まさに砂岩のような強さだった。2022/5/21川崎フロンターレVSサガン鳥栖レビュー
2022年5月21日に行われた川崎フロンターレVSサガン鳥栖との1戦の私的レビューです。(フロンターレサポのためフロンターレ目線でしか書かないのでご了承を。)
サガン鳥栖ホーム駅前不動産スタジアムで行われた1戦。
去年1−3で敗れた雪辱を晴らせるか。
注目ポイント:総入れ替えの中盤
まず私が試合前に注目していたポイントについて。
この試合は前節から中二日での試合ということもあり疲労も考慮してか中盤から前線は家長を除いてメンバーを変えていた。
下の画像は今節のスタメン。
特に中盤は全員交代しており今節あまりスタメンでの出番がない選手たちだった。今季から移籍してきた瀬古にいたってはJリーグ初スタメン。
ACLでのスタメン出場は右サイドバックでの出場だったので本職の中盤でのスタメン起用は移籍後初めてとなる。
次に鬼木監督がこの中盤構成にした狙いを勝手に考察していきたい。
中盤のフィジカル勝負
下のデータは2022年5月21日時点でのチーム別走行距離ランキングだ。
サガン鳥栖は124キロでリーグトップ。一方川崎フロンターレは下から2番目の111キロ。
もちろんチームスタイルがあるので一概に走行距離が多いから良いとは言えないが、チーム平均13キロの差は選手1人分くらいの差となるので驚異的ではある。
走れるチームはプレスが強くなるので特に中盤はハードな戦いになることが予想された。
普段のスタメンの脇坂、遠野、橘田の3枚はフィジカルよりも技術的な構成の3枚のため今回は走りまけない、あたり負けないメンバーを求めたのだと思う。
特にシミッチ、瀬古にはそこへの期待があったのではないかと思う。
相手のプレスの無力化
この中盤のもう一つの狙いに相手のプレスの無力化があったのかと思う。
昔ほどではないにしろ、フロンターレはディフェンスから中盤へ細かく繋いでいくスタイルであまりロングボールは多用しない。
細かく繋ぐのはプレスをいなせればチャンスだが引っ掛けられてのカウンターの危険もある。
シミッチ、小塚はパスセンスに優れた選手でロングボールの精度も良い。ダイレクトパスやロングボール、サイドチェンジで相手にプレスをかけさせないことを期待したのかと思う。
瀬古(新戦力)への期待
3つ目の狙いとして今季Jリーグ初スタメンの瀬古への期待があったと思う。
今季加入した瀬古は、プロ3年目ながら去年は在籍した横浜FCで主将として戦っていた選手だ。技術フィジカル面ともに優れ馬力のある選手のイメージがあった。
今シーズンの補強選手で私的には一番期待していた選手でもあったが、ここまで中々試合に絡めずにいた。
今シーズンに加入している選手でレギュラーとして活躍している選手は大卒の佐々木旭のみで他の選手は中々ベンチにも入れない状態が続いていた。
そのため今年は正直なところ選手層に物足りなさを感じておりACLでも選手層の差で敗退したと個人的に感じていた。
現在Jリーグでは首位に位置するフロンターレであるがシーズンはこの先も長いため選手層の底上げが必須となっていた。
今季中々ベンチにも入れていなかった瀬古のスタメン起用は鬼木監督の期待もかなりあったのかと考察する。
ここからは前半と後半に分けて私なりの試合レビューです。
前半:噛み合わないところがあるがフィジカル面では負けていない
前半は初めての中盤の組み合わせというところもあり中々噛み合わないところも感じられた。
ただ、鬼木監督も選手たちもそれは織り込み済みなのかそこまで慌てている印象も無く、ピンチを招きつつも冷静に対処しているように見えた。
特に家長は試合のスタートからいつにも増して自由にポジションをとりチームの潤滑油の役割をしていたように感じ、この辺はさすがとしか言いようがなかった。
スタートは4−3−3のフォーメーションで両チームとも切り替えが早く、中盤はバチバチやり合っていた。この辺は互角にやり合っていたように見えたので狙い通りか。
攻撃も小塚、シミッチのロングパスやサイトチェンジが目立っていた。特に小塚は決定的なパスを常に狙っていて良かった。
鳥栖の特徴でもあるキーパーも加わったビルドアップにフロンターレのプレスがハマらずひっくり返されて何度かピンチを招くシーンがあった。
ただでさえ普段の相手よりキーパーが加わり一人多い相手のパス回しには慣れていないメンバーのプレスの練度では厳しいように見えた。
それを踏まえて前半25分あたりからフロンターレはフォーメーションを4-4-2へ変更。瀬古とシミッチのダブルボランチ、左サイドに小塚、右に家長という中盤の構成に変更。
無理に前線からプレスに行かずブロックを作って相手のパスに対応する守り方へ。4−3−3の際は瀬古があまり目立っていなかったがこの変更で徐々に存在感を出してきて、何度かカットからの前へのドリブルで持ち前の推進力を見せてきた。
ダブルボランチにすることでシミッチもより迷いなく動けるようになったのか守備範囲を広げて果敢にプレスをかけていた。
攻撃は機動力のある小林、知念の2トップに放り込む形が多くなり選手たちがフォーメーションに合わせて攻撃の仕方を変えていたのが印象的だった。
スコアは動かず前半は0−0で終了。
