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女子メダリストに学ぶシックスデイズ仕様の造り方 - No.238より
一生に一度か二度、そんなチャンスをものにして世界最大のエンデューロに挑戦するからには、必ず実力の100%を発揮したい。そのためにはどんなバイクが必要なのか。
Photo & Text : Enduro21 editorial team
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ISDEを走るバイクとは?
同じKTMであっても、ISDEを走るバイクには大別していくつかのタイプがある。ジョセップ・ガルシアのKTM350EXCFや、テイラー・ロバートのKTM450SXFのように、市販車のような外観を持ちながら、かなり特殊なセットアップが施されたファクトリーマシン。あるいは工場の表玄関から出てきたそのままのバイクに、開催地に合ったサスペンションセッティングをしただけのレンタルバイク。もうひとつが、自分でセットアップしたバイクをバンに積み込むか、またはコンテナに箱詰めして輸送するかしてパドックに持ってくる方法。
私たちにとって最も現実的なのは、レンタルか、または自分のバイクを使用することだが、今回紹介したいのは、後者の場合に参考にできるバイクの作り方だ。アマチュアのライダーにとって重要なのは、それが完全にボルトオンでできるモディファイであるということ。スパナを回すスキルがあれば充分。そんなISDEバイクの作り方をイタリアのパドックからお届けする。
これはISDEのフィニッシュラインを通過するための現実的で具体的な方法である。
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ロージーの250TPI
紹介するのは英国のウイメンズトロフィチームの一員として出場。ファイナルクロステストを走り切ったロージー・ロヴェットのKTM250TPIだ。一見して多くの部分に手が入っているバイクであることがわかるが、彼女は「何もヒミツにするような部分はない」と、快く取材に応じてくれた。すべて市販されボルトオンで導入することができるパーツ。このセットアップは、ISDEを目指すライダーだけではなく、ハードエンデューロ、トレイルライディングを楽しむライダーにも大いに参考になるはずだ。
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その仕様
・Hel製ブレーキ+クラッチホース
・K-Techサスチューニング(F)、リアサスプラダーキット+10mmローダウン
・KTM PPトリプルクランプ
・P3マスターシリンダークランプ
・φ9mmクラッチマスターピストン
・Forceクラッチカバー
・Forceスロットルホルダー
・前後ミシュランEDミディアム
・前後ミシュランBIBムース
・Motion Proスロットルチューブ
・ラジエター改造(底部パイプ角度変更)
・Samco冷却ホース
・手動式冷却ファンスイッチ
・V-Force 4Rリードバルブブロック
・TM Designsチェーンスライダー
・Raptorチタンフットペグ
・Twin Airハイフローフィルター
・Bremboファクトリーキャリパー(R)
・DPブレーキパッド
ワイヤーロック
このバイクのひとつの特徴か、全体にワイヤーロックされているボルト、パーツが多いことだ。セットアップを行っているのはロージーのお父さん。愛称は「ファクトリー・フィル」。彼は次のように話す。
「ISDEでは整備に費やせる時間が限られているし、きちんと整備したバイクであれば6日間でそれほど多くの部分に手を入れる必要はありません。むしろボルトの緩みをチェックしたり増し締めする手間を省くほうが得策なんです。このバイクでワイヤーロックをしていない部分を探してみてください。ロックしている場所よりずっと少ないから簡単ですよ」。
ISDEではパルクフェルメがあるので、整備ができるのは朝のスタート前10分と、夕方ゴールしてからの15分だけ。転倒して部品交換が必要になったら、通常の整備のための時間はほとんどなくなってしまう。できるだけ時間を節約することは、アマチュアにとっても重要だ。ワイヤーロックされたボルトは増し締めをする必要がないので、各タイムチェックでの時間にも余裕ができることになる。
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ラジエターシュラウド
サイドパネルとも呼ばれるパーツだが、フィルはこの取付方法を再検討し、工夫が必要だと考えた。サイドパネルは通常、2本のボルトでラジエターに固定されているが、これをラバー製のバンドに交換することで、短時間で簡単に脱着できるようにしている。ラバーバンドの先端は、ラジエターガードの穴を貫通して、アルミクリップで固定される。
サイドパネルの固定はしっかりとしたものだ。
経験した人ならみんな知っていることだが、ラジエターは、転倒などで簡単に変形するため、一度ボルトを外すと、マウント位置がズレたりして脱着に手間取ることがある。この方法ならフレキシブルで作業は簡単だ。
ちなみにオイルフィラーキャップも紛失防止用にワイヤリングが追加されている。
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ラジエターパイプの改良
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