ニコンF6 Fシリーズ最後のフラッグシップ機
ニコンF6を購入したのは2006年。デジタルでの仕事も増えていたがブライダルでの撮影はまだ1年から2年はフィルムで撮らないといけない状況だった。その撮影で使っていたニコンF90Xが故障。シャッター交換と修理費がかかるため修理せずF6を購入することにした。ネガフィルムだけならF100でも良かったがプライベートの撮影ではリバーサルで撮ることから視野率が100パーセントのF6にしたがニコンのD200も購入しなければならなかったので予算の都合からF6は状態の良い中古で購入することにした。これからも仕事で長く使うのであれば無理してでも新品で買うところだが仕事で使うのはあと2,3年だろうということとまだ他にもフィルムカメラがあるので中古となった。
幸いD200を買った店に状態の良いものがあったので一緒に購入。ボディの電池がCR123と値段のわりに本数が撮れないことから単3電池で使えるバッテリーパックのMB-40も買おうと思ったが中古(仕事機の間でしか使わない予定だった)ではなかったので先送りにした。付けると大きくなるのと今のニコンのデジカメのバッテリーパック同様本体とのデザインが合っていないのも気になったからだ。(本体は日本製だがバッテリーパックは中国製。20世紀のニコンなら両方とも合わせた作りにするだろうがこの頃はフラッグシップ機でもそういう心意気は無くなっていた。)
F6は今までのニコンのフラッグシップ機と違ってペンタ部が固定になった。今まで使ってきたF2,F4でも外して使うことはほとんどないので影響はない。むしろそのおかげでプリズムが大きくなるなどピント合わせがしやすくなった。F3から続くハイアイポイントも健在で眼鏡をかけていても周囲が見やすいのもフラッグシップ機だからだろう。
老眼になった今でもMFでの撮影は楽な方で開放値がF1.4のレンズを開放値近くで撮ってもピントを外すことは少ない。同じものをD7200などピントの山が掴めないカメラで撮ると10枚近く撮らないとピントが合わないこともしばしば。AFで撮ることも考えられながらMFでも撮れるように設計されていることが伺えるのはフラッグシップ機だということか。
今のカメラに同じものをといってもただ部品を組み立てるだけの工程では不可能だろう。カメラが精密機械と呼ばれていた日本の高い技術を持った人なら作れるだろうがコストもかかる。今のニコンはペンタックスのように一眼レフにこだわるメーカーではないのでこういうカメラは過去のものだ。
AFは11点で9点はクロスセンサーとなり精度が高くなった。エリアモードも4種類。そのなかのダイナミックAFモードは選択したAFの周囲でも補助してくれるので動くものに対してより捉える精度が高くなったので今のカメラでも使っている。残念ながらF6はMFでもピント合わせが楽だったのでAFを使う事は少なく暗い室内でのピント合わせぐらいしか使うことはないがピントを外すことはあまりなく精度は高いのだろう。
マルチパターン測光も1005分割となりストロボ撮影ではより精度が高くなったが今まで使っていたF4Sに比べて場面ごとの補正量が変わったので慣れるのに苦労した。他にもデジタルカメラのようにカスタム設定がいろいろと出来て便利になったが覚えるのが大変であまり使わない設定は説明書と照らし合わせてということも。
MFでもピント合わせが使いやすい事からAFは望遠レンズを使っての動くものを撮る時にしか使わなかったが購入して3ヶ月後にプライベートで祭りの撮影を軽くしようとF6を使うことに。しかし付けていたレンズがタムロンの28-75mmF2.8。
このレンズはピントリングがスカスカでMFでの撮影は使いにくいのでAFで撮ることにした。すでにD200でAFの操作は使い慣れているのでスムーズに撮影したが28mm付近でピントが合わないことがしばしば発生。被写体が動いているので合っていないように見えたのかと思いあまり気にせずその後に街の写真を撮ることにした。遠景のものをAi20mmF2.8Sで撮ると∞の距離だというのにファインダー内の合焦表示は前ピン。どこで合うのかとピントリングを回してみるとなんと2m付近。28-75mmのレンズで試してみると28mmは同じ症状で35mm以降は問題なしだった。撮影したフィルムをすぐに現像し見てみると28mmで撮ったものはすべてピンボケ。
数日後に銀座のニコンに行ったが付けていたレンズが他社のものであることから検査もせずに「レンズに問題あり」と門前払い。ならばとニコンのAiAF17-35mmF2.8D(このレンズでも同じ状態)を付けて新宿のニコンに持っていくと検査はしてくれたが問題なしという返答だが検査に使ったレンズは85mmと28mm以下でピント不良ということを頭に入れていない無能さに呆れてその場は退散。3回目(再び銀座のニコン。応対したのは別の人)でようやく修理となったがその後も再修理でようやく通常の状態に戻った。
AFの精度調整は難しいようで1回の修理ではきちんと治らないことも多いので修理に出すときには長期戦になると覚悟した方がいいだろう。
これを書くためにF6の履歴簿(修理などを記載)を見たがどうして何度も修理のためにニコンに行ったのかと考えてみるとこの当時はまだフィルムでの撮影もあって銀座や新宿のラボに現像を出して仕上がるまでの2時間を使っていたようだ。
このカメラは新宿の中古屋で購入した。品揃えも良く今も人気のある店だ。何度かカメラやレンズを買ったがこのF6のようにハズレも多かった。価格も機材の状態にかかわらず同じ価格だったりと査定や検査が甘いのかもしれない。特定の画角のみAFがおかしいというのは特殊なケースだがこちらとしてはその後に購入した機材に関しては細かく検査してから使うようになったのである意味良い経験になったかもしれない。
予想より早く仕事での撮影はデジタル中心になりF6は仕事で使われる時期は短かった。プライベートでのリバーサルでの撮影に使っていたがエクタクロームの販売が終了。フジのフィルムはあったが晴れた夕方の色はプロビアやベルビアでは自分が望んだ色は出ない。仕事では数えきれない両方とも使ったが無理して使うこともないとリバーサルでの撮影は終了。ネガカラーもデジタル化する時のスキャナーでの色がきちんと出ないことからカラーはデジタルのみとなった。モノクロのフィルムでの撮影は続いていたが望遠レンズを使う事が少ないのとデジタルカメラとの併用から荷物の軽減もあって軽くて小さいFM2やF2の出番が多くF6の使用はわずかとなった。
使用頻度が上がってきたのは2017年の秋頃。当時は単レンズで絞りを開放から2段程度までの間で撮る時に使っていたがデジタルで使っているシグマの18-35mmF1.8を試しに使ってみた。このレンズはAPS用だがイメージサークルが大きいので28~35mmではフルサイズでも使える。もちろん周辺光量落ちがあるがそれを意図的に使用。開放で撮るとフィルム用のレンズにはないシャープな線が気に入った。当時メインの画角になっていた50mmをデジタルでの使用も兼ねてシグマの50mmF1.4を購入。デジタルのようにシャープ過ぎるが開放近くでもシャープな絵は期待どおりの描写ということでこのレンズでの撮影が今でも続いている。このレンズは他の50mmと比べて大きく重いがグリップが大きいF6にはちょうどいい。絞りリングがないGレンズだけに今持っているフィルムカメラではF6しかなくこのレンズでフィルムを使う時はこのコンビとなった。
フィルムの価格は高騰するのみで昔のように気軽に撮れるものではなくなったがFマウントの最期のシリーズであるEレンズ以外は使えるだけに壊れない限りは使い続けるだろう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?