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音楽を語る

生まれて初めて聞いた音楽は何だろう。

もちろん記憶はない。「音楽」がただ「音」をさすのなら、人の声や生活音になる。何の変哲もない日常の音だ。

私は3歳からピアノとエレクトーンを習っていたらしい。はじまりの記憶はもちろんない。
一番古い映像はたぶん小学一年生のエレクトーンのクラスだ。和音や音階を習っていた。大きな声で身振り手振りを使いながら話す先生がいて、同じクラスの友達がいて、隣に見守る母親がいる。

ピアノ、エレクトーン、フルート、吹奏楽、クラシック。ポップス。
ずっと人生の片隅に音楽がいる。

ピアノが嫌になったのは小学生の時。せっかくの土曜日に友達と遊べず、習い事が嫌になった。コンクールで3年連続参加賞に終わり、何を目指しているのかわからなくなった。

中学では吹奏楽に打ち込んだ。ピアノは合唱の伴奏が楽しかった。
大会で勝つことを諦めたら気が楽になった。周りと楽しめればいい。
ある程度でいい。そうすれば気は楽になった。思春期の比較癖は良くも悪くも私を捻じ曲げた。

一瞬風が吹く時があった。これはあの時と同じだと。
楽器に向かう姿勢や、音色を聴く意識、ステージでの思考。
合奏をするとき、一人でピアノを弾くとき、サブスクで曲をかけるとき。

ふらふらといろんなものに手を出しては諦めていたけれど。
そこで初めて思った。ああ、やっていた意味はあるのだと。

意味や結果、業績に輝かしいものを求めてしまうのはもう悪癖だ。誰に何を言われても、その思考はこびりついて消えない。
でもそれでじめじめするのはもっと良くない。ネガティブを前面に押し出したって何にもならない。この一年、じめじめしてよかったことは何にもなかった。

好きな音楽の種類が増えた。ライブに行くのが楽しみになった。
作曲をしてみたいと思った。もう一度勉強したいと思った。
吹奏楽とピアノは一生やりたい。

これで充分だ。今の私には。

さて、そろそろ時間だ。また今度。

#30分エッセイ


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