかったら読んでみて下さい。

2. 自己PRや研究概要をまとめてみる

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