あなたは座右の銘をもっていますか。わたしを助ける9つの言葉 2020年1月版
昨年12月、初めて行った居酒屋で、常連のお客さんと話をした。
わたしたちが話したのは「座右の銘なんて飲み会のスピーチくらいしか披露するところがない、だけどいつでも話せるようにしておきたい」というような内容だったと思う。それからそのお客さんと、お互いの座右の銘について話した。
わたしが自分の座右の銘をしっかり制定したのは昨年8月。話す機会がやってきたことをうれしく思った。飲み会のスピーチよりも先に。
ところで、座右の銘に決めた二つの言葉以外にも、ふと頭に浮かんできて自分を助けてくれる言葉が何個かあることに気が付いた。そういうものをすべて座右の銘ということにしてしまってもいいのかもしれない。
そしてわたしの座右の銘も、まだ座右の銘としての時間が短い。きっと生きている間何度も更新されていくだろうし、現時点でなにを大切にしているのかを記録しておいてもいいかもしれない。そう思ってパソコンの前に向かった。
そしてこれらの言葉は、音楽や演劇など、何かしらの創作作品からいただいたものがほとんどだ。つまりわたしという人間が、何に触れ何に影響を受けてきたかということを語るに等しい。というわけで、このnoteをわたしオーノサエの自己紹介に代えさせていただきたい。
あーあ 女の子って難しい
大森靖子『絶対彼女』
曲中のセリフから。この言葉の意味に助けられたわけではない。主に、出てしまった溜め息をねじ伏せるために使っている。
「あーあ」と声に出してしまった時は、すかさず「女の子ってむずかしい いっつも元気なんて無理だもん でも新しいワンピでテンション上げて 一生無双モードでがんばるよ!きみもかわいくいきててね」まで言い切る。
大森さんのかわいい声を思い出せるので救われている。
大森さん、わたしが溜め息をつくたびに脳内に登場してくださり、ありがとうございます。
選ばれなかったなら選びに行け
BUMP OF CHICKEN「オンリーロンリーグローリー」
BUMP OF CHICKENは中学生時代にハマっていたバンド。このバンドにはまらなければギターは始めなかった。
特に好きだった曲は『太陽』『レム』『Fire Sign』、あと『才悩人応援歌』とかも。『メーデー』はバンドを組んで文化祭でやった。『飴玉の唄』も何通りもの解釈ができて好きだ。
この時期以降はほとんど追えていない。10年近く全く聴いていなかった。聴かなくなって久しいのに、ときどき『オンリーロンリーグローリー』の歌詞が頭をよぎる。
コンクール、オーディション、バイトの面接、入学試験。選ばれない機会は何度もある。大人になってもまだ、選ばれなかった事実は心を強くえぐる。そんなときに必ず頭に浮かぶ言葉が「選ばれなかったなら選びに行け」。
選ばれなかったことを悔やんで立ち止まるより、何かを選び取るための行動をしよう。なんて前向きになれるのは、この言葉のおかげだ。
藤原さん、わたしの心に強く生きるためのタネをまいてくださり、ありがとうございます。
感情のステージに上がってこい
大森靖子『ドグマ・マグマ』
大好きなバンド、fox capture planが大森さんの曲のアレンジと演奏を担当したと知り、MVを流したら最初に飛び込んできたのがこの言葉だ。
感情を殺してクールにやり過ごすことがかっこいい! と思いそうなとき、これを思い出す。感情のステージに上がってこい。感情は下じゃない、上なんだ。
奇跡は手作り すべては地続き
大森靖子『POSITIVE STRESS』
だらしない自分に気づくときこの言葉が頭に浮かぶ。このままじゃなにも奇跡は起きないですよ。
そこそこの英語より飛び切りの母国語
MOROHA『二文銭』
留学からの帰国を決め、お世話になった人に報告していたときに、MOROHAのことを知った。
わたしは英語がまるで喋れない。フランスに留学していたのに、笑われるくらいフランス語も下手だ。楽器の技術は遜色ないと思う相手からも、言葉の面でダメだから馬鹿にされていると思うこともあった。
海外で言葉が不自由なのは致命的だ。圧倒的な努力不足だった。それでも、意思疎通が難しいわたしにだって、腕を信じてくれる友人がいた。うれしかった。
