妊娠してびっくりしたよって話
2024年2月13日。
絶妙に体調が悪い日が続き、思い返せばわりと規則正しくおとずれていた生理も1週間遅れていたため妊娠検査薬を使用してみた。即陽性になった。絶句。自宅のトイレで立ち尽くした。
望んではいたもののあまりに現実味がなかったのだ。
妊娠検査薬を最後に使用したのは確か大学生の時で、やべーなんかやらかしたかも…念の為に検査するか…うわ陰性だ、よかった……てか生理きたわ…。みたいなろくでもない記憶しかない。馬鹿ですね。思い出したくもない。
プチパニックに陥った私は、近所のドラッグストアで妊娠検査薬を追加で一本購入し、帰宅即再検査した。やはり即陽性になった。そりゃそうだ。最近の検査薬の正確性といったらすごいものだ。
率直な感想としては、うれしいとおそろしいの間。
心の底からうれしかったけど、これからもし赤子の異常や不調が起これば、すべての原因は自分なのだ(すべてではないのだが…)と思われ、言いようのないおそろしさに襲われた。
責任重大だ。私は絶対に責任を負いたくない人間だというのに。
たとえ安定期に入ろうとも、本当に親しい人以外には伝えられないと思った。
(実際親にも3ヶ月になるまでは言わなかった)
とりあえずさらに詳しく医療機関で確認してもらわなければいけない。
次の日受診できるように最寄りの婦人科に予約を入れた。本当は今すぐ確かめに行きたかったが診療時間に間に合わなかったのだ。
しばし呆然としながら夫の帰宅を待つ。
そういえば仮に確実に妊娠していたら、昨日吸ったタバコが最後か。お酒もしばらく飲めないな。カフェインもあまりよくない。友達が働いているゴールデン街にもしばらく行けない。あそこに行って飲酒しないのは不可能だ。副流煙もよくないみたいだから懇意にしている喫茶店にもバーにもお邪魔するのがしのびない。昨日の友達の弾き語りライブ行けばよかった。キャメルもオアシスパールもまだ残ってるのにこのまま湿気るなあ。
ジッポだってわりと買ったばかりだった。
と、ここまで考えたところで笑えてきた。
私の趣味はニコチンアルコールカフェインの摂取と音楽鑑賞とお笑いと読書で、一瞬にしてその半分と強制的にお別れなのであった。信じられない。
受胎とは信じられないことばかりで理不尽だ。
帰宅した夫に、検査薬を使ったら陽性だったので妊娠しているようだ、でも病院で胎嚢を確認するまでは確実とは言えないから不安で、まだ手放しには喜べないかもしれない。と報告した。
夫は弱気になっている私を尊重し、控えめにニコニコした。
でも良かったね、と夫が言った。
たしかにそうだ。確実に良いことだった。
今後のどうなるかはわからないけれど、いまこの瞬間、良かったという気持ちは本物だ。
さて、この後のことをざっくりまとめると、次の日受診したものの週数が早すぎてまだ胎嚢らしきものは見えず、1週間後に再診となった。
再診で無事子宮内に胎嚢が確認でき(つまり母体の安全のために堕胎しなければならない子宮外妊娠ではなかった。よかった。)、さらにその1週間後の受診で胎児の心拍も確認できたので先生からGOサインをもらい、役所にて母子手帳を交付された。
こうして私は晴れて事実上の(?)妊婦となった。
そして胎嚢が確認できたあたりからつわりが始まった。特にピークを迎えた4月前後はあまりにもつらく苦しかったためか脳が記憶を消してしまったようで、当時のことは詳しく思い出せない。
とりあえず何かにつけて吐いていた。
愛猫もたまに毛玉などを吐くが、愛猫とは比べ物にならないくらい高頻度で吐いていた。愛猫も引いていた。
人生で一番顔色の悪い時期だった。
常に血の気が引いていて、視界を動かすたびに頭を殴られたような強いめまいもあり、いろいろと生活が難儀だった。
月並みだが健康って素晴らしいと思った。
【あとがき】
いまこれを書いている7月15日の私は元気ですが腰痛と頻尿という新たな試練を与えられている。あとすでに骨盤がおかしくて先が思いやられる。お腹が重くて寝返りも大変になってきた。
余裕があればお茶を飲みに行きたいし、美味しいものを食べに行きたいし、今のうちに可能な範囲で気になっていた場所には遊びに行きたいと思っている。ボケルバ行ってみたい。大喜利してみたい。大喜利する妊婦っていなそう。
【あとがきのあとがき】
妊娠中のなにがやべーって「なんかむしゃくしゃするから酒でも飲むか」ができないところ。
酔うことができないから強制的にずっと現実と向き合わされている。
そんな日々が続いているので、自分では気がつかないうちに、静かに発狂している可能性がある。
私はいま無事なのだろうか。
逆にお酒を飲まない人・飲めない人はこの状態が当たり前で、常に酩酊もせず自分を保ったまま生活しているのか。強い。敵わん。