12sチェーン シマノ スラム 互換性問題についてまとめておく。
さて、久しぶりにかなりマニアックに振った記事を書きましたw
もちろん公的には互換なぞないのですが、現実的にどのような問題があるのか、どうして互換性がないのか、どうすればどうにか運用できるのか、を整理しておく。
もう少しゴールを明確にしておきます。 シマノ、スラムの混在ドライブトレインに関してネットは「動いたよ」「ダメだった」という曖昧な情報に溢れています。 これらの情報は機材や条件、判断基準が曖昧であり、鵜呑みにしても思うような効果が得られない場合があります。加えて、どのようなリスクを包括しているのかは理解しておいた方がいいでしょう。
メーカーの情報だけが正しい、純正部品の使用のみが正義である、という言い分だけでは(正くはあるものの)解決できない問題に現実にはちょくちょくぶつかります(歯数の組み合わせといった先鋭的なものから、在庫や資金、スケジュールあるいは好奇心に関するものまで)
この記事では、チェーンのサイズを明確にすることで、メーカー推奨を超えた相互運用におけるリスクを考慮するための情報を整理したいと考えています。 何も推奨したり保証したりするものではありませんが、自己責任の美学と自由を望むものとしてDIY精神を支援する意味でこの記事を書きました。
事実
まず、いくつかの事実をまとめておきます。
存在する12sチェーン
2023年12月の時点でシマノ・スラムには以下の種類のチェーンがあります。グレードは区別しません。
シマノ12s HYPER GLIDE+
スラム12s Eagle chain
スラム12s Road Flattop chian
スラム12s T-Type Flattop chain
ピッチ
まず簡単なところから。いくつかの例外を除いて、自転車用のほとんどのチェーンのピンとピンの感覚は1/2インチです。 12sチェーンに例外はなく、全てハーフインチです。そのためピッチにおいて互換性に心配する必要はありません。
ローラー直径
自転車の多段変則チェーンは長らくローラーの直径は7.7(実測で7.65mmから7.72mm程度)という規格に準じてきました。しかし、12sチェーンには例外がありそれがSRAM Flattopチェーンです。
シマノ向けに設計されたチェーンリングやリアカセットに対して、Flattopのローラーは大きすぎるため互換せず。が基本となります。またフラットトップに設計されたギア類はシマノやEagleのチェーンに対応しない、となります。
重要なポイントなのであえて記載しておきますが、SRAMといえども旧来のEagle (T-Typeより前のSRAM MTBドライブトレイン)の12速チェーンは7.7mm規格を守っています。
また、昨年発表されたApex AXSのクランクはFlattop / Eagle両方に対応、とあり例外かつ孤高の存在です。使用するカセットに応じて、ロード/XPLRカセットの場合はFlattop, Eagleカセットの場合はEagleチェーンを使用するように、という指示があります。ApexのリングはRED/Force/RIVALとは異なるデザインのようです。
Xでご指摘いただいたので訂正いたします。正確にはREDを除いたForce / Rival のワイド1Xおよび Apexの1XでEagleチェーンが使用可能です。
2024/08/02 さらに訂正
RED E1 XPLRの発表に伴って、REDを含むワイド1Xが全てEagleチェーンとの互換、となりました。前版でREDが除外されていたのは誤植のようです。(納得)
シマノ12sチェーン、インナーリンクのツノ
下の画像からわかるようにシマノの12sチェーンはインナーリンクにツノが生えています。このことが一部のナローワイドチェーンリングで問題を起こします。具体的にいうと、チェーンがチェーンリングから離れる時にスムーズに抜けられず、ドライブトレインの下面からチェーンリングがチェーンを引っ張り上げます。当然パワー効率もその分わずかながら落ちますし、チェーンの振れ幅も大きく、トラブルのもとになります。シマノ12sチェーンをSRAMのFlattop向けギア、Eagleであっても使用すべきでない理由の1つ目です。
シマノ12sチェーン、クイックリンクの内幅
シマノ12sチェーンに付属のクイックリンクはその内幅が通常のアウタープレートより有意に狭くなっています。手元のCN-M9100で実測すると通常3.78mmに対して、クイックリンク部は3.56mmと0.2mm近く異なります。前述のインナーリンクのツノとあわせて、これはギアからの歯離れを悪くし、Wolftoothなどのメーカーにプロファイルの変更を強いました。これがシマノのチェーンが他社のギアに互換しにくい2つ目の理由です。
ここまでのまとめ
SRAMのFlattop系のチェーンは大きめのローラーサイズ、シマノHG+のチェーンはインナーリンクの角のクイックリンクの狭さから、それぞれ他社製のギアに互換しにくい構造となっています。
ケーススタディ
