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禁断のチューブレスタイヤ運用

もはやロードですら常識となったチューブレスタイヤ。自転車乗りはリムブレとかディスクとかの宗教論争が好きで、チューブレスもあっというまにロード脳の思考実験にされている感がある。

他で語られていることは書かないのがこのノートだが、もう15年以上チューブレスで運用しているし、先週パンクしたし、広く知られていないノウハウも自分にあるんじゃないかと思って禁断のネタをコンパクトにまとめてみた。 (いやコンパクトじゃなかった)


シーラントの選び方

これも宗教色もあるシーラントだが、基本的には 塞ぎやすさ、持続性、洗いやすさの3つを満たす製品はないと知るべき。傾向として、塞ぎやすい製品は持続性や洗いやすさが低め。持続性が売り物のFinishlineとかはレビューで「塞げない」とボコボコに書かれていた。正直期待してたんだ。

運用面で書いておくと同じ製品を使う限り、タイヤから古いシーラントを落とす必要はほぼない。シート状になったカスも穴を塞ぐために重要な役割を果たすし、リムフックやビードについた分もさほど気にしなくて良いと思う。事実、新品のタイヤよりすでにシーラントにまみれた中古タイヤのほうがリークしずらい。(つまり洗いやすさは二の次としても良い)その前提で好きなものを選べばよろし。

自分はスタンズのノーマル。値段と入手性の高さ、バランスかな。シーラントは細かいグリッターなどの固形物や半固体のラテックスなど、固形分がシーリングのキモ。こいつらが沈殿してるので、使用前には必ずよく振るように。この後なんども言うがよく振って。とにかく振って。

ところで廃液を含むシーラントの扱いなのだが、同じ部屋で何年もメンテナンスしているとやっぱり床がわずかにベタベタしてきて、埃や汚れを吸着して汚くなってくる。 こうなると、完全に除去は難しくもちろんパーツクリーナー如きではおちない。というか年単位で半乾燥したシーラントを落とす方法は清掃業社もふくめついぞ見つからなかった。引っ越した今では必ず屋外でおこなっていて空気入れる前にバルブコア押す、とかもテッシュに包んでから押している。 家が大切ならシーラントの扱いはすごく注意したほうがいい。

装着してから

タイヤを装着してから、長いノズルのついたシリンジですぐに、よく振ったシーラントを入れてる。もちろんほかの方法でもいい。 その後、一度安定したら定期的な継ぎ足しとかしない。基本的には組んで安定したらそのままで場合によっては2年ぐらい使う場合もある。 (レースの場合2−3週間前に追加したりすることもあるが、タイヤごと変えることも多い) 理由は めんどくさいし、それでもチューブドよりパンクしにくいと思っているから。完璧を求めると負荷が高いのは何でも一緒で、クリンチャーから上位互換であれば十分でしょ。

使っていると問題が出にくいが、長期間放置しておくとエア持ちが悪くなってくる(イメージとしては1年ぐらい)。1日で乗れないくらい抜けてしまう状態までくると、バルブコアを外してよく振ったシーラントを追加する。この時、1年以上経過していたら、古いシーラントは抜いて、新聞紙などに染み込ませて捨てる。近年のスタンズの特徴で2年ほどすると透明な液体のみが残っている。こいつにシールする能力はなく、むしろ新しい液と混ざると性能が低下する。(つまりこの点においても「普段の追加の恩恵」はひくい。役立たずの透明液がどんどん累積するわけだ。)

基本的にビードは落とさない。こういうタイプのシリンジを使うと、バルブコアも詰まりにくく、古いシーラントを抜くのも簡単とうちのリーダーに教えてもらって気に入ってる。 使用後、よくシーラントを古紙に飛ばして水道水で洗えば何年も使える。

長いノズルがついてる
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リムテープについて

話が前後するが、そもそも穴無しリムを選ぶべきである(断言)リムテープは3-6年ぐらいが限界で張替え、そして張替えには ベトベトで劣化したテープとの格闘だ。チューブレスリムテープはまた新たな宗教論争を引き起こしていて、ネットのコスパの噂を信じて3Mのテープを試し数年後に裂けまくって、次にカプトンテープを買い、張りづらくて後悔し、イエローテープのOEMと信じられてるTESAをかったりして迷走する。賢い紳士淑女の諸君は距離を置こう、そのためにはホールレスに限る。先人のわだちを踏め。以上。(ちなみに短期的にはゴリラテープやダクトテープでもMTB程度の気圧なら使える)

パンク時

まずパンクの瞬間だが「足をとめない」。シーラントが塞がるには2つの条件が必要でそれは「ある程度の気圧」「タイヤが転がっていること」である。 なので走っていてシーラントが噴き出したら基本は止まらないこと。 (下りならば減速はしとけ)最低でもタイヤが3回転ぐらい、あるいは10回転ぐらいしないと止まらないと思っていい。 フレームは汚れるが止まってはいけない。 運よく漏れが止まってもそのまま走るべし。直後に加圧しても被害が拡大するだけなので、空気圧が大きく失われなければ数分は走っていたほうがいい。

修理と携行品

パンク修理を決断した時点でまだ圧とシーラントが残っている場合、パンク箇所がわかれば、指でペタペタしたり地面にぐりぐりしてみる。大穴も半分抑えれば小穴になるでしょ。徐々に塞ぐイメージだ。必要ならこの時点で加圧の選択肢も考える。それでダメなら次の手順にすすむ。以下のものを携行しているはずだ。(携行して!)

