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オリジナルメソッドを教材化するときに直面する3つの壁 〜客体化・体系化・文章化〜

自分が開発したオリジナルメソッドや理論を教材化したい方へ

こんにちは。「教材の力」で学びの場の課題を解決する教材戦略ラボの矢澤です。
私は普段、「学びの場」を主催するセミナー講師やインストラクターの方向けに、教材(主にはテキストやワークブックなどの冊子型教材)の制作プロデュースをしています。

クライアントさんのほとんどは、「自分オリジナルのメソッドや理論を教育コンテンツ化&教材化したい人」。

「あらかじめ体系化された教育コンテンツを教える人」ではなく

  • 自分が開発した独自のメソッドや理論をテキスト化して、講座を開催したい

  • 自分の人生経験を通して得たノウハウを1冊にまとめて、誰かに手渡したい

という方たちです。

すでに何らかの形で「学びの場」を主催していたり、自分で作った教材を使っているクライアントさんがいる一方で、まったくのゼロから「学びの場」を立ち上げたり「教える仕事」に挑戦される方もいます。

そこで、その思いを形にするべくプロジェクトを立ち上げて、クライアントさんと私たち(教材戦略ラボのメンバー)による二人三脚で教材制作を進めていくのですが、その現場はなかなか大変で、難儀を極めることも少なくありません。
クライアントさんの多くは、「文章が書けない」という課題意識をお持ちなのですが、実はそれ以外(以前)にも大きな壁が立ちはだかります。

そこで、この記事では、教材制作に取り組むクライアントさんたちが直面される課題を「3つの壁」として紹介したいと思います。

今後、教材制作(特にテキスト作り)に取り組む予定のある方の参考になれば嬉しいです。

01:客体化の壁

1つ目は「客体化の壁」です。客体化という言葉がぴんと来ない場合は、「外在化」という言葉がもつイメージと併せて捉えてみてください。実はこの「客体化」がいちばん大きな壁になるケースが多いです。

ここでいう客体化とは、言葉を補足すると「教えるべきコンテンツの客体化」のこと。
冒頭でも書きましたが、クライアントさんのほとんどは「自分オリジナルのメソッドや理論を教育コンテンツ化&教材化したい人」です。

そこで問題になるのが、「教える人」にとって「教える内容」が客体化されていないという点です。つまり、「教える内容」と「教える人」が渾然一体となってしまっている、「教える内容」が自分の外側に分離できていない、外在化されていないということ。

そこで、「自分の中に教えるべきどんなことがあるのか」を見つけ出す客体化の作業が必要になります。

この壁に直面しているクライアントさんの状況はというと、とにかく「もどかしそう」。客体化されていないものは、言語化自体が難しいので、コンテンツ一覧を洗い出そうにも、何を切り口に、どんな順番で、どんな言葉でアウトプットしたら良いかがわからない。出せたと思っても次の瞬間にまた別のものが湧いてくる。特定の一部分は出てくるけれど、それ以外がまったく出てこない。
こんな感じで、行きつ戻りつ、一定期間足踏み状態になってしまう方も多いです。

この壁が「教材づくり」をしようとしたときに最初に直面するいちばん高くて分厚い壁です。

ではこの間、私たちがどうしているかというと、ひたすら壁打ち相手になります。最初から「全体」を捉えることは難しいので、クライアントさんには断片的でも良いので1つずつ言葉にしてもらい、それに対して、「こうですか? ああですか?」「一般的な○○とは何が違うのですか?」「この解釈で合っていますか?」「○○についてはどう考えるのですか?」などと率直な反応を返しながら、クライアントさんの内省と言語化を見守ります。

これを繰り返すことで、次第に「何を教えるか」が自分から切り離され、客体化が進みます。
クライアントさんとしてはものすごくじれったい気持ちになるフェーズですが、この「客体化」に向き合っておかないと、あとあと躓いてしまうことになるので、ここは肝を据えてじっくり取り組んでもらうように促します。

02:体系化の壁

2つ目は「体系化の壁」です。
体系化とは、1つ目の「客体化」を通してアプトプットした1つ1つのピースを、「受講生が学びやすいように・受け取りやすいように」という目線で、一定の規則や法則で並べたりまとめたりすること。
教材制作の現場では「目次づくり」や「講座のカリキュラム作り」がこれにあたります。

この体系化のフェーズでは、クライアントさんの中から客体化されたものを、今一度客観視して「受講生目線」で見る必要があり、さらには「教えやすさ」とのバランスも考慮しなければいけないので、目線の切り替えがとても難しいです。

この体系化の壁に直面されているクライアントさんからは、「目線の切り替えが忙しくて頭が疲れる」という声が聞こえてきます。
そこで、私たちが「一部の目線」を引き受けることが多いです。

クライアントさんが「受講生目線」で考えているときは、私たちが「講師目線」を持ち、「クラスの進行を考えたときもその順番でOKですか?」「こっちのほうがスムーズですかね?」などと感じたことを伝えていきます。

逆にクライアントさんが「講師目線」または「主催者目線」に寄ってしまっていると感じる場合は、「受け取る側としてはちょっとわかりにくいかも?」「こうしたほうが納得感が増す」などと「受講生目線」で見ていきます。

また、この体系化は、ある程度「教える場」が具体的になって初めてできるものなので、ひたすら「教材を使うシーン」をイメージして、一緒に流れや構成をシミュレーションしていきます。

03:文章化の壁

そして最後が「文章化」の壁です。
もともとは「テキスト用の原稿が書けません」とおっしゃっていたクライアントさんたち。となると、一見この「文章化の壁」が大きそうなものですが、実はここに来るまでに適切な「客体化」と「体系化」ができていれば、「文章化」はたいした壁ではなくなります。

つまり、「文章が書けない」という問題を紐解くと、そのほとんどは「客体化できていない」と「体系化できていない」という課題であることがわかります。

客体化と体系化を通してまとめた「教材の目次」や「講座のカリキュラム」、そしてクライアントさんごとに個別に準備させてもらう「教材用テンプレート」があれば、あとはそれに沿って素材を準備していくだけです。
教材の仕様によっては、各項目の原稿が「4〜5行のサマリー」「図解」「Q&A」だけでも十分に教材として成立してしまうケースもあります。
こうなるともはや「文章を書く」という気負いは必要ありません。

このような客体化と体系化のプロセスを経て「文章化」に取り組むクライアントさんは、ストレスを感じることなく、むしろ楽しみながら「原稿入力」に取り組まれます。もちろん、それなりの時間と労力はかかりますが、心理的負担はだいぶ軽くなっているはずです。

とはいえ、クライアントさんとしては、「これで本当に良いのか? これできちんと伝わるのか?」という不安は最後まで付きまとうもの。その部分については、私たちがしっかり介入し、「受講生にはどう受け取られるか」という目線で適宜編集リライトをかけ、出版物としてのクオリティを高めます。

こうして無事「教材完成!」となります。
クライアントさんは大きな達成感を感じ、私たちもほっとする瞬間です。



以上、教材を作るときに越えるべき3つの壁として、「客体化・体系化・文章化」という3つの課題について解説しました。

ここではテキスト(冊子型教材)の制作を中心に紹介しましたが、この3つの壁は、別の形式の教材(動画やデジタル教材など)であったとしても同じように直面する課題だと思います。

今後、教材制作に取り組む方が「思い通りに進まないぞ…」と立ち止まってしまったときに、何らかの参考になれば幸いです。

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