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JEC 2021 - タイトルは飯塚翼に - No.238より
最高峰クラスのタイトル争いは北海道ラウンドで若手の2人に絞られた。その差はわずか6ポイント。すべてはSUGOの2日間に持ち越された。そこで待っていたのはすべてが試される最高のステージだった。
MFJ全日本エンデューロ選手権 R6/7
村田SUGO2デイズエンデューロ
2021年11月20-21日 スポーツランドSUGO
Photos : Masanori Inagaki - off1.jp
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重要なシーズンファイナル
開幕の広島でディフェンディングチャンピオンの釘村忠(Beta)がノーポイントのレースとなり、続く第2戦のいなべでは鈴木健二(Yamaha)も大きくポイントをロス。この時点で新体制のGASGASに乗る保坂修一がランキング首位に立った。
保坂はJNCCでのクラッシュで鎖骨を骨折するが、その2週間後の北海道大会、ルスツ2デイズには怪我を圧しての出場を決めた。タイトルの可能性が大きくなっていたからだ。
北海道は、鈴木健二が公道仕様で戦闘力のあるマシンを持たないために欠場。釘村忠も欠場となり、ここでランキング首位争いは若手の2名に絞られる結果となった。
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飯塚翼(Sherco)と保坂修一(GASGAS)。
飯塚は、今季、Shercoの4ストロークを選択して昨年以上の好調を示している。一方の保坂はリスクを負っての出場。プッシュするもののやはり痛みもあって及ばず、ルスツは飯塚のWウインで終了。勝負は最終戦SUGOに持ち込まれた。飯塚、保坂のポイント差は6点と、双方ともにプレッシャーの強い戦いとなるはずだ。
JECを象徴するラウンド
SUGOの2日間大会は、2005年にMFJ全日本エンデューロ選手権シリーズが発足するそのきっかけとなった大会でもある。スポーツランドSUGO内の舗装路を含む、1周約25kmのコースに、今年は、クロステスト、エンデューロテスト、そしてトライアルパークに特設されたエクストリームテストと、3カ所の性格の異なるスペシャルテストが設定され、さらに2日間のスケジュールの最後にはISDEのそれを模したファイナルクロステストが、SUGOの常設モトクロスコースで行われる。スペシャルテスト以外のルートもシングルトラックを多く含むテクニカルなもので、ライダーにはあらゆる局面に対応するスキルが求められる。ISDEに比べるとコンパクトだが、そこにエンデューロの醍醐味が凝縮されたような競技は、シリーズの最終戦としてふさわしく、多くのライダーに支持されるものだ。
テクニカルなシングルトラックは、雨が降ると難しいコンディションになることもあるが、今回は好天に恵まれ、ライダーたちは心地よいトレイルでの走りと、スペシャルテストでのフルアタックの両方を楽しんだようだ。
馬場亮太とYZ125
序盤からBetaの釘村忠がベストタイムを連発してリードを拡大していく展開となったが、エンデューロ初出場のモトクロスライダーの馬場亮太(Yamaha)が徐々にタイムを縮めて釘村に迫っていく。2ラップには一番時計も奪取、エクストリームテストではこの日のファステストラップもマークした。
「初めてですし、特にエクストリームテストはまったく自信がなかったんですが、案外良かったので驚いています」という馬場亮太は、釘村に6秒差まで詰め寄る活躍。
最終的には釘村忠が逃げ切って初日を勝利するが「今日はワンミスで逆転されるヤバい展開でした。125ccの馬場亮太がこんなに速いと思いませんでした。明日はもっと集中してタイムを出していきます」という釘村。2位は馬場亮太、3位に飯塚翼(Sherco)が続く。保坂修一(GASGAS)はミスコースで大幅タイムロスし5位、飯塚に続く4位には中島敬則(Yamaha)がつけた。
飯塚翼(Sherco)は保坂とのポイント差を拡大してタイトルへの足場を固めた。
「釘村さんとの差が大きいですね。相当攻めないと追いつけないと感じました。今日はポイントで競っている保坂修一との差を意識して攻めきれなかったと思います。明日の最終日は、しっかりとチャンピオンらしい走りをしたいと思います」。
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酢崎、向坊
IBクラスは今回もIAレベルのタイムを連発した酢崎友哉(Kawasaki)が2位に1分34秒もの差をつけて圧勝。「今年モトクロスをやってて、モトクロス全国大会でSUGOも走っていたんです。MXコースにはかなり慣れてきて自信があったんですが、それ以外のところがいまいちでしたね。2022のKX250は、どのテストも問題無く走れました」とニューマシンの好調もアピール。2位は北海道の馬場崇行(Beta)、3位に富永陽平(Honda)という結果。
黄色ゼッケンのNAクラスは前ラウンドのルスツでマシントラブルによるノーポイントを喫した向坊拓巳(Yamaha)が、2位泉谷之則(Husqvarna)に50秒の差をつけて勝利。
ウィメンズクラスは太田晴美(Yamaha)がポイントリーダーの保坂明日那(Kawasaki)に58秒の差をつけて優勝、2位保坂、3位に和田綾子(Yamaha)というポディウムの顔ぶれ。
飯塚が苦難のシーズンを清算
前日に続き晴天のドライコンディションでスタートした土曜日。出場の馬場に一時6秒まで詰め寄られた釘村忠は必勝を期してのスタート。しかし序盤のテストタイムを引っ張ったのは榎田諒介(Yamaha)、1番、2番の時計を連発して釘村を脅かすが、中盤からコンセントレーションを取り戻した釘村が逆転、リードを拡げて優勝。馬場は、スペシャルテストを見逃すというミスでこの日はDQ、3位には前日のミスを挽回した保坂修一(GASGAS)、4位には飯塚翼(Sherco)、ファイナルクロスもトップでチェッカーという活躍、前日のコメント通り、王者にふさわしい走りで自身初タイトルを決めた。
「最高です。ファイナルクロスで沼田(誠司)さんが前に見えた時、これはいけるなって思っていました」。今年は4ストロークにマシンを変更して開幕から調子がよかったのですが、学生から社会人になって生活も大きく変わり悩んだシーズンでした。学生の時のようにはバイクに乗れなくなって、トレーニングが不足しがちだった一方で、ライバルで仲間のヨシカズ(保坂修一)は、毎日乗れる環境を作ってどんどん速くなっていくし…。もう真剣にレースをやるのはやめてエンジョイライダーになったほうがいいのかな? って。そう思って1ヶ月以上乗らない時期もあったんです。その頃に、中部にレースを観に行ったら、やっぱり乗りたいって思い直して、それからは毎日、仕事から帰ってからトレーニングをして、整備して、しっかり取り組むようになりました。やっぱりバイクは楽しいって思えるようになりました」。苦しかったシーズンは、ShercoのJEC初タイトルという結果にもなった。
最後までタイトルの可能性にかけていた保坂修一は「骨折もあって、苦しいシーズンになってしまいました。まあ言い訳でしかないのですが…。この最終戦で、まだまだスピードが不足しているということを痛感できました。来年こそ、釘村さんに勝てるように頑張りたいです」。
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山本礼人はもうひとつのタイトル
IBクラスでは、やはり酢崎友哉(Kawasaki)がすべてのスペシャルテストで1番時計、さらにファイナルクロスもホールショットからチェッカーと、パーフェクトな勝利。IAクラスを含めた総合でも8番手というリザルトで強さを誇示。
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