彼方へ - Go Beyond - 連載 Vol.22
著 / 山 田 徹
第四章 ラリーを主催するということ
其の二十三 天空の町ツェツェルレグで
気になっていたことが起きた。
「気になっていることは、必ず起きる」というのはこのラリー中に頻繁に経験していることだ。気になった事には、必ず手を打たなければならないという教えだ。「まあいいか」というのはほとんど通用しない。マーフィーの法則であり、パリ・ダカールでいやになるほど経験しているはずだ。その手が打てない状態が、混乱をきたしているということあり、指揮官の資質不足であるという状態だ。これらも戦争に似ているのではないだろうか。
その、気になっていた事とは、昨夜から先発で出た本部隊が、ツェツェルレグのビバーク地、つまりこの日のSSのゴールに到着出来ていないかもしれないということだった。薄暗くなった空をヘリは飛んだ。後ろから覆いかぶさるようにライダーの上に差しかかると、彼らは一様にギョッとし、そして上空を仰いだ。と次の瞬間アクセルを開ける。手を振る者もいる。こうして最後の川渡りを終え、ゴールまで150Kmばかりの道程を残り少ない燃料がゆえに、軽くなったヘリは、トップでゴールするはずの博田選手、ガントルガ選手を追っていた。
「もっとスピードを上げてくれ」
「だめだ燃料が持たない」
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