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15YEARS IN ENDURO GP - 一時代の終焉 後編 - No.234から

FIMエンデューロ世界選手権。現在は多くのプロライダーが活躍する華やかなステージになっているが、実は、2003年以前、それはいかにも田舎の香りが漂う草レース的な存在に過ぎなかった。そこに改革をもたらしたのがプロモーターのABCコミニケションだった。

FIMエンデューロ世界選手権。現在は多くのプロライダーが活躍する華やかなステージになっているが、実は、2003年以前、それはいかにも田舎の香りが漂う草レース的な存在に過ぎなかった。そこに改革をもたらしたのがプロモーターのABCコミニケションだった。


伝統的な競技に変革をもたらした

 フランスの私企業であるABCコミュニケーションが、FIMとの契約でエンデューロ世界選手権のプロモーション活動に着手したのは2004年。それまで地味な存在で、プロライダーもあまり存在していなかったシリーズを、なんとかショーアップしてプロフェッショナル化しようというのが目的だった。

 ABCはすぐさま改革の大ナタを振るった。まず、それまで5クラスあった排気量区分をE1、E2、E3の3クラスに整理。欧州選手権や国内選手権の併催をやめて、エントリーをシード性にし、選りすぐりの120名に絞る。さらにEURO SPORTSをキーにした全世界でのTV放映も導入。同時に、ライブリザルトシステムを導入。それまでは、競技が終わってからしばらくしないと順位もわからなかったのだが、これによってまさに「ライブ」で競技の進行がわかるようになった。

 観客がもっとも集まる人工的障害物を配したスーパーテストやエクストリームテストを導入したのも、ABCコミニケーションだ。

 ABCの改革は、時に独断専行とも言われた。金曜日のスーパーテストについては「見世物興行。観客は集まるが、競技性が低い割にチームにもライダーにも負担が大きい」。エクストリームテストは「危険すぎる。渋滞したらどうするんだ」と当初は反発も受けていたが、数年すると「観客を楽しませる工夫は競技の発展に不可欠。ライダーとチームの意識の向上につながった」と評価は変わっていった。全体として「アランはよくやっている」。というのが関係者の評だった。

メジャーチームの圧力

 そのアラン・ブランシャールを悩ませたのは、ひとつはKTMグループからのプレッシャーだったことを、今では多くの人が知っている。エンデューロに、より高度なプロモーション効果を期待するKTMグループは、FIMエンデューロ世界選手権=ENDURO GPに、より一般受けするであろう、異種格闘技的な要素を求めた。それは結局、KTMが自ら肝煎りで発足させる新団体WESSによって再現されることになるのだが、2017~2018年の一時期、ENDURO GPとABCは、それに翻弄され自身のアイデンティティを危うくすることになった。

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