Pyramid Lee Konitz/Paul Bley/Bill Connors
本作を手にとったきっかけは、お気に入りの奏者であるピアノのPaul BleyとサックスのLee Konitz二人の共演は珍しいなと思ったことと、I.A.I.レーベルからのリリースだったことです。Paul Bleyは世界中にファンの多いECMレコードに代表的な作品を多く残しているピアニストで、その中でもOpen to Loveという作品は私の愛聴盤です。
フリージャズを聞き始めた頃、フリージャズの代表的なレーベルであるIncusやFMPの珍しいレコードを収集していらっしゃる喫茶店のfischiff KÜCHEさんに初めて伺いました。気さくな店主さんにフリージャズの作品をいくつか聴かせていただき、アルバート・アイラーの話などで盛り上がりました。店主さんはECMのコレクターでも有り、私がPaul Bleyが好きだと話すと数十枚のOpen to Loveのレコードのコレクションを見せてくれました(内容は全て同じなのですが、作品が好きすぎて中古店などで見かける度に買い続けてきたそうです)。その光景が衝撃的すぎて、それ以来自分にとってもPaul Bleyは特別な存在になっていました。
また、本作品をリリースしたI.A.I.はPaul Bleyの主催レーベルで、愛読させていただいているこちらのブログ)でも度々名前が上がっているので気になっていました。
本作品はサックス・ピアノ・ギターのトリオ編成での作品です。Lee Konitzはソプラノとアルトを、Paul Bleyはピアノとエレピを、Bill Connorsはエレキギターとクラシックギターをそれぞれ曲に合わせて使い分けています。
盤に針を落とすとBleyのパーカッシブなプレイで幕を開けます。澄んだ音色はECMでの演奏を想起させますが、一点だけ大きな違いがあります。本作にはECM特有の深い残響音による演出がありません。3つの楽器そのものの音色や抑揚がより直接的に捉えられているので、奏者の存在をより近くで感じることができます。音色自体に魅力のある優れた奏者の録音として、この方法は奏功していると思いました。
曲目は表題曲のようなECM的なセッションや内省的なフリーなど様々ですが、リズムセクションが不在のこともあって全体的に静かでありながら緊張感のある演奏になっています。
そんな中でも出色なのがB面1曲目のTAVIAです。KonitzとConnorsのデュオでの演奏で、Bleyは参加していません。この曲でKonitzはソプラノサックスを手にとっていますが、揺れるように奏でられる暖かい音色に聴き入ってしまいます。Connorsのクラシックギターによる控えめで叙情的なコードワークと相まって、侘び寂びを感じる穏やかで美しい演奏になっています。楽器は違いますがTony Scottのような幽玄さです。緊張感のあるこの作品の中では少し異色ですが、この曲が一番気に入りました。
ConnorsはChick CoreaのReturn To Foreverくらいでしか聴いたことがなかったのですが、是非他の作品も聴いてみたいと思いました。これは嬉しい発見でした。
曲調に一貫性がないので一言でまとめづらい作品ですが、各奏者の魅力を感じやすい録音になっているので3人のいずれかのファンの方であれば間違いなく楽しめると思いますし、TAVIAだけでも多くの人に聴いてみてほしいです。自分にとっては初I.A.I.の作品でしたが、音が好みだったのでこれから集めていきたいと思っています。
(参考)
https://www.discogs.com/ja/Lee-Konitz-Paul-Bley-Bill-Connors-Pyramid/release/1593055
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