【小型特殊】3時間の準備で運転免許を取得した話


動機

 マイナンバーカード以外の身分証が欲しかった。お金と時間をかけずに取得する方法を探した結果、小型特殊免許にたどり着いた。

小型特殊免許(小特)とは

 トラクターなどの運転免許。とにかく、簡単に取得できるのが特徴。学科試験に合格するだけで取れる。費用も計3550円と割安(受験料+免許証交付料)。

 参考までに、取得が容易とされている原付免許の費用は計8050円(受験料+免許証交付料+講習料)。おまけに、実技講習が3時間ほど課される。

 原付と比べても分かる通り、小特は圧倒的に取得しやすいのだ。

試験当日のタイムテーブル

4時  起床・勉強開始
7時  家から出発
8時  会場に到着
10時  合格発表
10時半 免許証受け取り
12時  帰宅

受験体験記

起床~試験終了まで

 寝過ごした。「5時間勉強すれば大丈夫だろう」と舐めてかかっていたら、もう3時間しか猶予が無い。焦燥に駆られ、学習を開始。7時に家を出て、行きの電車で勉強しようとするも、満員すぎて何もできないまま過ごす。

 8時には試験会場に到着。原付や普通免許の受験者に混じって手続きを行う。具体的には、申請書類の記入→受験料の支払い→視力検査の流れだ。書類記入スペースと受験料支払い受付の間では、門番のオッサンが睨みを利かせていた。受験者はオッサンに書類をチェックされ、不備が無ければ支払いに進めるというシステムらしい。

 ところが、ほぼ全員がオッサンに書類の不備を指摘され、しょんぼりとうなだれながら記入スペースへと戻っていった。提出書類の数が多いため、朝方のぼんやり頭で完璧に埋めるのは至難の業なのだ。かく言う私も、「受験票の裏面、書いてないじゃん・・・・」と失望顔で言われ、心にダメージを負った。

 その後、なんとか検閲を突破して諸々の手続きを終えると、試験会場に通された。着席して待つこと暫し。定刻になると、試験監督の警察官たちがぞろぞろとやって来た。間もなくして、スマホが電源オフになっているかを一人ずつ確認されたのだが、なんとその識別方法は「画面のタッチ」。普通、スマホの画面はスリープモード時に触っても無反応なので、その方法では電源オフとスリープモードの区別がつかない気が・・・・これでいいのか警視庁。

 などと心配していたら、試験が始まった。一昔前は紙と鉛筆で問題を解いたらしいが、今は配布されたiPadに解答する方式だ。内容はというと、大部分は原付の参考書に載っていた事項が問われた。小特限定の問題も5問くらい出たが、いずれも原付の知識と常識で対処可能だった。

 最後まで自信が無かったのは1問のみ。赤色の点滅信号の意味を聞く基礎問題だったが、黄色と混ざってあやふやになっていた。でも、結果的には正解だったのでよし。

 他にも時間をかけて検討した問題が数問あったが、いずれも最終的には確信を持てた。見直しを2回行い、終了5分前に退出。合格発表の部屋に移動した。

そして、合格発表へ

 この時に気づいたのだが、小特の受験者は私一人だけだった。合格発表は原付の人たちと同室だったが、小特受験者は原付から離れた場所に着席するように言われた。そのため、誰が小特なのかが一目瞭然というわけだ。

 友達の居ない大学生のように、教室に一人ぽつんと座る私。今、「友達の居ない大学生のように」と比喩であるかのように書いたが、実際に私は「友達の居ない大学生」それ自体でもあるので、事態は複雑だ。そんな事情を知る由もない原付勢の視線が、私に刺さる。なんかすっごい見られてる。これで落ちたら超恥ずかしい。とてつもないプレッシャーだ。

 ほどなくして、職員が部屋にやってきた。唐突に数名の受験者に書類を渡した後、「書類を渡されなかった人は合格です」とキッパリ宣告。バッサリ合否を決められた受験者たち。あまりにアッサリした物言いに、「えっ・・・・今のが合格発表・・・・?」と虚をつかれた様子だった。

 誰もが困惑顔になる中、ひときわ大きな動揺を見せた受験者が一人。何を隠そう、私だ。職員の言う「合格」に、小特の自分も含まれているのかが分からず、非常に戸惑った。だって、原付勢の方を向いて言ったんだもん。こっちには見向きもしないんだもん。

 合格したのか分からず、所在なさげにオロオロする私。そこに、職員がツカツカと歩み寄り、書類を返却。「これが渡されたということは、不合格か・・・・」とガッカリしながら書類に目を落とすと、そこには「合格」の2文字が。

 えっ・・・・あれっ・・・・うおぉぉ! やったー!

