片方キ○タマなくなって。抗がん剤入院前に。

 抗がん剤はやることを決めた。後は、次回受診日に諸々決めるだけである。

 傷口のくっつきが一部よろしくないと言われたが、スマホで写真に撮り、画像を拡大してみると、傷口の部分に紺色の糸のようなものが挟まっている。内部を縫合した、吸収される糸だろうか。数日様子見していると、傷口は塞がったが、その糸がアーチのように傷跡からぴょこんと飛び出している。気にはなるが、どうしようもない。次回受診時に医者に聞いてみる事とする。ホチキスの針が刺さっていた部分は、軽く黄色い汁みたいなものが絆創膏に付着していた。2日程で消失したが。

 傷口付近の痛みは継続している。右股関節は動かした際に軽く痛み、下腹部陰毛が生えている部分も、妙に痛みを感じる。脇腹は良くなってきたが、軽く突っ張りを感じる。手術で切り開いた鼠径部の傷口周囲は固くなっている。右のキ○タマがなくなったところ、玉袋の中が触れると痛かった。触るなよという話ではあるが、気になって触りたくなるのだ。この気持ちはわかってもらえると思う。

 職場と交渉し、1ヶ月欠勤とさせてもらう。その後はどうするかは未定。抗がん剤は1コースか2コースか聞いてなかったので、どのくらいの期間か不明である。再度連絡する必要があった。慌ててたとはいえ、仕事出来ねー奴だなと自虐する。

 入院にあたり、プラスチック製のコップ類を買った。プラスチック製の方が運びやすいし扱いやすいのだが、割れ物のコップしか持っていなかったので、前回それを使用した。それで少し後悔をした。100均で適当に揃えた。

 後はハンガーなども持っていく。ナイロンのタオルや綿棒など、細々した物も用意する。

 そんな感じでグダグダ過ごし、再度の受診。傷口は良好との事。医者に抗がん剤をやることを告げる。日取りを決めて、血液検査を済ませその日は解散となる。ちなみに傷口の糸は、放っておいてOKらしい。

 抗がん剤は、カルボプラチン単剤投与1コース。2コースではなくホッとする。入院期間は一週間ほどとなり、月末には仕事復帰は可能だろうとの事だった。会計時は前回同様、同意書、保証人のサインが必要なものなど書類が飛んできた。今回はキチンとお薬手帳を持っていったので、詰められる事はない。

 さて、これから抗がん剤で入院する。よく聞く副作用は吐き気である。前回入院は3泊4日で、一日絶食。そんなに病院食を食べる機会はなかったが、食べた限りははっきり塩気と油分を感じない、さぞかし健康には良いであろうメニューだった。

 これからあれを一週間ほど続けて食べる事になる。先述の通り、私は幼稚でわがままな人間である。そして私は北海道民である。濃い目の味付けが好きなのだ。その薄味に、何日耐えられるかわからない。

 今年は私の愛する秋刀魚が豊漁だ。塩焼きにザブザブ醤油をかけて、白米をバクバク食べたくなるだろう。油や肉が足りなくなれば、お気に入りのモツ焼き屋で丸腸やらサガリやらガツステーキやらを頼み、ビールやハイボールを呷りたくもなるだろう。ソースひたひたの串カツとかも捨てがたい油と塩分の塊である。体には悪いのだろうが、心には抜群の栄養を誇る。
 とにかく私は煩悩が多く、食事はかなりキツい思いをしそうだった。ラーメン食いたい、焼き肉食いたいと心で唱えていそうである。

 しかし、副作用の吐き気がどう出るかわからないという不気味さがあった。今年、私はノロウイルスに罹患し、大量に嘔吐した。人生初ノロウイルスだった。それが少しトラウマで、吐き気にかなり怯えていた。食事制限は特にないのだが(何も言われてないだけだが、聞いてないから大丈夫だろう)、何か食料類や調味料類を持ち込む気にならなかった。後にこの判断を少し後悔する事となる。

 さて、入院前の短い期間、夜涼しくなってから3キロ程ウォーキングをした。足にだるさを感じた。完全に弱っているな、と自覚する。少し体を動かして、体力をつけてから入院したい。受診から入院まで、一週間ほどの短い期間だが、一応ウォーキングは毎日行った。気休めが欲しかったのである。

 歩行禅というものがある。詳しくはないし、全然違うのだろうが、早足でスタスタと、頭を空っぽにして歩くのは気が楽になるものである。退院後も、入院で落ちた体力回復のリハビリがてら、やりたいと思う。

 親戚が多いのだが、叔父の一人もがんに罹っている。その叔父は在宅で過ごしていたが、入院前に、一度顔を見る機会があった。痩せており、だいぶ体調は悪そうだった。その叔父は、受診の予定を早め、私より先に入院する事になった。私はまだ軽い方なのだと自覚する。

 あの時寝坊しなかったら、今頃どうなっていたのだろうか。なんともないからと、後回しにして転移とかしてたのかもしれない。がんは2人に1人がかかる時代。色々なケースがあるのだろう。自分もその2人に1人である。この先再発するのかしないのか、それ含め、先が見えないが。

 グダグダ言っても仕方あるまい。やりたい事も行きたいとこもあるのだ。やることはやっておこう。結局それしか出来る事はない。面倒くさい、先がはっきりしないと割り切れないだけだった。また何かあったら、全て放り出したくなるだろうが、これを読み返した時に、マシな選択が出来るといいと思う。

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