わたしは日本に帰ると決めた。日本語圏で戦うと決めた。これは言葉からの逃げではないし、世界からの逃げでもない。いいパフォーマンスをすれば言葉を介さずとも伝わる。そう信じてやっていきたいので、座右の銘にしようと決めた。
想像力に知識はひれ伏す
小林賢太郎演劇作品『LENS』
小林賢太郎さんがプロデュースする演劇作品『LENS』のセリフ。主人公の天城茎太郎に向けて、刑事である駒形蓮司が言う言葉。駒形は豊富な知識を持っているが、天城のような想像力は持っていない。駒形が羨むような想像力を、天城は持っている。
わたしはこの夏DVDを買い、この作品に触れて、この言葉がかっこいいと思った。座右の銘にしようと決めた。
わたしはサックスを専門にしてきた。同年代には知識量でも、技術面でも表現でも、ずば抜けているサックス奏者が大勢いる。わたしは彼らと比べて劣っているかもしれない。というか、ほとんどすべての領域で負けまくっている。
わかってる、誰よりも強いなんてことはあり得ない。世界で何本の指に入るようなサックス奏者になりたかったけど、なれっこなかった。わたしの負けだ。
でも、わたしが憧れているサックス奏者だって、曲を書いたりアレンジしたり、そういうことをやらない人だっている。できないと言っている人もいる。
わたしはアレンジや創作が好きだ。得意ではないけれど即興演奏も好きだ。曲がなければ演奏はできない。曲は知識と想像力によって産まれる。わたしの価値は、演奏の腕だけではない。
……ということを忘れないためにも、この言葉はGoogle Keepにピン止めしてある。知識だけあっても小説は書けないだろう。想像力が豊かでも面白い小説を書けるかどうかは別だが。
理想の自分と嫌いな自分 向上心と劣等感
小林賢太郎演劇作品『振り子とチーズケーキ』
小林賢太郎さんの演劇作品『振子とチーズケーキ』から。物語の核にもなる概念を現すセリフのひとつ。
この言葉自体は、人の心の中に二面性があることを表現しているだけだ。物語の中では二面性が振り子にたとえられ、反対側に振れるための力を貯めているという意味を持つ。
わたしは死にたいほど自分が嫌いで憎いとき、頭の中でこの言葉が聞こえる。この言葉のおかげで、今わたしは力を蓄えている状態なんだ、と思える。
振り子の二面性については、小林さんのインタビューを参照されたい。昨年下半期は、これを手帳に写して大事にしていた。
まず振り子は、人には二面性があるということを表しています。理想と現実の自分がいて、日常では嫌いな自分に支配されている時間が長くても、それはいつか振り子が振れる、つまりプラスに転じるためのパワーを蓄えている期間なんじゃないかなという思考が僕の中にあって。誰だって生きていれば嫌なことはあるけれど、立ち直らなくてはいけない。そういうときの心の形って、振り子みたいなんじゃないかなと。
『振子とチーズケーキ』インタビュー より
涙を落とすならノートで受け止めろ 泣き喚き叫ぶのならマイクを通せよ
MOROHA『五文銭』
泣くときはだいたい思い出す。
この言葉のおかげで、涙を流してただで済ませるようなことはしなくなった。
Le vrai bonheur est dans l'attente du bonheurs
2015年、初めてフランスに行ったときの帰り、空港のレストランで食事をした。そのときサービスのお姉さんが、フォーチュンクッキーをくれた。そのクッキーの中に入っていた言葉。
「本当の幸福は幸福の中で待っている」という意味。Google翻訳に聞いたら「本当の幸せは幸せを待っている」と言われてしまった。いまいちうまく訳せない。
ふわっとした言葉なので、いろいろな解釈をしている。手に取った当時は「だから、幸せな状態が幸せを生む」という解釈をしていた。
今は「だから、目の前の幸福を大切に育てろ」という意味だと解釈している。夢追い人は青い鳥症候群、ここにはない幸せを探し求める感じになりがちなので、持っている幸せのことも大切にできるようにしたい。
このフォーチュンクッキーの紙は今も楽器ケースにしまってある。
おわりに
自分の心の中を丸裸にしているようで恥ずかしい。
ぜひ、あなたの座右の銘もきかせてください。