 困惑→絶望→歓喜と、最近の日経平均株価のように揺れ動く気持ち。フッ、なかなか楽しませてくれるじゃないか(心臓バクバク)。

 気になるのは自分の得点だが、合格者には開示されないらしく、最後まで分からず仕舞いだった。だが、先述の唯一自信の無かった問題が合っていたということは、恐らく満点合格だろう。満点とは思えないくらい動揺させられたけど・・・・。

 合格後の手続き(交付手数料支払い・写真撮影)は、原付の合格者たちと一緒だった。手数料の窓口では、一人だけ区分が違うからか、「あれ・・・・小型特殊で大丈夫ですか・・・・?」と確認された。そのため、「はい・・・・私は特殊なんです・・・・」と、己が変人であるかのような申告を強いられる羽目に。

 一通りの手続きを終えたら、免許証の受け取りに向かった。このあと実技講習を受ける原付組とは、ここでお別れ。ちょっと寂しい。

 そして、受付で待つこと10分。免許証を貰い、帰宅の途につく。あまりにも順調に進んでしまい、拍子抜けした気分のまま、電車に揺られる。途中、バーガーキングに立ち寄ってワッパーチーズを食べた後、12時ごろに家に到着。早起きしたことに加え、ワッパーチーズで血糖値が上昇したため、直ちに就寝。生活リズムが、崩壊。


勉強法

 小型特殊の合格率は約6割なので、実は結構な人数が落ちている。ゆえに、勉強は必須だ。原付の対策をしておけば大丈夫だと聞いていたので、以下の書籍とアプリをつまみ食い的にやった。①書籍で概要を理解→②アプリで知識を確認という順番で学習した。

 以下補足だが、最初にアプリの一問一答をやっても断片的な知識しか身に着かず、応用力が伸びないだろう。それよりも、まずは書籍を通読して全体像を掴んだ方が良いと思う。不合格者の体験記に「原付の問題集では見たことが無い問題が出た」と書いてあったが、体系的に理解していれば、初見の問題もある程度は解けるはずである。「急がば回れ」だ。

『最速合格! 原付免許ルール総まとめ&問題集』

 所要時間は約1時間。概要を理解するために用いた。なので、前半のルール総まとめ(70頁程度)を一読しただけ。後半のテストは時間がかかるのでパス。問題を解く作業はアプリでやった方が効率的だろう。

「原付免許問題集」

 所要時間は約2時間。知識を定着させるためにやった。こちらは全部で1210問あるが、時間がなかったので解いたのは前半の250問(運転の基礎知識〜危険な状況での運転)だけ。もちろん、時間があれば全問を解くに越したことは無い。

 あと、間違えた問題はチェック機能で記録しておくと、復習が楽になるのでオススメ。私はこれをやっていなかったせいで十分に復習ができず、とても不安な気持ちで試験を迎える羽目になった・・・・。



その他注意事項

持ち物

 顔写真・身分証明書に加え、本籍が記載された住民票を持っていく必要がある。本籍が省略された住民票を提示し、係員に追い返された人を見たので、要注意だ。そのほかにも、持ち物には規定があるので、公式のホームページをしっかり確認しよう。

予約

 ここまで触れていなかったが、試験を受けるには予約が必須だ。時期によっては混んでいることもあるだろうから、予約だけは早めにしておいた方が良いかもしれない(と言いつつ、私は前日に予約した)。

終わりに

 自分の免許証を見た時、人は何を想起するのだろうか。普通免許の合宿は、一生モノの思い出になると言う。だから多くの人は、その合宿の記憶を思い出すのかもしれない。
 他方、小型特殊免許は半日で取得できてしまうので、そうはいかない。駅から試験場までの長い道のりも、自販機で買ったお茶の温度も、合格発表直前の不安も、一生モノの思い出というにはあまりにささやかな記憶だ。いつかは全部、忘れてしまうに違いない。
 だからせめて、文章化することで、今回の記憶を少しでも残そうと思った。今後も長く使うであろう免許証。何の思い出もない、ただの無機質なプラスチックにしてしまうのは、少々もったいないからね。


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