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2025 恵方巻選手権

恵方巻。それは僕にとって一年に一回の試練である。
毎年、毎年しっかりとその年の方角を向いて黙って、嚙み切らず、食べつくそう。その固い意志とは裏腹に毎年何かアクシデントが起きて失敗してしまうのである。いや、自分で勝手に厳密なルールを作って勝手に失敗してるだけなのが、、、
去年は、バイト先の賄いでちっちゃくて可愛らしい恵方巻をいただいた。
その時は食べてる最中に普通に店長に話しかけられて、体を店長の方に向け、大きな声で「はい、なんでしょう?」と返事してしまった。
恵方巻を成功させるためには絶対に、バイトを入れてはいけない。これが去年の学びであった。

さてさて今年はどうであろうか。まずは恵方巻を手に入れる事が第一条件である。今日は夕方まで用事であったので、夜になって急いで最寄りのスーパーに駆け込んだ。すると、まさかの事実、、、。

恵方巻が、、、ない。

ない、ない、ない!僕は今年、恵方巻挑戦権すら得られないのか、、
落ち込んだのもつかの間、近所にはもう一軒スーパーがあるのを思い出してそこへ駆け込むことを決意。
自転車を走らせ、駆け込むスーパー少し小走りで鮮魚コーナーまで一直線。58円のキュウリを横目に見て「もうこいつでもいいじゃん、と一瞬よぎったが自身の使命を思い出し再び前へ!」
まあ結果から言うと普通に大量に残ってた。何なら40パーセント引きで。夜7時まあそうか。割引の喜びと共に帰宅。いざチャレンジの時間である。

今年の方角は西南西。テーブルの前に鎮座。方角を定めいざ実食。の前に、なんかめっちゃテーブルの角度も揃えた方がいいような気がしたし、成功のためには真摯な対応をと思っていたので、テーブルも西南西に整えた。テレビもスマホも切って、一口目をかぶりついた。
その瞬間私の脳内に様々な情報が流れていった。
それは時間にして1秒。しかし彼にとっては悠久の時であった。

(以下僕の脳内)
「あ、今醤油つけて食ったけど、これ噛み切らんと食うんやったらもうちょっと醤油つけたらよかった。あれ、でもこの先長ない?え?これこのまま醤油なしで食べ続けなあかんの?生魚醤油無し?いやいやきついって。あ、テレビとスマホ切ったけどなんか暖房切るの忘れた、、、めっちゃうるさいやん。これもうなんか集中できないわ。最悪や。恵方巻さんこれぐらい勘弁してくれないか?あ、醤油無しの代わりにせめてわさび入っててほしいな。でもこのファーストタッチの感じ、わさび入ってないわ。そりゃそうよな。スーパーってみんな食えるように作ってるもんな。うわー、わさびつけとけばよかった。えーどうしよう。味無しきついなあ、、、、ん、え?このタイミング?今ですか今になってなんか急に暖房静かになったんですけど???いやいや気まずい気まずい。どうしようどうしよう。」
...…
...…
...…

気づいたら僕は恵方巻を嚙み切って両手を膝の上に置いていた。
部屋の沈黙を聞きながら西南西を向き直す。

今年も参りました。


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