旅するポキポキ

日が跨いで、僕は歩き出す。
跨いだことが決心に変わった。当然の様に、意気地がなかったのだ。

三月の夜は鉄の如く冷たく、僕の血は上に昇るみたいだった。すぐに足が痛くなった。
行くあてはない。北西の方向に、ひたすら歩こうと思った。楽を選べば、大通りばかり。細道には、しょっちゅう裏切られた。
車がスピードを落とさずにそのまま消えてゆく。たまに通行人。ゆらりゆらりとしていて、いつまでも居やがる。

僕は、何を求めているのだろう。
金になるわけではない。疲労感が増し、そのうえ孤独である。きっと、慰めてくれると信じたのだろう。馬鹿馬鹿しい。ならば、骨折り損である。何も変わらないのだ。どこかに落ち着き、寝てしまえば、また同じ気持ちの朝を迎える。

知らない街の商店街が僕を迎えてくれた頃、入り口のささやかなイルミネーションのその奥で、ついに空が紫色になってしまった。その色はとても現実的で、酷い。さらに明るくなるのだと、絶望した。全てが夢であって欲しいと思った。


あっさり青くなってしまった空の下で、僕は立ち小便をした。もう歩く気力がなかったので、電車に乗って帰った。その日の睡眠といえば、脚がじんじんして、とても気持ちの良いものであった。

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