Parc Ferme 「輝ける6日間」- No.239より
Text : HisashiHaruki
Image : Future7Media
雑誌に限らないが、メディアの製作者というのは往々にして「~らしさ」というものを求めるものだ。出来事であれば、例えば「完走率わずか数パーセント!」とか「悲願の金メダル獲得!」など。被写体も同様で、フィギュアスケートの選手が転倒すれば、いかにも落胆したような表情を切り取りたい。もちろん、そうすることで読者、視聴者には物事がわかりやすく伝わるわけだが、しかし、それは正確に事実を伝えるというよりは、あとから脚色、演出されたドラマのようなものに近いとも言える。真実のドラマとは、本当はわかりにくく、あるいは複雑で、もっと奥行きのあるものなのかもしれないのだ。
ISDEを取材するプレス関係者も、まずは「エンデューロらしい」、難所での撮影に血道をあげる。
でも、ISDEというのは、特にハードエンデューロのようなものとは違って、実は、淡々とした外観の競技であって、そうそう、難所のようなものがあるわけではない。あったとしてもごく一部で、あまり渋滞しない程度のものだから、エルズベルグのような絵はまず撮れない。最近の読者はハードエンデューロを見慣れているので、そういう視点で刺激を与えるような絵が撮れない。そもそもそうしようというのが間違いなのである。なぜならISDEの本質がそこにないからだ。
小誌が提携し、写真と記事の提供を受けているENDURO21チームは、さすがにもうそんなことはしておらず、ISDEの本当のらしさを追求した絵作りがメインになっている。本当にISDEらしい絵とは何か、ということについては、今号に掲載された写真を見ていただければ充分にわかっていただけると思う。
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プレスルームでは、またもうひとつ必ず「今年のシックスデイズは簡単か、難しいか」という会話も交わされる。いわゆるルートの難易度やタイム設定のことを言う。ルートの難易度は、開催国の事情によって変わってくることがほとんどだ。例えば、かつての西ドイツやイギリスでは、ほとんどシングルトラックを走ることができず、タイムチェック間のルートは、ほぼ移動でスペシャルテストをつなぐためだけのようなものだった。これは両国が環境保護の先進国だったからで、今ではISDEそのものの開催が困難な国柄である。他方、旧東独、旧チェコスロバキア、また現在ではポルトガル。こうした国々では、環境保護の考え方がまた違っていて、ISDEも難コースでの開催になることが知られている。
ポルトガルでは、2019年にもISDEが開催され、日本のワールドトロフィチームも参加して、その過酷さが伝えられた。ポルトガルの大会は、確かに難しかったと思う。日本のクラブチームクラスのライダーにはリタイアも多かった。
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でも実は、ISDEの完走率というのは、毎回そう大きく変化していない。大変だった、と言われる年でも8割を切ることは少ないのである。完走するかしないか、というレベルの参加者が少ないということもあるが、そもそもそういう競技の作り方をしていないということもある。過酷な競技と言われることが多いが、それはフィニッシュに到達することの難しさを意味しているのではない。むしろメディアが好むわかりやすさとは正反対の、もっと個人の内面に根差した過酷さと言えるかもしれない。
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BIGTANKマガジンは、年6回、偶数月に発行されるエンデューロとラリーの専門誌(印刷されたもの)です。このnoteでは、新号から主要な記…
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