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Parc Ferme - 誰にでも同じ6日間

この不定期連載のタイトル「Parc ferme=パルクフェルメ」というのは、フランス語で「閉鎖した広場」というぐらいの意味だが、一般に、モータースポーツにおける車両保管場所として通用する言葉になっている。英語にも訳されていて、この場合「パークファーム」になるが、エンデューロでも、ラリーでも大体、「パルクフェルメ」の方が使われる。FIM(国際モーターサイクリズム連盟)の公用語は、フランス語と英語だが、英語版のルールブックであっても、パルクフェルメはパルクフェルメだから、余程、このルーツにフランス語圏の文化が強い関りを持っているのだろう。
 さて、ぼくが折々の話題を、好きなように書くために自分で用意したこのページに、パルクフェルメという名前をつけたのは、車両保管=パルクフェルメというものが、装置として、機能としてエンデューロを象徴し、同時にすべてといってもいいほど、この競技の在りようを表すものと考えているからだ。
 ISDE、エンデューロ世界選手権、イタリアの選手権でも、パルクフェルメシステムは、エンデューロという競技の骨格になっているものだ。

ISDE 1998 Australia
Rider : Yoshio Ikemachi
Photo : Hisashi Haruki

競技会場に来た選手は、まず選手としての登録を終えると、車両の検査を受ける。検査に合格すると、フレームやエンジンのクランクケース、前後のホイールハブといった、競技期間中交換できないパーツにペイントを受けて、そのままパルクフェルメに車両を入れる。その後は、翌日のスタートの15分前まで誰も手を触れることができない。自分のスタートの15分前になると、選手は、バイクをワーキングエリア(作業場所)に移動させるためだけにパルクフェルメに入ることが許される。そしてスタートの10分前にやっとバイクに作業をすることができるようになる。
 スタートしても、整備や修理をすることができるのは、基本的には選手本人だけ。タイムチェックで余った時間以外で、作業のための時間が与えられるのは、毎日のフィニッシュの前15分間だけ。その間にタイヤ交換や整備をすべてこなさなければならない。夕方の15分間で作業が終わらなかった場合は、また翌朝スタート前の10分間を利用することになる。世界選手権や各国選手権だったら、大抵2日間。ISDEであれば6日間、これが続く。

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