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千葉妖怪伝説「その四 樹怪」
千葉妖怪伝説「その四 樹怪」
妖怪の中には人間の通行を阻むものがいる。通行妨害タイプの妖怪とでも分類しようか。
野外で人の行方に立ちふさがる妖怪なのだ。
例えば柳田国男が福岡の遠賀で採集し、後に水木しげる氏によって「ゲゲゲの鬼太郎」のレギュラー妖怪に採用され、一躍スター妖怪となった妖怪「ヌリカベ」。この妖怪なども、通行妨害タイプの妖怪である。棒のようなもので足元を払えば消えるというが、深夜にこの妖怪に出会った時の恐怖はいかほどであっただろうか。
他にも海上で舟の行方を妨害するのが妖怪「海ふさぎ」であり、ふさぐ替わりにに目玉を黒く塗るのが妖怪「めぬり」である。他にも道の行方に蚊帳が張られ、仕方ないのでめくって向こうにいくが、蚊帳をくぐり抜けると向こうにまた一枚蚊帳あり、更に、向こうにくぐり抜けると、更に向こうに蚊帳がまたあるという。このまま朝まで蚊帳をめくり続けてしまう人が多かったらしいが、落ち着いてめくれば36枚目に外に出れるという。蚊帳が人間界と妖怪界の結界の役割を果たしているのであろうか。この妖怪を「蚊帳つり狸」という。
当然、このような通行妨害タイプの妖怪は千葉県にもいる。それは、「樹怪」という妖怪である。この妖怪は、突然歩行中の人の前に倒れてくる妖怪であり、まるで大木ように道をふさぐと言われている。その姿は黒く長くまるで大蛇が横たわったような姿で出て来るというのだ。
何故このような妖怪が生まれたのであろうか。それは行政を司る各自治体における横つながりのなさ、或いは他エリアへの移動がままならぬ状態であった当事の日本の時代背景が関連しているのかもしれない。つまり、明治以前の日本において藩という形態は一種の国であり、他領に旅をする、他領を横切る事は命の危険にさらされる事であった。当然、他の自治体からの干渉やトラブルの不安あった事もある上、さらに、民間の無頼者による強盗・殺傷事件に巻き込まれる不安もあったでらあろう。その漠然とした不安が「行方と阻む妖怪」の誕生につながったと解釈するのが妥当ではないだろうか。
また私ももうひとつの仮説も立てている。
それは栄養状況による原因「行方と阻む妖怪」を生んだというものである。つまり、ビタミン不足という当事の慢性的な状態が二つの病気を引き起こしているのである。
まずは、流行った病気で江戸煩いというものがある。それは江戸の商人たちに好まれた白米に病気の発生原因があるのだ。言い替えれば白米に精米する事により、ビタミンが失われ、「かっけ(江戸煩いの大きな特徴」となってしまい。昨日まで歩けたのが、突如歩けない、前に進めないというパニック状況を引き起こしたのではないだろうか。この時に見るのが「行方と阻む妖怪」という幻覚なのかもしれない。
更にビタミンの欠乏は「夜盲症」という病気も引き起こす。先述した妖怪「めぬり」などは、この病気の症状に似ているのです。夜歩いてて、突如真っ暗になったら、やはり妖怪の仕業と当事の人は思ったでしょう。
このように「樹怪」という妖怪はかつて私達の先祖が見た栄養欠損状態における「幻覚」という名の代理的抗議なのかもしれません。
ご注意:
この記事は、地域情報サイト「まいぷれ」で掲載されていた「千葉妖怪伝説」というコンテンツを転載したものです。記載されている内容は、当時のものですので、現在の情報とは異なる可能性があります。ご了承ください。