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リアルなアメリカの高校生と”現代の社会問題”が密接だった
サンフランシスコで学力1位の公立高校のリアル高校生ドキュメンタリー番組を観ていたら、高校生は現代が抱えている様々な社会問題と密接に関わっていることが分かりました。
そのリアル高校生のドキュメンタリー番組とは、NHK番組『もっと頑張れる!アメリカハイスクールのリアル』です。
高校の名前はサンフランシスコのローウェル高校、教育に熱心なアジア系アメリカ人が多く通っているのが特徴的です。
番組に出てくる生徒、保護者、先生たち、みんな普通の方々ですが、みんな熱心で優しい方々ばかりでした。しかし、よく見ると、そこには”現代の社会問題”が密接に関わっており、そのことで生徒たちは悩みながら、将来を切り拓いていこうとする姿が良く描かれていて、とっても素晴らしい番組でした。
高校生と密接に関わっていた”現代の社会問題”とは
この番組は2年前の2021年に制作された番組でしたが、生徒たちが直面している”社会問題”は、いままさにリアルタイムに国際ニュースでも取り扱われている問題ばかりで、子供たちが問題に悩みながらも成長していく姿にとっても共感しました。
みんなホントに良い子たちばかりだったから、もう番組観ながら彼らを応援するほどでした。
さて、そんな子たちが直面していた”現代の社会問題”を下記にまとめました。
●親からのプレッシャーあふれる言葉掛けによるリスク
●アジア系マイノリティに押し付けられている模範的マイノリティー
●アファーマティブアクション
●ドラッグ問題
●Z世代らしい価値観
親からの”言葉のリスク”
先日放送されたNHK番組『クローズアップ現代』で、「その「一言」が将来を変える!?最新研究、”言葉のリスク”」という番組を観ました。
番組内で紹介された”言葉のリスク”とは・・・
しつけや教育のつもりで口にする言葉。実は、使い方を誤ると脳の発達など、子どもの将来に大きな影響を与えるおそれがあることが、最新研究から浮かび上がってきた。
米・ハーバード大学が研究する言葉の暴力によって低下する“脳の機能”が判明した。
問題行動への影響について不適切な言動は身体的な暴力・ネグレクトなどと同じぐらい集中できない・いじめをするなどの問題行動を増やす傾向が見られた。
不適切な言動を受けた子どもたちは他人を思いやる頻度が低下するという。
言葉の暴力の影響を最も受けるのは16~18歳となっている。
アメリカのリアル高校生でもまさに”言葉のリスク”を心配するケースもありました。
アルヴァン:アジア系男子
成績なんかで人は測れないと思っている子。
大好きな先生が病気になって心から悲しむ優しい子、しかも闘病中の先生の見舞いに行く子。
さらに父が高校卒業していないことを願書にも書かないと決めている。願書にそのことを書くと選考に有利になる可能性がある中で書かない理由はとは・・・「父のことを見下されたくないんだ」と。なんて優しすぎる子なんだ!
でもアルヴァンの母は、台湾で猛勉強した人だから成績をすごく重要視している。
進路に口出す過保護な親に困惑しているアルヴァン。
アルヴァンは家族のプレッシャーがここまでひどくなかったら、家の中でダラダラとゲームなり、ども立ちとぶらぶらしていたと思う。もちろんプレッシャーは悪くない、でも・・・かけすぎは、やめて欲しい、と本音を言っていました。
お母さんは「息子はティーンエージャーにしては親のアドバイスをよく聞いてくれる。ときには不満もあったことでしょうが、私たちの意見に従おうと努力してくれている。」と言っているが、内面、アルヴァンは反抗しています。
「母はバークレー校を推している。近いから、会いに行けるし。でも僕はLAに行きたい。東海岸のエリート校は行きたくない。でも、そんなこと母には言えていない」
「両親がしてくれたことは立派、心から感謝している。でも僕をもう子供扱いにしないで欲しい。」
アジア系マイノリティに押し付けられている模範的マイノリティー
アジア系コミュニティー全体に【模範的マイノリティー】の基準が押し付けられていることが現在、社会問題ともなっています。
【模範的マイノリティー】とは
肯定的な意味合いと否定的な意味合いの両方を持つ言葉。
「努力家で教育熱心」⇒肯定的な意味合い
「従順で自分の意見を言わない」⇒否定的な意味合い
アジア系コミュニティ全体に【模範的マイノリティー】の基準が押し付けられることに違和感を覚える高校生は多いようです。なにしろ周りからの期待が強すぎるから。
そんな【模範的マイノリティー】に悩む子も番組には出てきました。
ソフィア:中国系女性
