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若者が送った航空書簡が伝えること。夢に向かって進んだ日々

彼はパリダカのファクトリーライダーを目指して、単身、イタリアへ、エンデユーロの本場、ベルガモに移り住み、やずてレースに出場するようになる。そんなことをするやつが、本当にいるんだ。

君は、本気で夢に向かって進んでいるか?


文 / 春木久史

捨てられない思い出


 
 イチョウの落葉が舗道にきれいなカーペットを作る季節。ぼくは引越しのために忙しい数日を過ごしていた。十年以上住んでいた古家は取り壊すことになり、1ブロックだけ北の街区に、しばらくの間移ることになったのだ。やや手狭なところのため、否応なく、たくさんの荷物を整理・処分することを余儀なくされた。もっとも、ご他聞に漏れず、家の中には、ガラクタといっていいようなものばかり。雑誌や写真のような資料もかなりのものだが、なんといってよいかわからないようなくだらないものの堆積。価値があるといえばある、ないといえばない、きれいさっぱり捨てることができればすっきりするのだが、どこか愛着を感じてしまい捨てきれない。つまりは、積年の垢(あか)のようなものだ。「捨てるものと捨てないもの」の境界となる「閾値(しきいち」は、最初は高いのだが、ぽいぽいと右から左へ捨てる作業を続けるうちに、次第にハードルが下がり、やっと思い切って処分することができるようになる。思い出の旅行の写真も、一枚ずつ残っていれば充分ではないかと思えるようになった。まして、使わなくなったヘルメットやジャージ、草レースでもらった不釣合いにデカいトロフィなど、どうでもいいじゃないか、と。
 だが、どうしてもこれは捨てられないというものもある。

イタリアからの航空書簡


 「前略。お元気ですか。この手紙が届く頃、もしかしたら日本に戻っているかもしれません。5月25日、26日にボッビオで開催されたエンデューロ世界選手権に出場し、そこで怪我をしてしまったのです。


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