【神奈川のこと80】二人の少年(北アイルランド ベルファスト~鎌倉市材木座)
二人の印象的な少年について書く。
kino cinema横浜みなとみらいで、映画「ベルファスト」を観た。
1960年代後半に起きたプロテスタントとカトリックの対立、北アイルランド紛争下におけるストーリー。
主人公の少年、バディがとても良かった。
家はプロテスタントだが、バディにとってはプロテスタントもカトリックも関係なかった。
家族、親戚、友達、近所の大人たちに囲まれて毎日を夢中で生きる。
クラスメイトのキャサリンに恋をして、将来は結婚したいと考える。
そんなキャサリンの家はカトリックだ。
バディ役の少年の演技にあっぱれと称賛を送りたい。
もう一人の少年は、「ぼく」という絵本の中にいる。
詩人・谷川俊太郎が書いた詩に、合田里美というイラストレーターが絵を描いた。
自死についての絵本だ。
切ないが美しい、不思議な絵本である。
海が出てくるページは、材木座海岸を想起させる。
ストーリーの舞台が鎌倉という訳ではないが、イラストレーターの合田さん自身が鎌倉に住んでいて、材木座から見える海の光景を描いたとNHKのドキュメンタリー番組で言っていた。
「ぼく」は自死するのだ。
理由は、はっきりしない。
昭和56年(1981年)、鎌倉市立西鎌倉小学校5年5組の時。
なぜか、死にたいと思った。
すべてが何だか虚しくなった。
大人にもなりたくないし、無邪気な子供にも戻りたくない。
誰もいない平日の午後、自宅の台所で包丁を取り出した。
シャツをめくり、お腹に切っ先を当ててみた。
「すげぇ痛ぇ~!」。
死ぬのは止めた。
あれから40年。
何とか生き続けてこられた。
二人の少年、バディと「ぼく」。