見出し画像

しょくぶつ物語③

大麻ヘンプ法案が2022年1月26日にタイ国会に提出され、1カ月以上経っても同法案が審議されている様子は全く無かった。

「医療大麻使用目的だから、医療大麻使用目的だから」と反対派のタイ警察側を説得して大麻は指定麻薬第5類から除外、つまり合法になったのだが、詳細は大麻ヘンプ法案が可決されたら決まるという極めていい加減な予定だった。

同年6月9日にタイで大麻が合法化されたのを大麻ヘンプ法案が可決されたのだと混同している日本人が大多数だが、セター政権が発足した現在(2023年9月時点)同法案は審議はおろか再提出すらされていない。2023年5月14日の総選挙で大敗したクーデター政権で大麻自由化急先鋒のタイ誇り党は連立政権与党だったが、法案に不備が多過ぎて審議されなくなった。

その後タクシン元首相帰国を目的としたディールラップ(密約)によりタイ誇り党は連立政権第二位政党となり、アヌティン党首は内務相に就任した。当初は保健相続投かと思われていたが、「前進党外し」により大麻非犯罪化が維持されたのでそれでよしということなのだろう。

話は前後するが2023年5月14日のタイ総選挙前、アヌティン党首は「選挙が終わり国会が始まったら大麻ヘンプ法案を再度提出する」と言っていたが、選挙が終わってみればクーデター政権に加わっていた政党はことごとく惨敗し、アヌティン党首のタイ誇り党がかろうじて得票数3位に留まった。

ピター党首の前進党が第一党となり、タクシン派のタイ貢献党が第二党の8党連立政権はMOU(覚書)で「大麻を再び麻薬に戻す」ことを発表。

ネーウィン・チットチョーブ同様、アヌティンもタクシン派を裏切った人物。そしてタクシン派は嗜好用大麻反対だが不敬罪廃止も反対という立場。

前進党のピター党首は14歳の時にてんかんを発病し、米国で医療大麻治療を受けて治癒したという経験を持つ。2019年に行われた医療大麻自由化イベントにも参加している。ただ、不敬罪廃止が党是なので上院議員など王室派から反発を買っていた。

タイの選挙は日本のそれとちょっと違う。野党になると利権を失い、法案を出しても通らなくなり、下手すると暗殺される対象になる。

アヌティンは選挙で負けた後、明らかにタクシン派からの暗殺を恐れて香港、ドバイ、ロンドンと世界を転々としていた。そしてロンドンでタクシン派幹部と会い、命乞いをしてからタイに戻り、「タイ誇り党は王室護持が党是なので不敬罪廃止には反対です」と言い出した。

ここから先は

3,677字 / 1画像
この記事のみ ¥ 300
期間限定!PayPayで支払うと抽選でお得

記事作成の為、資料収集や取材を行っています。ご理解頂けると幸いです。