ここから先は現実的によくぶつかる問題をケーススタディとして捉えていきます。
SRAM 旧EAGLEチェーンリング + シマノ12sカセット
SRAM組のマウンテンバイクにシマノ互換のホイールをつける際に発生する問題です。 シマノの角や狭いクイックリンクを避けるためにローラーサイズが大きくない旧Eagleチェーンや後述のKMCなどの互換チェーンが無難です。
自分はトレイルライド程度で運用していますが、変則調整がシビアな他は大きな問題はありません。
シマノ 12sチェーンリング + スラム 旧EAGLEカセット
シマノ組のマウンテンバイクにて、SRAM XDボディのホイールを組み合わせる際のチェーン選定です。
上と同様な理由で旧EagleチェーンかKMCなどの互換チェーンが無難です。シマノ12sチェーンでやってみたことがありますが、1-2ライドでは大きな問題はでませんでした。とはいえ角やクイックリンクの問題でチェーンジャムや異常摩耗の可能性があります。
スラムFD&RD, シマノチェーンリング、シマノカセット
スラム組のロードにおいて、シマノHG+のホイールやGRX系MSのホイールを組み合わせる際のチェーン選定を考えます。
チェーンリングもシマノ互換の場合、RDのプーリーの歯の形状の問題は抱えますが、前後のギアがシマノである以上、シマノのチェーンが無難です。 ただしクイックリンクがプーリーからの歯離れが悪くなる可能性があるのでクイックリンクは旧Eagle(やKMC X12s)のものを用いると確実です。
チェーンリングがSRAM互換である場合はシマノチェーンは角とクイックリンクの問題が出るため、せめてローラーが小さいEagleかKMC X12が無難です。ただしチェーンリングで歯飛びが出るかもしれないですし
シマノFD&RD, スラムチェーンリング、スラムカセット
XDRのホイールをシマノ車につける場合でしょうか。多くのXDR互換のホイールは、HGのボディも入手可能ですので、本来はHGボディとHG+シマノカセットの入手を検討してください。チェーンリングはApexのものがEagle互換なので検討してください。そうすれば旧EagleやKMC X12で理論上、リスクを低減していることになります。
テンションプーリーに(シマノの)想定より大きなFlattopのローラーサイズがうねりながら突入してくる事態はよろしくありません。RDのケージ内でチェーンが詰まった場合、RD、ディレイラーハンガーからフレームまで犠牲にする可能性があるためです。フラットトップという選択肢は最も高リスクです。もちろん、「自分は普通に使っているよ」というご意見を否定するものではありません。あくまで、自分ならば避ける、という話です。
KMC X12
ここでKMC X12を紹介しておきます。
KMCのチェーンはカタログ上で「すべての12sチェーンに対応しています」とあります。 実測で以下のとおりですが、SRAM Eagleチェーンにきわめて近い状態です。カタログをどこまで信用していいかはわかりませんが、SRAMのEagleドライブトレインでシマノカセットのE-Bikeに使用しています。すでに述べたようにEagleチェーンでもサイズ上の問題はありませんが、GXよりわずかに安かったのでこちらにしました。特に問題はありません。
まとめ
いくつか例を挙げて説明したとおり、シマノの12sチェーンもFlattopチェーンもミックスした際にはあまり選択肢に入りません。いい具合に意地悪?されています。 旧Eagle12s チェーンやKMC X12はサイズ的にクセがなく無難な選択肢ですが、個人的にRIVAL以上のロードチェーンリングで中長期に問題が生じる可能性を考えています。 スラムロード系クランクは107BCDという変わったBCDなのですが、高価でもあるのでサードパーティの安価なチェーンリングでシマノ互換を謳っているものを探すかもしれません。
いくつかの閑話休題てきな話
ちょっとテーマからずれるのですが、11s時代からREDのローラーは僅かにデカい、という話
https://handsonbike.blogspot.com/2022/01/shimano-11-speed-vs-sram-axs-12-speed.html
Eurobikeに合わせて、XS-1207というHGボディにつく10TのFlattop対応カセットをSRAMが発表し、一部のマニアが熱狂しましたw。Flattop対応のため、シマノチェーンや旧Eagle, KMC X12でもやや不安が残りますが、このパーツにより旧来のHGボディマウンテンバイクホイールで、10Tトップの12s化が可能になる未来が開けました。今後注目していきます。
もう20年ちかく自転車にのっていて、ネタは色々あると気づきました。できるだけ他では語られないコンテンツを書いてコミュニティに貢献していこうとおもっています。 いつかどこかで一緒にライドしましょう!
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