テニス部キャプテン、子供支援団体の共同代表、女子プログラミング部の副会長、学校新聞の編集者、アルバイトもしている、忙しいのが好き。全ての活動は良い大学はいるために行っている。両親は中国本土の出身。
スタンフォード大学にローウェル高校から入れない理由は、ステレオタイプのアジア人だと思われているから、そんなアジア人への色眼鏡に悩む高校生でした。
アファーマティブアクション
アファーマティブアクション(積極的差別是正措置)
人種差別を是正する指針とされ、1960年代から続いてきた大学の入学選考におけるアファーマティブ・アクション。
アメリカの大学が入学選考を行う上で黒人などの人種を考慮している措置の是非をめぐる裁判で、先月、連邦最高裁判所にて措置は法の下の平等を定めた憲法に違反するという判断を示したことで、アメリカでは、人種の考慮をめぐって議論が高まっている。
大学側は「人種は選考する際の1つの要素にすぎず、措置がなくなれば黒人やヒスパニック系の学生が大幅に減り、多様性が損なわれる」などと反論していましたが、専門家は、今回の判断を受け、措置を取る側が萎縮し、配慮がされなくなるなどと指摘しています。
そんなアファーマティブアクションを有効に使おうという母親の意見に、葛藤しながらアファーマティブアクションに揺れ動くリアル高校生もいました。
レイチェル:黒人系女性
願書に黒人と書きなさいと母から言われた。
それで有利になるなら自分の強みとして利用することだと考えている。でも胸を張って言えることではないとも考えている。
大学進学で母を喜ばせたいけど、プレッシャーに押しつぶされそうな気になっている。
しかも「君がUCLAに合格したのは黒人だからだ」と友達にあからさまに言われたようです。
「ローウェル高校に通っていると黒人は有利だと固定観念があることを思い知らされる」
「黒人の血が流れていることを自分から明かさなかったくらいだから」
「ここに来るまで一生懸命勉強してきて十分な成績をとってきた。ただ、私と同じくらい合格の可能性があったアジア系の子たちが不合格になっている現実には納得できない。」と、彼女は語るのです。
ドラッグ問題
いまもなお、アメリカに根強い問題となっているドラッグ問題。
このドラッグ問題に揺れ動きながら、自分の進む道を悩みながら考えている純粋な気持ちに、本当に心打たれました。
シーレン:男子
午前3時まで勉強している。将来は、代替エネルギー分野で活躍したいと思っている。
そんななか、家を追い出されることになります。「大家さんにとって許せないことを父がしたから。」そう、お父さんがドラッグ問題を起こしたとのこと。
母のところに行けばいいのだが、サンフランシスコにいないとローウェル高校には通えないから、父の世話が大変でもここに残るしかないという悩みを抱えながら、必死に勉強。
Z世代らしい価値観
最後は、社会問題ではなく、社会を背景にして形成されたZ世代らしい価値観についてです。
どんな価値観か、ご紹介させていただきます。
イアン:アジア系男子
両親はローウェル高校卒業生ですので、教育熱心な保護者かと思いましたが・・・
イアンのお母さんは、楽しくてやる気のでることだったらなんでも子供にやらせたい、親たちには子供の創造性を伸ばすべきだと考えている。子供はテストの結果では測れないと考えている。
イアンは、「この学校の子たちは行く大学によって自分の価値が決まると思っている。だから志望校に落ちると絶望する。自らが望んだ形で自分の価値を定義できない。」と考えています。
そんなイアンは見事にオクスフォード大学に4年間の全額給付で合格しました。
最高に幸せ状態にいるイアンはこう言います、「教育ママがいなくても大学に受かったのはいいね、母が自由にやらせてくれたのは本当に幸運だった。」
イアンのお母さんも「中国式のスパルタで苦しむこともなく高校生活を終えたことが良かった。しかも大学の学費の借金も無し。」
それと、上記ドラッグ問題を抱えていたシーレンですが、
もともとはこんな価値観で勉強していました。
「TOP20校に行かないと意義あることができないと考えている。」
しかし、彼は価値観を徐々に変えていきます。そしてこのような価値観へと変わりました。
「視野が広がるにつれてTOP20校に入る必要が無いと考えるようになった。自分がやりたいことをやる、それが重要で、どんな大学でもできると思う。大学生活を自分のものにすればよい、有意義にするのは自分次第だと思う、だから僕の視野はずいぶん変わったと思う。」
そんなシーレン、番組で取材された子で唯一のスタンフォード大学に合格したのです。
そのときの彼の言葉がとっても印象的でした。
大学合格通知を受けて大興奮のシーレン
「誰に知らせる?まず誰だ?」
きっと、ドラッグ問題を抱えるお父さんに最初に連絡したのではと私は勝手に妄想しました。