ヴィブラフォンが活躍するビッグバンド6選!!あの独特の金属と伸びのある音が入るだけで途端にオシャレになる不思議な魅力をもった楽器
はい、ビッグバンドファンです。今日はちょっと渋めな楽器「ヴィブラフォン」に注目して、ヴィブラフォンが特徴的なビッグバンドについてまとめてみました。
不思議な魅力の楽器、ヴィブラフォン
楽器そのものに関してはwikiにも詳しく解説されていますが、由来は残響や共振(ヴァイブレーション)に起因すると言われているそうです。
音の余韻をコントロールするダンパーペダルによってロングトーンを演奏する事が可能で、マリンバや木琴と大きく異なる機能である。ヴィブラフォンがVibraphoneと呼ばれるのは、このロングトーンによる残響・共振(ヴァイブレーション)に起因するとも言われている。
そうなんですよねぇ。あの金属の打音から「ほわわ〜〜ん」というえもいわれぬ残響音がたまらないんですよねぇ。あれはピアノやキーボードでも出せない、まさにヴィブラフォン独特の魅力と言えます。楽器としては1921年頃にアメリカの楽器メーカー、ディーガン社が開発した楽器がヴィブラフォンの誕生とされているようで、丁度今年で100年という比較的若い楽器になります。で、このヴィブラフォンを最初にメジャーシーンで活用し始めたのがLionel Hamptonとなります。
Lionel Hampton
Lionel Hamptonはキャリアの最初こそドラマーでスタートしたものの、1930年にルイ・アームストロングのレコーディングに参加した際、スタジオに置いてあったヴィブラフォンを叩くように言われたのをキッカケに始めたそうです。その後、1936年にベニー・グッドマン楽団にヴィブラフォン奏者として参加したことから一気に知名度を上げたそうで、こんな共演映像がYouTubeに上がっていました。1948年「A Song Is Born」という映画での共演映像になります。
この前年、1947年にはスウィング・ジャズの傑作とも言われるLionel Hampton All Starsで「Stardust」が演奏されます。
そして自身のビッグバンドも率い、数々の舞台でパフォーマンスを見せてこられました。
なんていうか、聞いていて本当に癒されます。アップテンポのスウィング演奏でもガチャガチャすることが決してないし、Stardustのようなスローな曲においてもヴィブラフォンが入るだけでオシャレ感がグッと増す。またサウンドにおいても変な古臭さが無く、レトロさがとてもお洒落に感じられる、ヴィブラフォンの不思議な魅力を存分に堪能出来ますね。
Milt Jackson
そしてこのLionel Hamptonに影響を受け、更にヴィブラフォンの知名度を上げていったのがMilt Jacksonになります。Milt Jacksonと言えば何と言ってもMJQ、モダン・ジャズ・カルテットになります。
Milt JacksonはLionel Hamptonの影響を受けつつもよりビブラートを多用しよりオシャレ感を増しています。マレットのヘッドも大きめのものを使っており、このスタイルと音色がジャズにおけるヴィブラフォンのスタンダードのような位置づけとなりました。Lionel Hamptonと違い自身のビッグバンドを率いることはなかったようですが、ゲストで呼ばれて演奏しているものはいくつかあります。
Count Basie楽団と共演したアルバムもあります。
Lionel Hamptonと比べてもよりオシャレ感が増しているのがビッグバンドの演奏でも感じられます。
Gary Burton
Lionel Hampton、Milt Jacksonに続いて、より現代的なサウンドの中で存在感を示したのがGary Burtonになります。幼い頃からピアノを始め、6歳からマリンバやヴィブラフォンを叩き、13歳の時にジャズに開眼、インディアナ大学で開かれたスタン・ケントンのサマーバンド・キャンプに参加した事が切っ掛けとなりジャズミュージシャンの道を歩み始め、存命中に7回のグラミー賞を受賞したというまさに俊英でございます。また「バートン・グリップ」と呼ばれる4本のマレットを使った持ち方を確立したことでも知られており、Milt Jacksonがジャズにおけるヴィブラフォンのスタンダードを築いたとすれば、Gary Burtonはそれを更に発展させ、ヴィブラフォンという楽器そのものの存在感を高め、コード楽器としてピアノと比べても遜色なく同じレベルで演奏(独奏)出来る事を立証した方と言えます。
1969年に設立したECMに1972年移籍した後、チックコリアとのDuoで発表されたCrystal Silenceの演奏は衝撃的なものとなりました。
このアルバムをキッカケにまさにECMを代表するアーティストとして活躍、パット・メセニーやタイガー大越、小曽根真といった当時は新人だったアーティストと数多く共演してきました。
そんなGary Burton氏、ビッグバンドでも存在感抜群です。
