1-ON-1 釘村忠 「このスポーツの魅力をもっと多くの人に」 No.247より
4度のJECタイトルを持ち、ISDEにおける日本初、そして唯一のゴールドメダリスト。現在もランキング首位争いの主役をはるトップライダーである釘村忠が、新たな挑戦について語る。
Text : Hisashi Haruki
Images : Animal House, off1.jp
多くの人に知られていることではないが、JEC(MFJ全日本エンデューロ選手権シリーズ)には、今年静かな変化が起こっている。これまでのエンデューロテストに加えて、瞬発力が試される短時間の「スプリントテスト」と呼ぶべきスペシャルテストの導入。上位クラスではルートの難易度が上がり、競技全体のボリュームも増してきた。その背景には、新たな代表者を迎えたエンデューロ選手会の存在がある。2015年から4度の全日本タイトルを獲得してきた現役トップライダーの釘村忠。しかし、この新しい選手会長は、単に選手の声を集めて要望を提出するだけの存在ではないようだ。可能な限りの対案とともに将来像を描く。「主催のみなさんは、選手が考えている以上に、競技全体の成立を強く意識している」としながら、可能な「改革」をともに考えるという立場をとる。
「この楽しさを、より多くの人と共有したい」という釘村の思いは、選手会長としてのものであると同時に、ひとりのライダーとしての情熱と少しも違っていない。
やっとリズムをつかんだ富山
-- ここまで3戦が終了しました。開幕の広島、SUGOと2位が続き、富山でやっと2日間優勝という結果が出ましたね。振り返ってどんな展開だったと思いますか?
釘村 : テージャスは良くもなく悪くもなくという感じでいまひとつ乗れなかったんですが、SUGOでは少し良くなりました。ただ、いい時もあれば、悪い時もあると言う感じで、しっかり攻められるところまでは持っていけたんですが、ミスや転倒もあって、それでリズムを崩してしまった感じです。コスモ(富山)でやっと自分のライディングができた、って感じですね。馬場(亮太)君が速いのでやっぱり簡単ではないですよ。
-- 昨年の200から、今年は300に変更しました。
釘村 : 昨年はスキルアップの意味もあって200を選びました。軽くてハンドリングのいいバイクですが、トップレベルで速く走らせるには、やはり高回転をキープする必要があって、ブレーキングも加速も、コーナーのライン取りも高い精度が要求されるんです。そうした走り方を学習して、今年は300のライディングに活かしたい、というのが狙いなんです。300は低回転からパワー、トルクがあって、4ストとはまた違ったスムーズな粘りがあります。それを活かしながら、200のように精度の高いライディングを目指しています。Betaファクトリーチームのライダーのような走りのイメージがあって、そこに近づけていきたいんです。イメージは見えてきているんですが…。
-- 第3戦の富山で勝てた理由を分析してください。
釘村 :300の乗り方にアジャストしてきたというのもありますし、走り込みの量も増やしてきたこともあって、リズムに乗れました。コスモは周回数、スペシャルテストの回数も多くて、接戦でもあったのでかなりいい感じでペースも上がってきたのが良かったですね。バイクのセットアップもSUGOの後に変更して、これもマッチしていたと思います。KYBのサスペンションは、スプリングレートを上げてより強く、バルビングも変更して、より攻めやすくなった感じで。BetaのHGSチャンバーを導入したのと、ノリフミのサイレンサーは、より粘りが出る方向で全長が長いタイプになっています。バイクの仕上がりとライディングと、いろいろかみ合った感じですね。
-- 富山はハードな内容でした。
釘村 : 選手会として、全クラスで競技のボリュームを増やしてほしい、という要望を事前から主催者、コース運営の皆さんと相談し、実際にコースにも行ったりして、かなり要望を反映していただくことができました。周回数とテストの回数が多いだけではなくて、ルートにもクラス別に難易度が高いセクションを作ってくれたり。テストも全体としてシングルトラックが多いんですが、狭い林間でも何本もラインがあり、ライダーが選択し、自分で考えてベストラインを組み立てることができるようになっていたり。コース全体はコンパクトなんですが、それを最大限に活かした競技を作っていただけたと思います。
選手会という立場
-- 今年からJECの選手会長を引き受けました。その理由とは?
釘村 : JECは本当に楽しくてやりがいのある競技なので、この楽しさをもっと多くの人と共有したい、という思いがまずあります。そのためにはどうしたらいいか、ということはずっと考えてきましたが、その方法のひとつとして、選手会の活動をしっかりとしたものにしたいと考えました。現在のJECも楽しいんですが、その魅力の割には参加者数が増えないという問題も大きいですね。参加者数が少ないことは、主催運営のみなさんの直接的な負担増にもなっているわけですし、この先10年、20年続いていくには、しっかりアクションしていく必要があると思います。
選手が個々に、いろいろな要望を伝えてきた、ということはこれまでもあったと思います。選手会として活動して、選手の意見を集める中で気が付いたことは、それが、けっこう一方的な言い方や要望で、運営サイドのことをあまり理解していない。そうすると、ただの言いっぱなしだったり、一方通行で終わってしまいがちです。そうではなくて、選手から見た競技、運営。選手が望むこと。そういったことを、建設的な意見や案として取りまとめて、主催運営のみなさんと一緒に考えて、競技に反映していくことが必要だと思います。その調整役として、ぼくのような立場の人間が役に立てるんじゃないかと考えたんです。
-- シーズン前から活動を開始して、3戦が経過しました。選手会長としての活動の中で気がついたことはありますか?
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BIGTANKマガジンは、年6回、偶数月に発行されるエンデューロとラリーの専門誌(印刷されたもの)です。このnoteでは、新号から主要な記…
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