  • 予備シーラントとビニールパイプ

  • チューブレスプラグ(工具とベーコン)

  • 予備バルブコアとコア回し

  • 最終手段 予備チューブ とバルブエクステンダー

調達方法も含め順次説明
予備チューブは下に詳しく書く  

追いシーラントで修理

そもそもスローリークでパンク箇所もわからない場合など、バルブステムの根本とかが怪しいし、シーラントが乾いていたり劣化している可能性が(特に自分は)高い。あるいは大量のシーラントを失ってからベーコンを指した場合なども含めて、この時はシーラントを追加。アリエクで「点眼容器」で検索すると二千円前後で50個ぐらい買える。ロードグラベルなら30cc, マウンテンバイクなら50ccの容器が良いと思う。移し替える前にシーラントを振るの忘れないように。 とにかくいつでも振れ。

このような容器に移し替える。多分2年ぐらいは使えるが、家でタイヤ変えるときなどに積極的に使って新しいものに入れ替えていくことも。

ホームセンターで外径6mm 内径4mmのビニールホースを買ってくると点眼容器からコアを外したバルブステムに入れやすい。 もしかしたら熱帯魚コーナーにあるかもしれない。

1mあたり150円程度 油圧ディスクのメンテにも使える。
半透明のシリコン製は柔らかすぎて使いにくいので安価で硬いやつがよい


3時や9時の位置から入れると逆流にしない
しつこいがボトルはよく振れ

その後加圧するわけだが、最低でも2気圧程度はないとシーラントは機能しない。すでに書いたように穴がわかっていたら、指や地面でペタペタして効果を上げることができる。

チューブレスプラグで修理

追いシーラント+加圧で改善しない場合や大穴すぎる場合、次にチューブレスプラグ(通称ベーコン)をねじ込む。 傷口をできるだけ荒らして新鮮なゴムとベーコンが接するようにしてねじ込んだら1-2分は待ってから加圧する。4気圧以上にしたい場合、場合によっては低め(2-3気圧ぐらい)で走行し融着するのを待つ。余剰部分をカットする意味はさほどない。数時間で抜けてくることがあって融着不足か穴が大きすぎるか。折りたたんで入れてみたり2本にしたりしてみよう。

経験上これで大体タイヤの寿命まで使えるが、高圧にするのは数日経ってからにしよう。帰宅後裏からパッチを張ればなおよし。

古くなって交換直前のタイヤで練習してみるとよい 。アリエクで「チューブレスプラグ」で検索すると千円ほどで買える。これで十分に使える

こんなもので十分。大きさはリップスティックぐらい。

バルブコア被疑

スローリークの代表格。
バルブコアが疑われる場合はとっとと交換する。これもアリエクで大量調達できる。アンモニアが入ったシーラントを入れるとバルブコアは2・3年で劣化したり詰まったりするので持っていて損はない。

予備チューブ

筆者としては、この段階まで進んだことは1度だけ、リムを座屈させた時だ。もちろんサイドカットなどもありうるが最終手段で予備チューブを入れる。 調達の段階で2つほど注意点があり、1つ目は前述の通りバルブコアが外せるタイプがよい。コアの予備になるのだ。次にバルブ長、チューブレス運用していると予備チューブのバルブの長さにまで気が回らないことが多いし、ホイールに合わせて携行品を変える人はすくない。延長バルブを一緒にもっておくといい。

最終手段は古き良きブチル 梱包用のラップで極限まで圧縮しつつバルブエクステンダーを一緒にしておくとよい。TPUは電動ポンプ使えないとかお助けチューブとか信頼性とかちょっとな

ビードを落とさない戦略をとっているとリムとタイヤが密着しすぎて外せなくなることがある。そんなの都市伝説だと思っていたが確かにある。左右のビードそれぞれ360度、いろんな箇所からアプローチしてみよう。どこかは落ちるはずだ。必ず。いやたぶん・・・

まあ近年はパンク修理もあきらめて保険に付随するロードサービスを呼ぶ、という向きもあるようだが、2-3時間余計にかかることになるので自分は現地修理派である。 できるようになっとけば遠征も不安がないし。

まとめ

メンテナンスから、パンク修理まで、とにかくビードを落とさないことを戦略の柱としている。 なぜかというと、一度落とすと、ビード上げやリークにおいて不確実性が上がるし、出先ではチューブを入れて加圧しても4気圧かそれ以上あげないとビードが上がらないこともある。落としてしまうとベーコンでの修理も絶望的になる。 (とはいえ一度上がったビードは、リムとの位置関係が回転しなければ、携帯ポンプでも上がることは多い。これは知識として知っておくとよいかも。空気抜けるとビード落ちちゃうリムもあるからね)

予備チューブを持っていれば事足りたクリンチャーより、不確実性は確実に増しているが、これは問題箇所の候補が多いためだ。予備シーラントとベーコン+電動ポンプの組み合わせは、握力に自信がないサイクリストにとっても対応はしやすいとも言える。不確実性への恐怖は、経験と知識で対処だ。 ぜひチューブレスタイヤを交換する前に木ネジでも使って、パンク修理を試してみて欲しい。 案外クリンチャーより楽かもしれない。


もう20年ちかく自転車にのっていて、ネタは色々あると気づきました。できるだけ他では語られないコンテンツを書いてコミュニティに貢献していこうとおもっています。 いつかどこかで一緒にライドしましょう!
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