Carla Bleyの「Syndrome」をJim Mcneely氏のアレンジ・指揮の下、hr bigband - Frankfurt Radio Big BandがGary Burton氏をゲストに迎えて演奏する、という情報量多すぎなライブに演奏始まる前から笑ってしまいそうですが、もちろん演奏も期待通り。もう一つ、ドイツを代表するビッグバンドコンポーザー・Peter Herbolzheimer氏の代表的音楽企画「Jazz Gala」、ここにもゲストでGary Burton氏が呼ばれています。77年です。
この時代の録音に特有のシャリシャリ感ある音にヴィブラフォンの自然な揺らぎある音がとても新鮮に響いてきます。
Terry Gibbs
さて、ここまでの中で紹介していないレジェンドがいます。それがこのTerry Gibbsさんです。1924年10月生まれ、現在96歳でまだご存命というレジェンドです。1950年代にスティーブアレンショーを始めとしたテレビ番組の人気ゲストとして活躍、その後1959年に結成1961年まで活動した「Dream Band」、これがその名に恥じないスタープレイヤー揃いのビッグバンドを結成しました。 テナーサックスにアレンジャーを兼ねてBill Holman、トランペットにはConte Candoli、他にもMarty PaichやAl Cohnといった名前も加わり計4枚のアルバムをリリースしました。
アレンジの妙が実に楽しめるバンドです。例えばエリントンナンバーのCottontailもこんな感じ
Opus Oneもこんな感じ
ヴィブラフォン&ビッグバンドをこれほど前面に押し出してテレビ画面の中で演奏したのは多分この人が一番ではないかと思います。譜面も結構沢山出ています。
Dave Holland
Dave Hollandさんはベーシストですが、彼が率いるビッグバンドでヴィブラフォンが大活躍しています。
アルバムでもきっちり入ってきます。
Dave HollandはGary Burton同様ECMを代表するアーティストですので、ビッグバンドを結成するに辺りGary Burtonの影響を相当受けたと思ってます。というのも、1998年にピアノがChick Corea、ギターがPat Metheny、ドラムがRoy Haynes、ベースがDave Holland、そしてヴィブラフォンにGary Burtonというクレジットだけ見ても鼻血モノのアルバム「Like Mind」をリリースしていて、1999年に見事BEST JAZZ INSTRUMENTAL PERFORMANCE部門でグラミー賞を受賞しています。
Pat Methenyが4曲、Chick Coreaが3曲、Gary Burtonが2曲、ガーシュウィンが1曲、というまぁどっから切り取ってもスゲェとしか言いようがないアルバムなのですが、Dave Hollandがビッグバンドを率いるようになったのは2000年代入ってからで、このアルバムのリリース後です。なので、この辺の影響は間違いなく受けていると思っているのですが、どうでしょうかね?
香取良彦
さて、最後はこの方で行きたいと思います。上で紹介したように、楽器自体が1910年代に開発され、その後Lionel HamptonやMilt Jackson、そしてGary Burtonといったジャズのプレイヤーを中心に開拓されてきたヴィブラフォン、日本でもそうした流れの中でヴィブラフォンによるジャズ演奏を行うプレイヤーは出てきました。その中でもビッグバンドとの絡みの中で最も秀逸且つ現在のビッグバンドシーンにも多大な影響を与えている方がこの香取良彦さんといえると思います。1997年に自身でビッグバンドを率いてリリースしたアルバム「Riverside Music Garden」は今なお斬新さと革新性、音楽性の高さが評価されるアルバムになります。
複数の音楽大学で教鞭をとるなど、音楽教育にも積極的に携われており、特にビッグバンドの分野では洗足学園音楽大学Get Jazz Orchestraを指導。このビッグバンドは、米国Downbeat誌の第36回Annual Student Music AwardsにおいてLarge Jazz Ensemble, Undergraduate College部門で"Outstanding Performances"賞を受賞するなど実力派の学生バンドとして日本だけでなく海外にまでその名を轟かせる程になっています。以下はいずれも2014年6月に行われた「DO JAZZ! SENZOKU 2014 〜 How Big Band!? 〜」の模様ですが、どちらも香取良彦さんのオリジナル楽曲を演奏しているものになります。
普通に聞いてしまいますね、すげぇわ。
というわけで、いかがでしたでしょうか?ちょっと今日は渋い楽器「ヴィブラフォン」を切り口にビッグバンドとの絡みを見ていきました。以上、ビッグバンドファンでした~、ばいばい~