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Parc Ferme 「ドラマの背景・冷酷な世間」- No.236より
第95回目を迎えるISDE、FIMインターナショナルシックスデイズエンデューロがまもなく、8月30日からイタリアで開催される。ミラノを含むロンバルディア州、トリノを含んだピエモンテ州にまたがる地域がその舞台。本来であれば2020年に開催されるはずだ。北イタリアのホストクラブ(運営団体)は、2019年には、パルクフェルメやタイムチェック、スペシャルテストの位置まで記した6日間のルート全体図を公表。準備が極めて順調に進んでいることを誇示。試合前後に観光できる場所も紹介し、世界中からチーム、ライダーが参加しやすいようにPRに努めていた。まさしく、モータースポーツ文化の中心地、北イタリアの面目を感じさせる。
しかしパンデミックにはこの情熱もかなわなかった。大会は1年延期。これほどの準備をしてきた大会を、丸々1年延期することの難しさは想像も及ばない。
ISDEが中止あるいは延期されたのは、1913年からの長い歴史の中でこれが3度目である。最初は第一次世界大戦の勃発、2度目が第二次世界大戦。どちらも終戦直後に再開している。冷戦下、モスクワ五輪を西側諸国がボイコットした1980年も、ISDEはフランス開催され、東西から代表チームが集い、ともに6日間のゴールを目指した。つまり、二度の不幸な大戦以外で中止されたことはなかったのである。
だが、モーターサイクリストたちはウイルスに負けたわけではない。一年の延期とはなったが、渡航に様々な制限が続く状況でありながら早い段階から、エントリー状況は順調だった。おおよそ30か国からエンデューロライダーが集まり、トロフィを、メダルを目指して6日間に挑む。
ISDEには各国のトップ選手が参加しているが、必ずしもプロライダーのすべてがマストなイベントとして参加しているわけではない。ISDEの開催日程が、世界選手権のシーズン中であることや、メディア露出が少ないこと、総合して、メーカーやスポンサーがISDE参加を後押ししないためだ。それがしばしば、ISDEの問題点として取沙汰もされるのだが、一方ではそれこそが、この6日間競技の価値を維持することにもつながっていると考える人もいる。
ここにくれば世界中の誰もが一介のアマチュアとして競技に取り組むことができる、ということだ。長い歴史の中で、数多くの著名なライダー、人物が、ひとりのアマチュア選手として6日間に挑んできた。誰でも、そのうちの一人になれる。それがISDEの大きな価値だ。
ISDEはまた、それゆえに「モーターサイクリストのオリンピック」と呼ばれてきた。各国代表チームが参加するからでもあるし、開催地が各国の持ち回りということもある。だが、本家オリンピックとは異なり、毎年開催されている。
東京オリンピックも、イタリア大会と同様にパンデミックにより1年延期され、同じ8月の開催となった。
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