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アート思考でカブトムシの違法取引を見つめる~普遍的なもの
前回のボソッとでNHK番組『NHKアカデミア』で片岡真実さんは“普遍的なもの”というのは何かということをアート思考によって追求していく大切を教えてくれました。
そこで、今回は“普遍的なもの”というのは何か?というアート思考によって、国際ニュースで話題になったある問題を見つめていきたいと思います。
「子どもでもわかる・共感できるもの」といった普遍的なものを見つめることを大切にしたいと思います。
”カッコイイ”と人気が高いカブトムシ
私が大好きなNHK番組『ドキュメント72時間』で先日、「真夏の昆虫専門店で」という回で、都内にある老舗の昆虫専門店に訪れれる昆虫が大好き方々のお話を聞くというドキュメンタリー番組を観ました。
「人はなぜ昆虫に魅せられるのか?」
特に、カブトムシやクワガタムシを求めて、子供や愛好家がたくさん来店されていた様子が映っていました。私も昆虫が大好きで、子供時代にはカブトムシやクワガタムシを求めて森に出かけて採集していたことが懐かしくたまりません。
ところが、『ドキュメント72時間』でも紹介された通り、いまは昆虫の採集自体が難しくなったと愛好家の方がおっしゃっており、カブトムシやクワガタムシはショップで買うものとなったことというお話はとっても印象的でした。そもそも、日本では採集できない昆虫、特に外国産のものはショップでしか買えませんからね。
そんな昆虫を求めに来る子供たちや愛好家が口を揃えて言うのは・・・
「すごくかっこいい」
そんな「カッコいい」と言われるほど人を魅了する昆虫においてある問題が起きています。特に外国産のカブトムシの輸入に関して、いま日本が世界から非難されている現状を国際ニュースで知ることができました。
実は日本はカブトムシを違法取引する国だった・・・
『ドキュメント72時間』でも登場していた外国産のカブトムシの多くは中南米原産が人気が高く、日本では中南米原産は高額な取引がされるほど、人気が高まっています。
しかし、原産国の間では野生生物を保護するために法律などで輸出を制限している国も多く、日本でも人気が高い中南米産のカブトムシも同様に法律で輸出は禁止されています。ところが、世界各国でカブトムシの違法取引が発覚されており、日本はその当事国となっている現状をレポートした国際ニュースを今回ご紹介しましょう。
“密輸” なくせるか 昆虫業界の模索も
南米ボリビアではカブトムシの商業輸出は禁止されています。
ボリビアの昆虫学者は日本人に売るためにカブトムシが乱獲されており、ボリビアの生態系を破壊していると危機感を持っている。
ボリビアの昆虫学者
「ボリビアの固有種であるカブトムシは絶滅危惧種に指定されたものもある。明らかに要因のひとつはカブトムシの違法売買だ。」
「われわれボリビア人はこの虫が自然界から消滅してしまうことを望んでいない。」
一方、南米コロンビアでは野生ではなく飼育・繁殖されたカブトムシなら政府の許可を得て輸出が認められている国のひとつです。
そんなコロンビアにある民間販売会社は年間約100匹のカブトムシを合法的に日本に輸出しています。
ところが最近頭を悩ませているのは、法律で禁止されている”野生のカブトムシを捕獲して日本に送って欲しい”という一部の日本業者からの声だといいます。
コロンビアのカブトムシの販売会社の社長
「日本の顧客は私たちの理念を理解せず野生のカブトムシを要求してきた。野生生物の違法取引は生態系を破壊するだけだ。」
なぜ日本は密輸を繰り返すのか?
国際ニュースではこのような見解を示しました。
実は日本の業者が野生にこだわるのは、”日本ならではの事情”があるようです。
過去に輸入したカブトムシを繰り返し繁殖させると兄弟や家族同士の交配が増え、徐々に奇形や死にやすい個体が生まれてしまいます。
野生の個体、いわゆる”ワイルド個体”を日本が輸入して交配させたいという需要が日本で生まれます。ワイルド個体はコロンビアを始め多くの国で輸出が禁止されているのにも関わらず、違法な取引が絶えないという背景があるのです。
ニュース番組のキャスターさんもおっしゃっていましたが、「違法と分かっているのに密輸しようとしている行為は悪質」ですよね。でも、その一方、「カブトムシを購入する際に、私たちはこのカブトムシはどういう経路で販売されているのかを知ることは非常に難しい。」ともおっしゃっていました。
国際社会から批判される日本
実は日本は様々な生物の違法取引に関わることで、現地の生態系を壊している当事国とされており、国際的に批判されている国のひとつなのです。
カブトムシなどの昆虫や爬虫類などをエキゾチックペットを監視している国際NGO「TRAFFIC」の報告書(2020年)によると、「日本は長年エキゾチックペットの消費大国のひとつであり、日本での需要は国際的取引の推進力になってしまっている。」と、日本政府に対策強化を訴えている。
![](https://assets.st-note.com/img/1695108445288-qi616K7sOe.jpg?width=1200)
日本はどのように対策をとるべきなのか?
