彼方へ - Go Beyond - 連載 Vol.6
パリ・ケープタウンの苦い経験から緊急のクラッチ交換にも備えた。室内のミッショントンネルは開閉式に改造した。これでミッションをロールバーから容易に吊れる。デフのスペアもケースごと車内にマウントした。一緒に送るスペアパーツや、中継地のビシケックに送り届ける大きな木箱も完成した。いよいよ世紀のラリーに挑む。パリ-モスクワ-北京だ。
著 / 山 田 徹
第二章 パリ・モスクワ・北京
其の一 湧き上がる闘志
一九九二年八月、再びパリへ向かう機中の人となったボクは、不思議なほどに充実した気分を感じていた。
3台体制でパリ・北京に臨むと決めてからの道のりの厳しかった事か。と、狭い国際線のエコノミーシートに腰をおろし静かに「湧き上がる闘志」と、ただただ充実感の心地よさに浸っていた。隣の席では2号車のナビを務める赤松カメラマンが、しきりに氷水を頼んでは、ポケットに忍ばせたスキットルのウイスキーを注いでは干していた。カメラマンとしてのラリー経験は豊富だが、競技者としては、初体験だ。彼の覚悟の表れだろう、まともなカメラを持ってきていない。
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