紙の書籍と電子書籍、音源とCD、リアルイベントとライブ配信
こんにちは。
3月10日日経新聞夕刊文化欄にて、こんな記事を読みました。公演中止が相次ぐ音楽や演芸で、ライブ配信の動きが広がっているということについて書かれています。
わたしも、ここで取り上げられているびわ湖ホールの『神々の黄昏』 #びわ湖リング をリアルタイムで観ていました。東京交響楽団のコンサート #東響生放送 もリアルタイムで少しだけ聴いて、今日やっとタイムシフトを視聴しています。
記事で指摘されていることは、3つ。
▶興行は不可抗力への対策ができない
▶代替えの表現手段としてライブ配信は有効
▶興業と比べ、収入面の期待が薄い
これについて、わたしの意見を書かせていただけたらと思っています。なにとぞお付き合いください。
不可抗力への対策
不可抗力への対策、不可能ですよね。
2019年の夏には台風の影響で、公演の中止を決断した音楽家を見てきました。2011年の東日本大震災の直後も、節電のために自粛の動きがあったことを覚えています。
台風が来るというのはわかっても、いつ来るのかは直前にならなければわかりません。多くの興行は、1年近く前から準備しています。その時点では、わかりっこないことなのです。
文化芸術活動は、いくら人を勇気づけるものだとうたわれていても、ふつうの状態がなければ成り立ちません。予想していなかった出来事を受けて中止や延期をしなければいけなくなること、これはどうしようもないと思います。
でも届けるということだけを達成するのなら、今回のように手段を変えることもできます。
代替えの表現手段としてライブ配信は有効
紙面上でも指摘されていることですが、クラシック音楽はアンプなどを使わずに演奏します。そのため、生の音で楽しみたいというファンが多いです。わたしもクラシック音楽は、可能な限り会場で聴きたいです。
でも、自宅で聴くより会場で聴きたいという人は、クラシックのファンだけではありません。ロックやポップスだって、たくさんの人が会場に足を運ぼうとします。同じです。
しかし、非常時でなくともいけない人が多いのもリアルイベントです。遠方の人は翌日の仕事のことを考えなければならないし、交通費もばかにならない。となるとライブ配信は、やっぱりうれしいです。
公演自粛の代わり、でなくても、ライブ配信はもっとやっていいものだと思います。今回は誰も行けなくなってしまった状態を打破するための配信でしたが、行けない状態はこれ以外にも多いですよね。
興業と比べ、収入面の期待が薄い
かつてわたし自身もライブ配信をやっていました。数か月間、15分以上の配信を1日2回以上やっていた時期もあります。その投げ銭で得たお金は、ほんの数十円です。
これでお金を稼ぐようになるなんて、相当やらないと無理じゃない? 宣伝効果のためにやることしか意味がないのでは? いやいやそもそもの宣伝効果も薄すぎるのでは? と思っていました。
でも、これは無名の音楽家の場合です。
そして、お金を得る手段は投げ銭だけではありません。
定額制の会員限定サービスにしたり、リアルイベントのようにライブ配信用のチケットを買ってもらったり。そうやって視聴者にお金を払ってもらうという方法もあります。
わたしはライブ配信のオンラインサロン #やわラボ に入っているのですが、 やわラボがお仕事として関わっているクライアントさんには、視聴者からお金をもらって配信を行っている方もいます。それも、1組や2組ではありません。
もちろんご本人の知名度であったり、配信されるコンテンツがしっかりとしていることは大前提です。でもコンテンツがしっかりしていれば、お金を払ってでもライブ配信を観る方はいる、ということでもあると思います。
金銭面で興行の代わりにはならなくとも、収入の場所を増やすひとつの方法として、通常の公演でもカメラを入れてみることをご提案したいです。
「紙と電子書籍」みたいな関係にならないかな
「ライブ配信をやってしまうと、実際のイベントにお客さんが来なくなる」ということを危惧される方もいると思います。でも、ライブ配信とリアルのイベントは、全く別物です。
極端な話、テレビで野球や相撲の中継をやっていても、会場にはお客さんが入っていますよね。無料で配信をするのはこれに近いことだと思います。
映画館でのライブビューイングがあるからといって、実際のライブに参加するお客さんが減るわけではないですよね。有料でライブ配信をするのは、これに近いことだと思います。
写真が登場した当初、絵はなくなっていくと考えられました。でも、まだ絵はありますし、これからもなくならないでしょう。
デジタルが進んでいけば紙はなくなると考えられました。でも、まだわたしたちは紙の書類にハンコを押しています。これはなんとかしてほしい。笑
電子書籍が出たことで、紙の書籍は減っています。音源の配信が始まったことで、CDは減っています。でも、著者やアーティストからサインをもらえるのは紙の本ですし、形のある円盤です。ここを求める人は、変わらないと思います。
ライブ配信とリアルイベントは、紙と電子書籍の関係、音源とCDの関係、これに近いものになると思います。なってほしいなと思います。
おわりに
「ライブ配信がもっと注目されたらいいのに」
「もっといろんな人がライブ配信で中継したらいいのに」
そんなことを、ずっと思ってきました。
わたしが #やわラボ に入っているのは、わたしひとりではそれを達成できっこないと思っているからです。実際にわたしは特にライブ配信については特になにもできません。
そしてスマホひとつで配信できてしまうからこそ、スマホひとつではできないような高品質のライブ配信を、やってみる人が増えてほしいです。自宅で快適に楽しめるということは、本当に意味の大きいことなんです。
ライブ配信があれば、海外にいても出演者のことを応援できます。ライブ配信があれば、あまり家から出られない新米ママさんにだって届けられます。
今回、新型ウイルス感染拡大の影響によるイベント自粛要請は苦しいものでした。でも、不覚にもこうしてライブ配信に日の目が当たったこと、うれしく思っています。これからもっともっと、ライブ配信に興味を持つ人が増えますように。