「ラウドネスノーマライゼーション/Dolby Atoms」の登場で過去最高音質の音楽鑑賞できている2023年
ラウドネスノーマライゼーションがSpotifyやYoutubeに浸透してきた2020年台、それに加えてDolby Atomsの音源を聴くが増えてきた2023年。
二つの新技術によって過去最高の音質で音楽鑑賞をできる環境になりました。
今回は、なぜラウドネスノーマライゼーションとDolby Atomsの登場で音質が良くなったのか?詳しく解説していきたいと思います。
専門用語のように感じるかもしれませんが、みなさんの音楽を聴いてるスマートフォンやyoutubeなどに搭載されている機能ですので、ONにすると音楽体験が豊かになること間違い無しなので注目いただけましたら幸いです。
1.ラウドネスノーマライゼーション
ラウドネスノーマラーゼーションとはyoutubeやspotifyなどのプラットフォームが再生音量に対する規格を定め、それぞれの楽曲を再生するときに音量を一定に整えてくれる機能です。
こう書くと大したことない印象ですが、自分にとっては大事件でした。
何が大事件なのかというとラウドネスノーマライゼーションが無い時代はルールの無い時代…Loudness warという怖い言葉が産まれたほどの無法地帯。
楽曲の音量が各エンジニアのモラルに任されており、他の曲より目立つように!迫力がでるように!とチート/ハック的な方法で音量を巡る競争がなされていました。
「たかが音量じゃ無いか!何が問題なんだ!?」そう思われるかもしれませんが、音量を稼ぐために低音を削る、アタックを潰す、多少音が割れて良いから音を大きくするという恐ろしい手段が取られていました。
良心のある音楽制作者でもクライアントから「〇〇〇〇と同じような音量の大きさにしてくれ!」「割れても良いよ!〇〇〇〇より音小さいじゃ無いか!」と詰められ音圧競争から逃れられませんでした。
どんな音かというと下記の図のように、
・左の緑が潰れていない音源
・右の赤が潰れてギチギチになった音源
緑の方は音のアタック、ダイナミクスがある状態で、赤の方は立ち上がりを潰し、歪ませて音が満ち満ちに詰まっています。
簡単にざっくりと言ってしまうと、ラウドネスノーマライゼーションが制定されてからは緑の音源で提出しても良くなったということです。
下記、音が良い状態で聴けるようになった点
・音の立ち上がり、楽器のキャラクターを決めるアタックが残された音源
・元々存在していた低音を聴くことができる
・小さい音をそのままにするので、響きや残響を感じられる
・デジタルの歪みや高音圧の圧迫感で耳を痛めることが軽減される
他にもありますが、とにかく音に余裕が生まれ、
音楽制作者にとっては表現の幅が広がりました。
今までは低音を削らなきゃいけなかったので、HIPHOP等のジャンルでは魅力の一部であった低域の部分を無くしたりしてましたが、ラウドネスノーマライゼーションが制定されてからは「ほぼ低音だけのTRAP」に発展したり「篭ってるし囁き声って普通聞こえなくない?っていうビリーアイリッシュ」など低音が増えたアドバンテージを活かす音楽が増えてきました。
ラウドネス準拠は音楽表現を変えた
ラウドネス準拠は新たな音楽ジャンルを産み出した
とも言えます。
低音から高音まで自由に使える
小さい音も大きい音も表現できる
響きのディティールや部屋の鳴りを感じられる
マジで最高です!!!!!!!
ラウドネスノーマライゼーションについては一旦説明が終わりますが、Dolby Atomsに進む前に、ラウドネスノーマライゼーションの制定と共に進化した機材における恩恵についても書かなければいけません….
2.音楽機材の進化
音楽機材の進化は凄まじく、アナログからデジタルに完全移行してからのイノベーションが非線形で、プログラム言語による進化?AIによる進化なのか?音楽プラグインのクオリティーはアナログをエミュレーションするだけに留まらず凌駕するような機能もリリースされ続けています。
ここでは細かい部分を割愛しますが「EQなどで各楽器をシェイプして、それぞれの聴きやすい所を強調して、ひとつの箱に収める」必要性が減ったように感じます。
以前であれば、EQなどでギターの低域を減らしたり、ドラムの中域を強調したり、ボーカルの高域をブーストしたり「そのまま鳴っている楽器の一部を削る」作業をしていましたが、今は全体の音域が広がったのである程度キャラクターを残したまま共存も可能になりました。
加えてEQで音を悪くする、位相を悪くするよりは、アレンジの段階で楽器を減らしたり、パンなどの定位などで楽器を被らせない楽曲が増えた印象です。
後述しますが、このパンや定位の話がDolby Atomsの項ではスピーカー10個から出力できるようになるので益々楽器の音を削り、音を悪くする必要がなくなります。
また音楽プラグインの進化で「EQによる音の劣化を抑えてくれる機材」がリリースされたり「EQによるブーストではなく、歪みやエンハンスを足して原音キャラクターを変えず存在感を増す機材」「周波数を変化させると発生する音痩せや劣化を自動で回避してくれる機材」が産み出されてきたので音の悪い音源も少なくなりつつあります※プロフェッショナルの世界に限る
ここで昨日リリースされたBIGHEADの新曲をお聞きください!
