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スプリントエンデューロという矛盾と真実 - エンデューロ日記 No.54

「スプリントエンデューロ」という競技がある。

エンデューロという語には「耐える。耐久的」という意味があり、そこからは時間や距離の「長さ」が想起される一方、スプリントという語からは、短距離短時間、また耐久力よりは瞬発力を想起する人が多いだろう。

なんとなく矛盾した感じがするこの名称がつけられた競技は、2005年頃にイギリスで始まったものだ。

エンデューロという競技は一般的に、長い移動区間と、スペシャルテストを組み合わせたルートを設定して行われる。移動区間はタイムチェックポイントで仕切られていて、あらかじめ守るべき所要時間が設定されている。その移動区間を設定時間に遅れないように走りながら、スペシャルテストでは1/100秒単位でのタイムアタックを行い、そこでの速さを競う。走行距離は1日150~300kmにもなり、競技時間は8時間に及ぶ。

全体として耐久的な競技であり、同時にスペシャルテストでは「スプリンター=短距離走者」的な能力も求められる。併せて、整備や修理の時間を制限し、かつ、原則として選手本人だけが車両に触れることができる、というルールによって、モーターサイクルを操縦する者としての総合的な能力を問う競技となっているのである。

スプリントエンデューロというのは、そうしたエンデューロを構成する要素から、特に、スペシャルテストだけを取り出し、主にそこでの能力を問う競技としたものということができる。

なぜそのような競技が生まれたのか。

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