シマノ信者がグラベルバイクでSRAM AXS XPLRを使った話
例によって巷にはGRXやDi2のレビューはあふれているが、SRAM AXS XPLRに関しての情報は少ない(きがしてる)。書かれないものを取り上げるノートなので書く。なお、自分は生粋のシマノ信者であるが、パーツをとっかえひっかえするのでフルワイアレスのAXSにはあこがれていた。
1年ほどSRAMの電動シフト、Rival AXS XPLRでグラベルを乗り倒し、この度Reverb AXSドロッパーも入れて全部入りになったのでここに感想を書いておく。
結論
悪くはないが、インテグレーションのSRAM, 官能性能のシマノという構図がここにも。この傾向はしばらく続くと考える。
用語集
シマノと対比する形で用語を整理しておく
RIVAL:スラムの三番目のグループセットで、シマノで言う105
eTap AXS:スラム用語でいうところの12s ロード電動変速。MTBはEagle AXS、シマノでいうDi2
XPLR:スラム用語でいうところのグラベル属性の部品、シマノでいうGRX
というわけで例えばRivalでグラベルバイクを組むと、Rival eTap AXS XPLRというコンポになる。レバーは共通なので、実際はXPLRが付くのはRDやカセット、ドロッパーポストとなる。
ごめんなさい、実は
えらそうにSRAMのレビューを書いているが、リアカセットとチェーンはシマノ製、(CS-M8100&CN-9200) そしてフロントチェーンリングはそれに対応したWolfTooth dropstop STである。だって、SRAMのカセット異様に高いじゃん。なお、一年間このミックスセットアップに起因するトラブルは皆無であったが、調整はややシビアでTopから三枚目ぐらいに発生するわずかなチリチリ異音を消しきることはできなかったし、リアセンターが短くなればさらにシビアになるとおもうので、おすすめはしないが、もしマネをするならばお手持ちのホイールがマイクロスプラインに対応できるかどうかがキモとなります。
変速性能@グラベルライド
ロードDi2ユーザーでもあるが、1Xであれば、変速性能に不満はない。RDの反応がもしかしたら遅いかもしれないが、それでどうなるというレベルのものではないと思う。Garminと連動してバッテリー残量やギア位置がわかるのも最近のDi2とおなじ。
操作性やバッテリー管理に関して
初めは片手でリア変則が完了しないことに違和感があったが、特に1Xだと左右に分かれた変速体系は直感的でよい。すぐ慣れた。
ガーミンや携帯アプリによるバッテリーだが、OK、警告、ダメの3段階しかなく、Di2のように10%刻みではない。特にシフター側に関しては警告が出たらすぐに空になって変速不可になるのですぐに交換したほうがいい。左右別々に警告が出るが、すぐに同時に使えなくなる。
シフターの電池交換後はどちらのケースでもRDとの再ペアリングが必要であった。ペアリングはRD のAXSボタンを長押し、ゆっくり点滅になったら、左右のレバーも順番にAXSボタン長押しで完了。
😅ブレーキ・ブレーキ・ブレーキ
形状
フードの形状は好み。過度ではない頭でっかちの構造で荒れた下りでも手がすっぽ抜ける心配が少ない。 手がでかくないとダメ、と一部で言われているが自分は手がでかいのでよくわからないw
タッチ
ダメ、ごめん。油圧ディスクを前後160mmで使用しているが、ブレーキのタッチはシマノGRXに及ばないという印象。平地ならばグラベルでも舗装路でも問題はないと思うが、下りのつづら折りやトレイルの中では「ブレーキが掛けにくい」から速度を控えめに、となりストレス。なぜなのかよくわからないのだが、ロック間際のコントロールがシマノは軽い力で出し入れ自在な気がする。Heavy Dutyパッドにするとだいぶ改善するもののそれでもGRXには遠い。 フードを握ったときに中指と薬指が当たる箇所がGRXは凹んでいて、この差が大きいと感じる。新型REDのリーク画像からは改善してるよう見えるがどうかな。
140mmローターだと、日本の山岳ではだいぶしんどいのではないか。 なお、体重は71kgで乗り方は普通よりすこし荒い方だとは思う。
SNSでこれを言ったら「おりゃぁ全部SRAMで困ってない!」と絡まれたが、乗り方や体重にもよるから、個人の感想ってことで・・
パッド
高いw 2024年5月現在、純正で5000円である。Heavy Dutyパッドにするとかなりタッチや効きの立ち上がりが改善される(気がする)
ブリーディング
Dotオイルは塗装を侵す、とはいえ自分は困ったことはない。(20年前にオートバイをブリードしたときは辟易した。)水で流して拭き取ればほとんど問題はでないし、シリンジを2本使う手順は(往復が簡単で)シマノより手早くエア抜きしやすい。
ただ、ピストンを戻すのは少し大変。力がいる、というよりゆっくりとしか動かないので、押し込む力を長時間かけるとうまくいく。30秒ぐらいだろうか。うちの駐輪場にSRAMを置いておくと夏になると吸湿して、遊びがなくなることがある。これはマウンテンバイクもそう。みんな困ってないのか?
