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母と娘|2023-05-18

今回は、うでパスタが書く。

キノコさんがこの五月からあたらしい職場で仕事を始めた。
詳しく聞いていないが、どうやらかなりちゃんとした会社らしく、中途採用(というとなんか失礼な感じがするので「キャリア採用」とか「専門職採用」とか言った方がいいのかもしれない)にもかかわらずかなりみっちりと研修をうけたり自己紹介をさせられたりしているみたいだ。
僕の理解がただしければ、これがキノコさんにとっては大学を出てから九つ目の職場ということになるから、本人はもう慣れっこなのかもしれないけれども、聞くだに僕には厳しい試練だと感じる。

もう一〇年あまりにわたるカウンセラーとの対話がどうやらひとつの節目を迎えたようだ。
昨日のセッションでは、まだ言いたいこと、聞いてほしいことがあったにもかかわらず先生の方から「おそらくあなたはお父さんとの関係を卒業してあたらしい人生を歩み出したと言えるのではないか。他にも話があるというのがひとつの証拠だと思う」とそれをなかば打ち切られてしまった。
僕はこういう迂遠なやりとり(つまり僕はこれを迂遠と感じているのだが)が苦手であって、ここでどうしたらいいのか分からなくなってしまうのだが、何かもやもやした物が残ったので次回の予約はとらずに場合によってはまた数年間のhiatusに入ろうかと思う。先生の言うとおり僕が何かを乗り越えたのだとしたら、あっさりしたものだがもうこれで最後ということになるのかもしれない。

「機動戦士ガンダム 水星の魔女」というテレビアニメーションが、社会をブームに巻き込むというほどのこともないまま沸々と奇妙な熱をもって注目を集め続けている。「シリーズ初の女性主人公」と聞いたときには、「ま、それもいいだろう」という程度に考えていたのだが、主要な登場人物すべてが強権的な父親とのあいだに従来型の問題を抱えているのに対し、主人公の少女にだけ父親が不在であり、その代わり母親とのあいだにまったく質の異なる問題が横たわっているという意味で伝統的なロボットアニメ全体のフレームワークからはみ出た異形のファンタジーとして物語が現在も進行中である。

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