--SS|irony
「おぬし、やってみよ。」
国王に指を差されると、若い家臣は視線を落とし、しばらくの沈黙を経て、頷いた。
老臣たちは俯く彼を何も言わずに眺めている。
2週間が過ぎ、彼は王城から追い出された。
王の期待に添えなかったのだ。
その国では治安の悪さゆえ犯罪が絶えない。
国王は犯罪を減らそうと、臣下の者を大臣に任命しては、対策を命じた。
しかし、国王は冷徹であった。すぐに結果が見えてこなければ、その者は2週間足らずでクビ、すなわち王城追放となった。勿論、2週間で結果が出るわけがない。そんなことは、国王以外の誰もがわかっていた。
とうとう国王は、大臣を置かず自らが政策を行うと言い出した。家臣たちは、国の更なる荒廃を危惧した。しかし、王に意見する者は誰もいなかった。
「犯罪者は皆、その日のうちに殺す。」
王は新しい法律を作った。それは、彼の性格に似つかわしい冷徹なものだった。
人々は怯え、犯罪を犯す者も少なくなった。一方で、多くの民がその強権的な法を恐れ、国外に逃亡した。
王も、人口の減少は問題であると感じたのだろう。今度は、罰則を緩め、こんな法律を作った。
「無許可での出国者は皆殺す。犯罪者は皆、この国から永久追放とする。」すると今度は、国外に逃亡する数は減った。しかし、犯罪の件数は以前の3倍にも跳ね上がり、人口減少がますます進んだという。
fin.
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