Reverb AXSドロッパーポスト
操作感
フロント1Xで組むと、左右レバーの同時押しで動作するのが秀逸。余計な部品をハンドル周りにつけなくていいし、フルワイアレスならば自転車間の差し替えも可能。このあたりのインテグレーションはシマノも本当に見習ってほしいし、業界は標準化を進めて欲しい(無理だな) SRAM AXSブランドは見事
製品構成
バッテリーが共通なのは素晴らしい。万が一RDのバッテリーが切れてもシートポストから外せば帰宅できるし。 ただ全長400mmはどうなのかな。75mmの稼働のためには長すぎる気もするし、長いものはフレームを選ぶ。
サドル調整がトルクスネジなのは何なのか?SRAM製品はやたらトルクスなのだが、出先などでいちいち不便なのでやめてほしい。
ポジション
ドロッパーポストというものはシートポストとしてはセットバック0かそれに近い。サドルを引いてる人はポジションが厳しくなる可能性はある。
そもそもグラベルに必要か
まぁそれは人それぞれってことで😅。自分はあったら使うんだけど、なくてもいいなぁとなって現在メルカリ中。たぶんブレーキがもう少し好みだったらもっとアグレッシブに乗るので違う感想かもしれんし、フレームサイズが小さめなので、前後荷重移動がしやすいとかそう言うのもあるかもしれない。
AXS全体の拡張性
マウンテンバイク用のEagle AXSと組み合わせたりすることも可能。1Xならばリア52Tといった巨大なギアを用いることができる。(ロードとEagleマウンテンで異なるチェーンなのでその場合のチェーンはカセットに合わせる)この点もシマノに見習ってほしい。今のところマウンテンDi2は11速で放置され、なかったことになってる。
まとめ
AXSブランドで統一された操作体系やインテグレーションは見事。ドロッパーポストやFDについているバッテリーは事実上、RDの予備バッテリーとしても機能するので「賢い」設計である。アプリの出来やAXSボタンを用いたペアリング、微調整もR9200世代のDi2よりだいぶまともなU/I。
ライドフィールやメンテナンスとしても実際に運用上問題となるようなことはない、しかし日本のテクニカルな下りやトレイルの中に入っていくとなるとシマノユーザーにはブレーキ性能というよりレバータッチで不満が出るかもしれない。(あと消耗品がたかくて在庫ない。RIVALのフードいつ入荷するんだ)
別の視点として、SRAMさんはREDからAPEXまで電動12s化して部品を共通化し少ないSKUでよく戦っている。Quarqを取り込み全グレードでパワーメーターReady、OEMの囲い込み(SRAM / Quarq / Rockshox / ZIPP)や1X, UDHの戦略とかほんと見事。WheeltopやLTWOOといった中華勢から完成車需要を防御し、シマノを攻撃している。
対するシマノさんは変速やブレーキの(官能的なまでの)性能と、低いグレードまで細かく作り分けた戦略、数が出る前提の戦略だが、ホイールの完成車採用は少なく、サスペンションもドロッパーポストも(FOXとうまいことやってるが)ない。 アップデートに紐が必要なDi2やいつまでも成熟しないパワメといったデジタル&ソフトウェアや偽物対策といったブランド戦略もかなり未熟で、ローグレード市場はマイクロシフトやLTWOO, SENSAHに突き上げを喰らっているように見える。
今後の予想
自転車のコンポーネント市場は2030年までに倍近い成長(Annualで6.5%)が予想されていて、シマノはその独占的な生産設備やサプライ、販売チェーン、製品品質からしばらくは盤石だと言われいる。しかしそれらは同時に新しいテクノロジー分野での戦いへの障壁を意味する。SRAM(やその他競合)はこれからもそちらに軸足をシフトしてくるだろう。しばらくはこの傾向は続きそうだ。
もう20年ちかく自転車にのっていて、ネタは色々あると気づきました。できるだけ他では語られないコンテンツを書いてコミュニティに貢献していこうとおもっています。 いつかどこかで一緒にライドしましょう!
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