ニュース番組では日本の専門家はこのようにおっしゃっていました。
仙台市内の専門学校では、おととし、カブトムシを育てる職業・インセクトブリーダーの専門課程が開設された。
違法取引に加担しないように育成をする。
違法輸入のカブトムシを扱わないように徹底している。
インセクトブリーダーを育成する専門学校の講師
「情報収集して正規の業者であるという声が多いところとお付き合いする。業界を健全化させていくことが業界発展のために大切だ。」
NHK番組『国際報道2023』「“密輸” なくせるか 昆虫業界の模索も」(2023/7/20放送分より)
九州大学大学院の教授は、業界として努力しつつ行政としても取り締まりを強化することが必要だと指摘しています。
九州大学大学院の教授
「国際問題になりかねない、日本都市は恥ずかしい話。昆虫を輸入して販売している業者に自主的な対応を図る組織を作っていただくといった行政による指導のようなものも必要ではないか。両生類や爬虫類ではすでに免許制度がある、そういう動きを虫でも出てきて欲しい」
アート思考でカブトムシの違法取引を見つめる
専門家の方々はカブトムシの違法取引を無くすためには「専門家の育成」「規制強化」といったことを指摘されておりましたが、子供たちや愛好家の価値観が変わらない限り、この問題は解決できないのではと思っております。
そこで、カブトムシの違法取引についてアート思考しながらこの問題を見つめていきたいと思います。
冒頭で述べました通り、この問題をアート思考する際に大事にしたいポイントとして「子どもでもわかる・共感できるもの」といった”普遍的なもの”を見つけることです。
まずはカブトムシに対して多様な価値観が存在していることを踏まえ、カブトムシ問題の”普遍的なもの”をみつけていたきたいと思います。
日本の価値観
なぜこの問題が解決できないか?それは多様な価値観を持った人々がいるからだと私は思っております。
日本ではなぜ子供や愛好家にカブトムシは好かれるのか?
それは、「カッコイイ」からですよね。
そんな”カッコイイ”カブトムシの姿をいつまでもみたい、”カッコイイ”カブトムシは長く生きて欲しい、といった日本人がカブトムシに求める価値観を踏まえながら業者が需要に対応していく場合、外国産のカブトムシを日本で繁殖させる必要がありますが、違法取引をしないと”ワイルド個体”を入手することができないといった状況のようです。
これがカブトムシに対しての日本の価値観。
原産国の価値観
一方、保護を求めているカブトムシ原産国の方々は、カブトムシに対して日本とは異なる価値観を持っています。
前述した、ボリビアの昆虫学者さんがおっしゃっていたこと、
「われわれボリビア人はこの虫が自然界から消滅してしまうことを望んでいない。」
そして、コロンビアのカブトムシの販売会社の社長さんがおしゃっていたこと、
「日本の顧客は私たちの理念を理解せず野生のカブトムシを要求してきた。野生生物の違法取引は生態系を破壊するだけだ。」
ここにこの問題の本質があるんですね。
ご覧下さい、取材を受けているコロンビアのカブトムシの販売会社の社長さんのお姿を!
社長さんに2匹のカブトムシが!この社長さんに愛着わく!!!
![](https://assets.st-note.com/img/1695108720505-pc1ZC2ur6t.jpg?width=1200)
そう、コロンビアのカブトムシの販売会社の社長さんもボリビアの昆虫学者さんも、カブトムシのことをこう思っているんです・・・
「カブトムシは私たちの”仲間”なんです。」
これが、原産国の方々持つカブトムシに対する価値観です。
カブトムシ違法取引で分かった”普遍的なもの”
カブトムシ違法取引について、アート思考により気づいた普遍的なものとは・・・
”仲間”という価値観です。
なぜ世界から日本がカブトムシの密輸をしている当事国として批判を浴びているのか?それは、私たちの持つカブトムシに対してのカッコイイという価値観があまりにも強すぎるため気づかなかくなってしまったことに原因があるのではないでしょうか。
一方、世界中ではカブトムシに対して誰もが共感してつながること、それは『カブトムシを仲間として考える』こと、それが世界の普遍的な価値観だと思います。
もし、私がカブトムシ違法取引について問題提起しながらアート作品を使って表現するのならば・・・(すみません、浅はかなアート思考で、しかもアートセンスがないのかもしれませんが)
『世界中の子供たちがカブトムシを見つめて笑顔になっている絵』を描くかな?
説明文に、「あなたはこの絵を観て、子供たちがどう思っているか想像できますか?カッコイイカブトムシ?それとも仲間であるカブトムシ?」
ただ、間違っていけないのは、決して”カッコイイ”という価値観が不正解というわけではありません。子供たちはカッコイイカブトムシを育てることを通して命の大事さを知っていくのですから。
でも、世界の多様な人たちの持つ価値観がなにかということを知ることによって、カブトムシに対する想いをもっと膨らませてあげるのではないか。やっぱりカブトムシの命って尊いものなんだと、子供たちが学んでいくことが大事なんだなと、アート思考をすることによって私が学んだことです。
それでは、子どもたちにカブトムシの違法取引問題について教える機会があれば・・・私はこのようように伝えようと思います。
「カブトムシはカッコイイよね?でも、世界中の人々はカブトムシは”自分たちの仲間”であると思っているんだよ。」
「だからカブトムシを守らなければならないと思っています」
「でも日本にはカッコイイからもっと欲しいという人たちが多く、ルールを破ってでも世界中からカブトムシを集めていることに対して、世界中から批判されているんだよ、日本はカブトムシを仲間から引き離していると。」
「カブトムシは、自分が生まれ育ったところで、仲間たちと一緒に暮らすことを一番に臨んでいるんじゃないかな?」
「これからはカブトムシのことを”仲間”だと思ってみてはどうかな?」
「カッコイイという価値観を持つことはそのままでもいいけど、世界中の人たちが持っている仲間という価値観も一緒にもっていこうよ。そうすれば日本はルールを破らずにカブトムシと仲良く生きていけると思うよ。」