・ボーカル
・ギター左右
・ベース
・キック
・スネア
・ハイハット
・ライド
・シンバル
・初音ミクのリバーブ成分、ドラムのアンビエンス
各音のキャラクターを削ることなく聞こえる状態にできました
キックの低域も、ベースのボディも、ギターの中低域も、ドラムの空気感も
削ることなく共存しています。
ギターがシャーシャーいったり、スネアが聞こえ辛いとか、キックがアタックペチペチいってるとか、ベースがいないとか、そういう音源は回避できたと思います
Machine Gun Kellyの音源はバンドサウンドなのに音の分離に加えてコンプ感や迫力があってかつクリアなので、合わせて聴いてみてください!
※今回はマシンガンケリーに近づけ付けようとコンプでGlue感を出したり、迫力のあるサウンドにしようと調整しましたができなかったのでBUSコンプはパスしました。次回の課題です。
この筆者の音源を聴いて「音悪っ!」「バランス悪!」と思った方すみません!この記事は閉じてください。
※言ってることは偉そうなんだけど、作ってる音聞いたら悪くてセミナー帰ったと言う経験あるので
3.音楽再生機器の進化
このようにラウドネスノーマライゼーション基準値に配慮した工程で自宅スタジオで作った音源も、他の再生機器で過不足なく聞こえるようにAirPods Proなどでチェックしたり、違うスピーカーで再生させたりしていますが、大きな会場で鳴らすとどうなのか?
この問題というか心配は尽きることがありません。
結果から言いますが、めちゃめちゃ良いです。
自分はDJする時に自分の部屋でミックスした音源をサウンドチェックで流して、客席に行って確認しています。ドイツDokomiで掛けた時、オースティンikkikonのドデカい会場で流した時は感動しました。
悪い音だったらどうしよう…という心配は常に尽きないのですが。自分の技術のダメな所をチェックしていくので辛い作業ですが、大きな会場と自宅スピーカーの誤差を耳と体で合わせていきます。
近年、PA機材・音楽再生機器の進化も凄まじいと感じていて、色々な会場に行って音源を聴く機会があるのですが低域から高域まで綺麗に繋がりフラットに再生されていて驚いています。
パワー・アンプに余裕が生まれたのか、ラインアレーの性能が上がったのか、PAさんの測定器や技術の向上で平均値を出せるようになったのか?とにかくどこの会場行っても家のスピーカーから出てる音がそのままいい感じで大きくなった印象です。
とくに難波ハッチで自分の曲を掛けた時は
家と同じやん!!
難波ハッチの音の良さに興奮しました。
そこで初めて家で作った音と大きな会場での音が繋がり、ある程度一致したので制作に迷いなく挑める指針になりました。
もちろん完璧では無いですが
・ベースが聞こえない
・キックのボディが見えない
・スネアにパンチが無い
・コード系が聞こえなくなる
・ハイハットがシャカシャカしている
・リバーブが無くて高揚感が皆無
という音源では無かったので安心しました。
とくに耳が痛くなる、音圧が凄くてプレッシャーを体で感じる音源になると大きくできないので、良かったなあと胸を撫で下ろした記憶
いきなり自分の音源の話になってしまいましたが
ラウドネスノーマライゼーション準拠の音を流すと大きな会場でも良いんだ!ということです。
DJする時に自分以外のアーティストの音圧の高めの
リミッターがかかってる音源もプレイしてチェックするのですが「つまった感じ」の印象の音源もあって…
家のスピーカーやイヤホンでは気にならない歪みやアタックの割れでも、大音量で鳴らすと破壊的なデジタルノイズになっている可能性があります
大きな音で聴くと責められている、怒られているような印象といいますか
あと、これは自分も気をつけないとヤベーなと思ったのが超高域がシャーシャーずっと鳴ってる音源です。
シンセの高い部分なのか、ハイハットなのか、ボーカルのディレイなのか?またはエイリアスノイズなのか?
こういった超高域が長いリリースで流れている音源を大きな音で聴き続けると不快感や、耳にダメージを与えてしまう可能性があるので、丁寧なディエッシングや、高い音はなだらかにする等必要だと思いました。
※スピーカの能率が向上して超高域も出力できるようになったかもしれない
ライブの良さって大きなスピーカーかつ余裕をもったシステムから、楽器の音をCDのように潰さずダイナミクスのある残響も含めた音像を体感し感動することだと思います。
なのでDJメインで活動してる方も、生演奏では無くインスト音源を流して声を重ねているアーティストの方もラウドネスノーマライゼーション準拠の音源でライブすることをお勧めいたします!
4.Dolby Atoms
そして最後のDolby Atmos!!!!
これは途中の話に興奮して長くなってしまったので次回に!
申し訳ありませんが、Dolby Atoms凄いので近日に公開します。
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