前半終了時点で両チームの走行距離トップ10の内7名が鳥栖の選手なのはさすがであった。
フロンターレからはシミッチ、瀬古、知念がトップ10入りしておりシミッチ、瀬古の運動量は狙い通りだったか。
後半は連携が良くなること、そして相手が疲れてきてから主力の投入で試合を決めていく形を期待。
後半:キャプテンの退場も見せた王者の底力
後半スタートから小塚に変えてマルシーニョを投入。
小塚も悪くはなかったがフォーメーション変更で左サイドでは良さを生かしきれないので仕方のない交代か。
後半は完全に相手キーパーのパクイルギュへのプレスは捨ててブロックを作っての守備を継続。
守備はある程度落ち着いたが逆に攻撃がうまくできず防戦一方の展開に。4−4−2だとマルシーニョが中々活きないのが悩みどころ。
60分、知念、家長に変えてダミアン、橘田を投入。
それによりフォーメーションを4−3−3へ変更。ただこの4−3−3は普段やっているアンカーをおく逆三角形の形ではなくダブルボランチの正三角形の4−3−3のように見えた。
シミッチの脇をやられるのを防ぐのと、瀬古の運動量で一人で前線広範囲のカバーをさせる狙いか。
やはり普段やっているメンバーが増えてくるとプレースピードが早くなりダイレクトパスも増えてくる。77分には小林に代えて遠野をイン。
徐々に良い流れになってきたかと思えたが好事魔多しとはこのことか。
78分、キャプテン谷口レッドカードによる一発退場。
テレビで見ている限りはレッドになる前にイエローでピンチを未然に防いだように見えたが、VARによりDOGSO判定での一発退場。
ルヴァン決勝戦を思い出させる光景。ちなみに何の因果か主審はルヴァン決勝と同じ荒木主審。
VARにより一発退場を告げられるキャプテン谷口。
私的には印象的だったのが判定に粘り強く抗議する谷口の姿。センターバックの退場はすぐに代わりの選手の投入が必要になるため、その時間稼ぎのためあえて覆らないと分かりつつ抗議していたのではないかと勝手に考察。
さすがミスターパーフェクト。
キャプテンの退場によりキャプテンマークはダミアンへ。
また、交代は瀬古アウト山村イン。
余談だが、私は現役時代センターバックをやっていたが私が山村の立場だったら絶対に入りたくない。笑
ミスターパーフェクト、絶対キャプテンの谷口の退場により10人になったところへの交代。考えるだけで吐きそうである。
10人になったフロンターレは残り10分凌ぐ展開に思えたが、85分遠野がパスカットからそのまま持ち込む。相手はたまらずペナルティエリア前でイエロー覚悟でファールで止める。
このプレーはかなり相手に危機感を与えたのではなかろうか。
その後のフリーキックはゴールに結びつかないもののそのまま試合終了まで10人のフロンターレが圧倒。
結局得点は両チーム奪えずスコアレスドローとなったが終盤の得点の期待感には王者の底力を感じた内容だった。
総括:鳥栖はサガン(砂岩)に恥じぬまとまりのあるチームだった。
試合の総括として、サガン鳥栖はよく走り、パス回しもうまく本当にまとまりのあるチームだと感じた。
サガン鳥栖は資金力の問題で去年のレギュラークラス10人が移籍をしている。資金力がないので補強もレンタルやJ2のチームなどからしている状況。
何ならパワハラ問題などで監督も代わっている。
それにもかかわらずチームは今季もその影響を感じさせないまとまりを持ったプレーをしていた。
個人の力は少し劣るのかフィニッシュの部分で物足りない部分はあるがそれを補うチーム力を感じた。まさに砂(粒)が集まって岩(チーム)となった砂岩のような強さだった。
一方フロンターレも中二日、アウェイ2連戦、途中から10人となった試合で苦手な相手に勝ち点を持ち帰れたことはプラスと見ていいだろう。
首位を争う、鹿島、マリノスも勝ち点3を積めなかったため首位キープとなった。
私的MVP:遠野大弥
最後に今回のMVPを選ばせてもらう。
今回の私的MVPは途中出場の遠野大弥。
谷口との交代を難なく乗り切った山村、初スタメンで奮闘した瀬古も捨てがたいが今回は以下の理由で遠野を選ばせてもらう。
今シーズンレギュラーを掴み取った遠野は中盤で出ることが多かったがこの試合は右ウイングでの途中出場。
相手の間に入りパスを受けてリズムを作り出し、10人になってからは中盤に位置を替えチームを支えた。
去年セルティックへ移籍した旗手を彷彿とさせるようなポリバレントなプレーヤーになりつつある。
特に85分の流れを代えたプレー。
私は右サイドのダミアンに出すと思っていたが自分で仕掛けフィニッシュへ持っていこうとした姿勢が素晴らしい。
このプレーが自チームに勇気を相手チームに脅威を与えたとても価値あるプレーだった。さらに決定的なプレーをできる選手へと成長することに期待したい限りだ。
次節は5/25(水)ホームで湘南との戦い。代表ウィーク前最後のJリーグ。
連戦が続きキャプテンタニグチの不在もあるがチーム一丸となり勝ち点3を掴み取ってほしい。
Forza!川崎フロンターレ!!
長文お読みいただきありがとうございます。
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