【ネタバレ】恥もまた、成長への糧になる/「Winter boy」
こんばんは、瓶宮です。
気づけばもうクリスマスが近づいてきていますね。風が冷たくなって、マフラーをするのが必須になってきました。
そして、卒論を無事に提出することができました!ヤッター!締切日の午前2時に、教授から「ここの表示ミスってるよ」メールが来ていてビビりました。学生が忙しいとき、教授もまた忙しい……。みなさんも気をつけてください。自分が正しいわけがないと思ってください。
Winter boyを観たぞ!
「シチリア・サマー」を観に行ったときに、予告が流れていて気になったんですよね。というのも、「父が急死して、気分を変えるために知らない土地で過ごす」というあらすじが、私の好きな映画である「HOT SUMMER NIGHTS」を想起させるな……ということで。あんまり他作品に「〜っぽい」とか言うのもアレですが、このストーリーの名前がそれぞれSummerとWinterで奇しくも対になっていることに少し運命を感じてしまったので、映画館に駆けつけました。
ちなみに、新宿武蔵野館という映画館で観ました。館の雰囲気が好きで、作品に対する愛やリスペクトが感じられる展示が良いです。5年ぶりにここで観られてうれしかった。
以下ネタバレあります!!!!!
映画『Winter boy』のレビューを書きました! | Filmarks(ネタバレあり)
https://filmarks.com/movies/109504/reviews/165751009 #Filmarks #映画 #Winterboy
父を亡くし心にぽっかりできた穴に対して、どうすべきかがわからないリュカの姿に痛々しさを覚える映画でした。
リュカが過去を回想し、独白するという形で作品は進められるのですが、彼はこの話に「恥の物語」と名付けていました。それは、助手席で父の様子を見ていたときから死の予兆があったと思っていたことや、父の死に顔を見なかったこと、その寂しさを埋めるために見ず知らずの男と身体を重ねてしまったこと、母や兄たちとの関係がうまくいかずに手首を自ら切ってしまったこと、その他いろいろな未熟さに当てはめることができるでしょう。つまり、父を悼むという気持ちのやり場に困惑し、このモヤモヤを早くどうにか処理してしまいたいと考えてしまう未熟さを恥と呼んでいるのだと思います。
大きな悲しみと直面したとき、その場から逃げ出してしまいたくなる。その悲しみを背負うという責任を捨ててしまいたくなる。父の死に際して、「行事のように感じた」と語るリュカが印象的でした。父の死は、誰もが必ず経験することで、自分の行動とは関係なく迎える、ある種イベントといえるでしょう。しかし、いざそのイベントが訪れると、故人との交流の記憶が伴ってくるわけで、他人事ではなくなる。他の誰でもない自分と、他の誰でもない故人との間にある共通の記憶。それは自分だけのもののはずで、決して行事と呼んで他人事として流してしまうことはできなません。ですが、高校生の彼には、それを背負うだけの器がまだ生成されていなかったのではないでしょうか。
そこで、兄の同級生であるリリオと出会うことで、リュカにとって転機が訪れるのです。本当に、リリオはいいやつです。周りの人々はリュカのことを「父を亡くしたかわいそうな親戚」「かわいらしい顔をしたゲイのやつ」「息子の知り合いの白人」と、リュカ自身を見ていませんでした。そんな中で、「友だちの弟」でありながら彼の思いに寄り添った人間が、リリオだったのです。彼もゲイですが、唯一リュカに対して身体の関係を持とうとしませんでした。彼は、リュカに走りと歌を教えた。それだけ。
それこそが、心にぽっかりできた穴に対する修復方法でした。これまでは、大声で叫んだり、身体を重ねることで快楽を得たり、手首を切ったりして、その穴を早く塞いでしまおうとしていたリュカでしたが、走ったり歌ったりすることが自分の心の痛みと向き合うことに繋がるのです。「野生動物じゃないんだ」というセリフに呼応するかのように、人間らしい営みで父を悼み、自らの傷と向き合う。私はこれを恥と呼ばずに、成長と呼びたい!リュカ、死なないでくれて本当によかった。
私は大切な人の死を、自分事として受け入れられる自信がありません。喪失感と向き合うのがどれほど難しいことか。そうした経験をしたうえで、この作品を観たらまた感想も変わってくるのかなと思います。
ぜんぜん関係ないんですけど、映画を観た後に人の感想を見てから「あ〜そうだったわ!言いたいことこれかも」みたいなことをして自分の感想を書くことがあまりにも多い!(実際、作品を誤読していることもあるので、世に出す前に修正できるのはよい)
けど、今回は純度100%で書けました、うれしい!でも、最近まで卒論書いてたから、論文みたいになっちゃった。
それでは!瓶宮でした!
追記
「HOT SUMMER NIGHTS」のネタバレがあります!!!!!
「HOT SUMMER NIGHTS」では、父との別れを忘れようとして、主人公は犯罪の道に走り踏み外してしまいます。この思いから解放されたい、「羽のように軽くなりたい」という気持ちが主人公を加速させ、散っていく様子は、やはり奇しくもリュカとは正反対な結末に向かっていっている気がします。解放の夏が終わって物悲しさを匂わせる映画と、苦しい冬が終わって微かな希望が芽生える映画、どちらも最高でございます……。
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