『THE FIRST SLAM DUNK』を見て
この映画を企画してくれた方、作った方すべてに感謝をささげたくなるような映画だった。一番好きな漫画がSLAM DUNKで、SLAM DUNKを超える漫画は出てこないと思っている。観る前は少し心配していたけれど、期待を上回る映画だった。本当に、観てよかった。
マンガでも試合のスピード感・緊迫感は表現されていると思ってたけれど、映像によって表現されたスピード感は、特別なものだった。試合のラスト1分、劇場で見ているみんなが同じ時間を共有して、物音ひとつ立てないように固唾を飲んでスクリーンを見つめた経験は、これから先ずっと忘れないと思う。
原作の山王戦を忠実に再現しつつ、原作と矛盾がないように追加された宮城リョータのエピソードも、とても良かった。マンガで、自信があるようで常に不安を抱えているように見えた宮城。なぜそのように見えていたのかを20年越しに知ることができた。沢北の願いと涙は、より彼を理解・共感できる人物にしてくれた。
モーションキャプチャや3DCGのカメラ移動など、連載当時のセル画によるアニメ技術では実現できなかったことが実現できるようになって、井上雄彦監督が納得いくかたちで試合を映像化できるようになった。そして(技術だけじゃなく)、作り手の皆さんもSLAM DUNKを良い映画にするんだという意思をもっていたように感じる。(どこで感じたの?と聞かれると答えるのが難しいけれど…)
20年前、高校生の時にSLAM DUNKを好きになってよかったし、ずっと好きでいてよかった。こんなにも素晴らしい作品が、20年以上前に描かれてたんだぜ!ということを、今の若い人にも知ってもらえる。THE FIRSTって言葉にはいろいろな意味にとれるけれど、この作品で初めてSLAM DUNKを知った人には、ぜひマンガ版も読んでほしい。山王戦に至るまでのドラマも、新人マンガ家 井上雄彦の画力の成長も、コミカルな描写も、もっとSLAM DUNKを好きになれると思うから。
THE FIRSTについては、映像作品として井上雄彦が認めた”最初の”SLAM DUNKという意味も込められているんじゃないかと感じた。過去作品の否定になってしまうから、ご本人の口から直接語られることはないと思うけれど。映像技術的な制約と、当時のスポーツアニメの水準(延々と続くドリブル音と語られる内なる声…)から、原作通りのセリフ・展開なんだけど、映像作品としては井上雄彦監督が納得する水準のものではなかったということが、今回の映画を見てよくわかった。
試合をテンポよく見せるために、マンガでは書かれていた心情描写がカットされていた。マンガはあくまでマンガというメディアを前提に描かれていて、それをそのまま映像化しても”バスケの試合”を描くことにはつながらない。言葉にすれば当たり前だけど、実際に映画を観ることで、当たり前のことが分からされた。
きっと連載を描いていた時から、井上先生の頭の中にはこの映像が流れていたんじゃないかと思う。この映像を、マンガにしたものを読んでたんだなと思う。そういう意味でも、THE FIRST。